ボーカロイドにラップをさせる、いわゆる、「ボカロラップ」あるいは「ボカラップ」を作るための手順・法則を、自分なりにまとめたものです。詳しくは、コチラを参考にしてください。
また、全体の目次は、コチラになります。
さらにまた、「ボーカロイドラップの作り方」に関連した音源を、bandcamp で公開中です。合わせて、御参考ください。
前回はコチラ.
1.3 フロウの音程を分類する
では、フロウの音程を分類してみましょう(めちゃくちゃクドいですが、この分類は、わたしが独自に考案したものであり、わたしの聴き取り能力の限界から、トンデモになっている可能性があります。しょぼい仮説程度に思っていただいて構いません)。
各楽曲には, 試聴するための動画などへのリンクが挿入されています.
(1)メロディ型
(2)オクターブ上下型
上の2つでは分かりにくいかもしれませんので、洋楽の例として、Audio Two「Top Billin’」を挙げておきます。
(3)基音一定型
※「基音一定型」という名称は、音楽家の JUN ISHIKAWA くんに考案いただきました。少し分かり難い名称ですが、ざっくり説明すると、「ぱっと聴き音程が一定に聴こえる」という意味です。
(4 – 1)喋り型(日本語らしい)
- K DUB SHINE「日出ずる処」
- ケフィアP「VOCAL-ENGINE」
(4 – 2)喋り型(英語らしい)
- May J.「Garden ft. DJ KAORI, Diggy-MO’, クレンチ&ブリスタ」 (※特に Diggy-MO’ のパート)
- 頑なP 『Femme Fatale』
それぞれの分類に、それに当てはまるのではないかと判断できる楽曲を、人間、ボーカロイドそれぞれから例として挙げました。この(1)〜(4)の順番は、ボーカロイドで再現し難いのではないか、と思われる順番になっています。つまり、(1)ほど調性 ※1 感が強く、ボーカロイドで作りやすい。(4)ほど調性感が薄く、ボーカロイドでは作りにくいということになります(が、後述しますが、実際には、この文章の執筆段階で最もボーカロイドで作り難いのは、「基音一定型」です)。
(1)と(4)の分かりやすい比較として、Dragon Ashの「Grateful Days」と、この曲をサンプリングした LG Monkeysの「Grateful Days」を聴いてみてください (Dragon Ash の方は, ネット上ではオフィシャルで試聴できませんので, Amazon へのリンクを貼っておきます…)。
両楽曲とも、ラップとして分類される歌唱法だと思います(ハーコーなヒップホップ界隈の人なら、両方ともラップじゃねえ、ていうかも知れませんが…(笑))。が、LG Monkeys の方のラップはメロディーがはっきり聴き取れる、(1)タイプ。対してDragon Ash のラップは、メロディーがあるのかどうか分かり難い、(4)タイプに分類できるでしょう(Dragon Ash の方は、Kj が「基音一定型」で、zeebra が喋り型だと思います)。Dragon Ash『Viva La Revolution』オフィシャルバンドスコアを参考にしてみると、ラップパートは、五線譜にはリズム譜しか記されておらず、メロディの採譜はされていません(この『Viva La Revolution』のオフィシャルバンドスコアは、五線譜に採譜できるラップと、そうでないラップの違いを把握するために、非常に参考になります)。
実際のラップでは、(1)〜(4)の組み合わせ、また、英語っぽく聴こえる部分と日本語っぽく聴こえる部分を組み合わせます。例えば、ライムスター「The Choice Is Yours」での宇多丸のラップは、基本的には、英語っぽく聴こえる音程ですが、フロウ節 (※) の末でキメるときは、はっきり日本語として聞き取れる音程となります。
※ フロウ節 わたしが勝手に考案した語句です。ヒップホップミュージックの場合、トラックの小節と、歌唱上(=ラップ上)の小節( = 区切れ)がズレることで、様々な個性的なフロウが生まれるのではないか、という仮説が元になっています。歌唱上の小節を、フロウ節と称することにします。
では、ボーカロイドのラップ、いわゆるボカロラップでは、どのような楽曲が(1)〜(4)の分類に当てはまるのでしょうか。既に先述の分類の段階で、例になる楽曲を挙げましたが、先ず、ほとんどの楽曲が(1)メロディ型です。Mitchie M の『愛 DEE』にでてくる、巡音ルカのラップは(2)「オクターブ上下型」に当てはまるでしょう。というか、Mitchie M のラップはほとんど(2)です(少なくともわたしにはそう聴こえます)。(3)は、ぱっと聴きは、人間の場合は、音程は一定に聞こえますが、実は、1つの音節内で、微妙に音程が変化しています。これを再現しないと、ボーカロイドでは、「お経みたいなラップ」に思われてしまいます。成功例は、わたしの聴いた範囲ではありません。(4)「喋り型」、特に日本語らしい喋りは、挑戦している人はいますが、聴いた範囲では、成功している例は、ケフィアP「VOCAL ENGINE」(これは鏡音レンです)だけです。あと、手前味噌ですが、わたしの作った「Ultimate MIKU Song」も、日本語らしい(4)に挑戦しています。
英語らしい(4)ですが、巡音ルカのラップなどがこれにあてはまるでしょう。しかし、補足として、「英語らしい」とはあくまで「日本人にとって英語らしく聴こえる」という意味であり、英語ネイティヴの人が、巡音ルカの英語ラップを聴いて、「英語らしい」と判断するかどうかは分かりません。
今回はここまで。次回は、「日本語ラップに限定する」です。