「 音楽美学・音楽の哲学 」一覧

音楽の本質を探る: 「間」の哲学

音楽という芸術形態は、その表面的な美しさを超えた深い魅力を秘めています。しかし、その魅力の根源に迫るためには、音楽の伝統的な定義を超えた視点が必要です。この記事では、音楽の根底にある「間」の概念に焦点を当てた論文、吉野秀幸「音楽の正体_あるいはその根底にあるもの」(2024) の内容を紹介しながら。音楽について考察します。

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近世の音楽思想(6) カントの音楽美学

音楽を聴くとき、私たちは何を感じ、どのようにその美しさを理解するのでしょうか? 音楽の哲学史シリーズ「近世の音楽思想」の今回の記事では、Stanford Encyclopedia of Philosophy の「History of Western Philosophy of Music: Antiquity to 1800」の項目を参考に、イマヌエル・カント Immanuel Kant (1724-1804) の音楽に対する考え方を探ります。デカルト René Descartes 、ライプニッツ Gottfried Wilhelm Leibniz 、ルソー Jean-Jacques Rousseau といった哲学者たちに続いて、著作『判断力批判』Kritik der Urteilskraft (1790) および『実用的見知における人間学』Anthropologie in pragmatischer Hinsicht (1798) を通じて、音楽の美学においてカントがどのような位置を占めるのかを見ていきましょう。

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近世における音楽思想(1) ティンクトリス、ザルリーノ

音楽は時として私たちの心を動かし、感情を揺さぶり、思考を刺激します。しかし、この強力な影響力はどこから来るのでしょうか? これまで「音楽の哲学史」シリーズでは、古代ギリシアの音楽思想から中世の音楽哲学に至るまで、音楽が持つ意味や役割について考察してきました。今回は、その続きとして、近世 (early modern) における音楽哲学の展開に焦点を当てます。近世において音楽思想は、音楽と感覚的快楽、そして表現の力が探求されるようになりました。では 15 世紀からの音楽に関する思考の変化を追いかけましょう(参考: History of Western Philosophy of Music: Antiquity to 1800)。

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中世の音楽哲学(4)中世イスラム世界の音楽哲学

音楽と宇宙、そして人間の内面とはどういう関係性・・・、などというと、現代では荒唐無稽に思えますが、この問いに対する探求は、古代ギリシャ時代から続く音楽の哲学の歴史において重要なテーマです。中世では、この探求はさらに深化し、イスラム世界においても顕著な発展を遂げました。

本ブログの「音楽の哲学史」シリーズ、今回は中世の音楽哲学、特にイスラム哲学者たちの貢献に迫ります(参考: History of Western Philosophy of Music: Antiquity to 1800)。

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古代ギリシアの音楽理論: アリストクセノスと、音楽道徳への懐疑

音楽というアートフォームは、単に耳を楽しませるもの以上の価値を持っています。歴史を通じて、音楽は哲学的探究の対象でもあり、その奥深さは古代から現代に至るまで多くの思想家たちによって探求されてきました。この記事では、Stanford Encyclopedia of Philosophy の「History of Western Philosophy of Music: Antiquity to 1800」を参考にし、古代ギリシア、特にアリストクセノスの音楽理論と、それに続く音楽と道徳教育に関する懐疑的な見解を通じて、音楽と哲学がどのように絡み合ってきたのかを見ていきます。

アリストクセノス: 感覚を通じた音楽理解

アリストテレスの弟子であるアリストクセノスは、音楽現象を数学的な用語ではなく、認知の対象としての音楽要素の分析を通じて記述すべきだと主張しました。彼の見解では、話し声と歌声の違いは、声のピッチ空間を通じた移動の仕方にあります。このような区別に基づき、アリストクセノスは音楽構造の理解を深め、音符(phthongos)の定義を提供しました。これにより、音楽を感覚を通じて体験し、理解するための新たな方法論を提示しました。

音楽理解のための認識と記憶

アリストクセノスは音楽理解において、認識と記憶の能力が重要であると考えました。彼によれば、音楽の内容を追うためには、成り行きを認識し、既に生じたことを記憶する必要があります。このアプローチは、音楽体験が単に現在の感覚に留まらず、未来への予測と過去の記憶を統合するものであることを示しています。

音楽と道徳教育に関する異なる視点

アリストクセノスの後、音楽が持つ教育的および倫理的価値についての考察は続きますが、この領域には懐疑的な声も存在しました。エピクロス派のフィロデモスは、音楽が情熱を模倣する能力に疑問を投じ、音楽の楽しみがその理解とは無関係であると主張しました。セクストゥス・エンペイリクスも、音楽の研究が楽しみに貢献するという考えを否定しました。これらの懐疑的な見解は、音楽と道徳教育の関係を再考するきっかけを提供します。


特集 = ブーレーズ: その音楽観を知るための 15 のキーワード ( 3 )

2016 年 1 月 5 日に, 90 年の生涯を閉じたブーレーズ.

ブーレーズの生涯や作品の解説などは他の web メディアにゆずるとして,

本記事ではブーレーズの音楽観を知るために, 現代音楽に関する 15 のキーワードを挙げ, それに関するブーレーズ自身の文章や, ブーレーズへの論評を集めました. 前回まではコチラ.

最終回の今回. キーワードは, 「即興」,「シュプレヒザング」, 「新古典主義」, 「開かれた形式」, そして「セリー」です. 続きを読む


特集 = ブーレーズ: その音楽観を知るための 15 のキーワード ( 2 )

2016 年 1 月 5 日に, 90 年の生涯を閉じたブーレーズ.

ブーレーズの生涯や作品の解説などは他の web メディアにゆずるとして,

本記事ではブーレーズの音楽観を知るために, 現代音楽に関する 15 のキーワードを挙げ, それに関するブーレーズ自身の文章や, ブーレーズへの論評を集めました. 前回はコチラ.

全 3 回を予定している 2 回目の今回. キーワードは, 「ヘテロフォニー」,「ホモフォニー」, 「ハイブリッド」,「微分音」そして「記譜法」です. 続きを読む


特集 = ブーレーズ: その音楽観を知るための 15 のキーワード ( 1 )

2016 年 1 月 5 日に, 90 年の生涯を閉じたブーレーズ.

ブーレーズの生涯や作品の解説などは他の web メディアにゆずるとして,

本サイトではあらためてブーレーズの音楽観を知るために, 現代音楽に関する 15 のキーワードを挙げ, それに関するブーレーズ自身の文章や, ブーレーズへの論評を集めました.

全 3 回を予定している 1 回目の今回. キーワードは, 「連続性/非連続性」,「偶然」, 「開かれた形式」,「電子音楽」「具体音楽」です. 続きを読む


ハイデガーが聴いた音楽

9 月 9 日に, 光文社からハイデガー『存在と時間』の新訳が発売されます. 今回は中山元訳. 古典新訳文庫のうちの 1 冊で, 全 8 巻 ( ! ) が予定されています.

  • ハイデガー ( 著 ) , 中山元 ( 訳 )『存在と時間 1』( 光文社, 2015 )


今年の 5 月には, 勁草書房の松尾啓吉訳の新装版が発売されたばかりなんですけれども.

  • 松尾啓吉 ( 訳 )『存在と時間 新装板 ( 上 ) ( 下 )』( 勁草書房, 2015 )

正直もう翻訳が出過ぎ感があるので, もう『存在と時間』に関して言えば. いまぱっと思いつく限り挙げると, 続きを読む


哲学系の事典で「音楽」はどう論じられているのか?: 『哲学事典』(平凡社)「音楽芸術論」のノート

音楽は哲学的にどう議論されているのか、あるいは議論されてきたのか。その大枠を捉えるために最も有効な手段のうちの1つが、「事典を調べる」でしょう。ということで、様々な哲学・思想系の事典で音楽に関する項目をノートをつくってみることにしました。調べてみるとけっこうでてくるものですね。事典ということで、1つ1つの項目のボリュームが大きいので、内容をかいつまんでの紹介になります。 続きを読む


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