「 Xtra Peace 」一覧



前衛とポップが同時するジャズ・オペラ: Lucian Ban『Oedipe Redux』

(画像出典: BandCamp)

20 世紀初頭のルーマニアの音楽家、George Enescu によるオペラ『オイディプス王』が、ジャズへと解体・再構築。『Oedipe Redux』と題されニューヨークのレーベル Sunnyside Records から 5 月にリリースされます。手がけたのはトランスシルバニアのピアニスト Lucian Ban と 、アメリカのバイオリニスト Mat Maneri。

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左翼、ヒップホップ、坂本龍一

(出典: 坂本龍一 Twitter)

4 月 2 日、寝る前にスマホで web ニュースを確認したら、坂本龍一の訃報。

「あ、亡くなったんだ」

くらいで、めちゃくちゃ驚いたりはしませんでした。

高橋幸宏のときは驚きましたが。

坂本の場合、闘病生活をプロデュースしていたというか、もっと直接的に言うと、死に向かう様をプロデュースしていたというか、死に向かう音楽を作品にしていたように見えましたから。

だからめちゃくちゃ驚くことはなかったのですが、それでも、次の日、4 月 3 日は、一日中、坂本龍一のことを考えたり考えなかったりでしたね。

というのも、実はいちばん最初に買った CD が坂本龍一の『Sweet Revange』だったので。中 1 のときですかね。なんとなく、スゴい人なのだということを周りの大人の一部から刷り込まれていましたので、子どもの頃の好きなものって、周りの年上からの影響もけっこうあるじゃないですか。だから、背伸びして買った、ていう感じですかね。ネームバリューで聴いていたので、そんなに良さを理解していたわけではないのですが。

それから、中学生の頃は、『1996』も買って聴いてました。ただ、『1996』はけっこう好きで聴いてましたね。中学から高校にかけて。

ただ、中学から高校にかけてはお小遣い制でおカネも全然なかったので、坂本龍一の作品に関してはその 2 枚と、あと「energy flow」をずっと聴いていましたね。

坂本龍一は膨大な数の作品を残していますが、1 つだけ、坂本龍一と言えばコレ、という作品を選べ、と言われたら私は、「energy flow」ですね。

「energy flow」はやはり、インストで、当時のミリオンヒットを記録したのが偉業ですよね。そんなの後にも先にも、未だに坂本龍一だけですから。言葉は要りませんから。本当に音楽の力だけで、ミリオンヒットを叩き出した、貴重な作品ですよね。坂本龍一の最も偉大で、最も成功した楽曲は間違いなく「enegy flow」でしょう。作曲の技巧的に優れいているのような、最高傑作はまた別にあるかもしれませんが。「enegy flow」は本当に、大きなインパクトを残しましたよね。

「enegy flow」が流行ったのが高校の頃で、同じ頃に中谷美紀も流行りましたね。『cure』は傑作ですよね。

それから、大学に入って、バイトもするようになって、おカネも中高時代に比べたら使えるようになったので、たくさん CD やレコードを買うようになりましたが、そのなかに坂本龍一や YMO の作品もありましたね。大学生くらいは、坂本龍一を聴きたがる年齢だと思うのですが、私もご多分に漏れず、当時の坂本龍一をリアルタイムで追っていましたね。『ELEPHANTISM』とか『CASM』とか。『out of noise』くらいまでは、記憶が定かではありませんが、リアルタイムでリリースされていたアルバムを買って聴いていた気がします。

それから、昔の YMO のレコードを中古で買ってみたり。雑誌の影響で「『BGM』が好き」とか言ってみたりですね。

いまみたいにサブスクでなんでも聞ける時代ではなかったので、当時のおカネ払って聴けた範囲での判断でしかないのですが、『1996』以外は、実はそこまでハマらなかったですね。坂本龍一名義のソロ作は。ただ、ネームバリューもありますし、初めて買った CD の音楽家だったというのもありますし、三つ子の魂ではありませんが、半ば盲目的に、「良いんだ」と思い込んで CD を買っていましたね。単に良さを理解できていなかっただけかもしれませんが。『out of noise』収録の「hibari」は好きでしたが。

あとは、HASYMO は良かったですね。衝撃でした。当時、すごくかっこいいと思いました。YMO のオリジナルな、エキゾティックな旋律と、坂本龍一がソロで培ってきた (20 世紀初頭を坂本流に解釈した) コード感、当時最先端だった (そいて今でも色褪せない) エレクトロニカの音響、何より生演奏のグルーヴ。

HASYMO の頃はけっこう、精力的に 3 人でもライブ活動もしていた記憶があるのですが、フェスなどでも観ることのできる機会が何回かあったはずなのですが、今ふりかえれば、この頃にライブ観ておくべきでしたね。けっきょく生・坂本を一度も鑑賞できませんでした。

世間の評価も含め、やはりちょっと、好意的な捉え方をしにくくなっていったのが、東日本大震災にともなう原発問題きっかけの坂本の言動ですね。個人的にも、大学院、社会人と、20 代も後半になればジャズやら現代音楽にもいっちょかみで詳しくなって、いつの間にか坂本の音楽を追わなくなりました。

当時もう、10 年以上前になりますが、原発問題をめぐる坂本の発言に、違和感を表す記事をこのブログでも書きましたね。

今読み返すと自分でもかなり酷いことを書いていて、10 年前ということでご容赦願いたいのですが、当時は私は、「音楽家は音楽で、社会への意見を表現するべきだ」という意見を持っていました。今でも理想的にはこの意見を捨てていませんが、一方で、音楽家も市民的な職業のうちの 1 つなので、ぜんぜん、社会運動に参加することはおかしくもなんともないとも思うようになりました。

例えば靴職人は、アンチ体制のような靴を作る必要はありませんし、いや、アンチ体制な靴は見てみたいのですが、それはそれで。

でも、派手なスニーカーとか、明らかに日常向きでないデザインなどで、靴を通じて社会に訴えかけることはできますね。

何が言いたかったか、はて。

そうですね、坂本龍一が社会運動に参加していたことを、そこまでめくじら立てる必要はないのでは?

と思いますね。

と思うようになりました。今では。

しかし坂本が亡くなって、左翼的な音楽家勢が減ったのは寂しいですね。東日本大震災に端を発した原発問題や、これに関連するように SEALDs ラップとか、そういうふうに、左翼的に社会を変革していこうと訴える音楽が、最近は元気がないように思えます。坂本が亡くなったことで、さらに元気がなくなるのかな、と思うと、寂しい気持ちになります。

坂本は、抗議活動としてデモ集会において「たかが電気」のようなスピーチするだけでなく、実際に社会問題をテーマにした音楽作品も残してますよね。

脱原発運動でも、Shingo02 とコラボしたヒップホップ楽曲を発表しています。

個人的には、坂本のヒップホップ作品が好きでしたね。クラシック畑からのヒップホップへのアプローチの、稀有な例だと思います。最近でこそ、ヒップホップ的なアプローチの現代音楽というのが、少しずつ聴けるようになってきましたが、「ヒップホップのプロデューサーがクラシックサンプリングしました」的なのではなく、しっかし、クラシックや現代音楽の文法を踏まえつつ、ヒップホップとの融合を試みた先駆的な音楽家だったのではないでしょうか。坂本龍一は。

代表的なのは「undercooled」ですね。

「energy
flow」のように商業的に大成功したというわけではないと思いますが、坂本龍一がヒップホップへアプローチした作品のなかでも傑作ではないでしょうか。「undercooled」。

「undercooled」以前でも、「1919」のサンプリングは「ラップ」という意図で採用されていますし (「1919」の楽曲コンセプトとして、テクノなのですが)、忘れてはいけないのは Geisha Girls ですね。

Geisha Girls はコメディユニットということで、さすが、ヒップホップをそもそもパロディとして導入しているんですよね。パロディとは言え、ダウンタウンの佇まいも含め、めちゃくちゃカッコいいですけどね。Geisha Girls。

そもそも『Sweet Revenge』の音楽的テーマがヒップホップだったのですが。

こうした革新的なヒップホップへ挑んでいた坂本のソロ楽曲 (「Riot In Lagos」)が、そもそもヒップホップのルーツの 1 つだった、というのも音楽における歴史的物語ですね。

芸術は長い。人生は短い。

早すぎないですが? 71 歳。

たくさんたくさん、音楽で楽しませてくれました。音楽で考えさせてくれました。ありがとうございました。


MPC Live 2 ではできないこと【随時更新】

現行の MPC シリーズ (MPC X、Live 2、One) は強力な音楽制作ツールで、これ一台で音楽制作を完結できるほど、何でもできてしまう機材です。私はこれを形を持った DAW と呼んでいます。

何でもできてしまうのですが、使い込んでいるうちに、「これはできないのか?」という点がいくつか見つかります。この記事では、MPC ではできないことを紹介します。

ちなみに 2023 年 3 月時点で最新のファームウェア、2.11において MPC Live ではできないことです。できないことは発見次第、追記します。今後、ファームウェアのアップデートで可能になるかもしれません。

シーケンス単位での音量のオートメーションは書けない

シーケンス単位では、音量のオートメーションを書けないようです。

例えば楽曲ができてアウトロをフェードアウトで終わらせたい場合は、アウトロに該当するシーケンスをオーディオへバウンスして、音量オートメーションを書くしかないようです。

MIDI の書き出し

MIDI の読み込みはできますが、書き出しはできません。

代替としては、拡張子 mpcpattern のファイルへ書き出し、パソコンの MPC のソフトウェアで読み込み、パソコン上で変換する方法があります。

要するに MPC Live 2 単体では MIDI ファイルを書き出す機能はありませんが、パソコンと連携させると出来なくはない、ということです。

シーケンス内での BPM の自動変更

シーケンス別に BPM を変更することはできますが、シーケンス内で変更することはできません。

別の言い方をすれば、BPM のオートメーションを書くことはできません。

1 小節未満のシーケンスを作り、異なる BPM を設定するしかありません。

シーケンスのオートメーションを書けないことへの不満は、フォーラムでも話題になっています。

私も、シーケンスのオートメーション機能は実装してほしいですね。

ソングモードでフィンガードラム

できません。

シーケンスを切り替えながらフィンガードラムをする場合は、ネクストシーケンスモードを使うしかないようです。

ネクストシーケンスモードを操作しながらフィンガードラムをするとなると、手が塞がりどうしてもフィンガードラムの手数が少なくなります。

シーケンスの順番を予め決めておいてそれに合わせてフィンガードラムをする場合は、ドラム以外のトラックのシーケンスをソングモードでまとめた上でオーディオなど書き出すしかありません。

シーケンスをアドリブで行き来するには、メイン画面で、データダイヤルでシーケンスを切り替えるしかないようですが、限界があるかな、というのが正直なところです。

ただ、シーケンスを書き出してパッドにアサインしたり、クリッププログラムを活用するなど、工夫の余地は十分あります。


特定のパッドをループさせながら、フィンガードラムする方法(MPC Live 2)

現行 MPC (X、Live 2、One) は、サンプル音源を演奏する 3 つのモードがあります。このモードのことを正式には「プログラム」と言います。3 つのプログラムとは、1. ドラムプログラム、2. キーグループプログラム、3. クリッププログラムです。

これらのなかで最も使われるのはドラムプログラムです。ドラムプログラムはまさにドラムのように、パッドを叩けばサンプルが 1 回鳴ります。パッドにどのようなサンプルをアサインするかによって、ドラムプログラムだけで多彩な楽曲を制作することができます。そしてフィンガードラムだけでヒップホップやハウスなどクラブ系音楽を演奏することができるのです。

ドラムプログラムでは、パッド単位でループできない

現行 MPC は形を持った DAW と言えるほど、音楽制作に関することなら何でもできるのですが、使い込んでいるうちに、実装されていない機能に気付きます。そのうちの 1 つが、ドラムプログラムで、特定のパッドをループさせながらフィンガードラムをする設定です。

ドラムプログラムで、特定のパッドをループさせながらフィンガードラムをする設定は、2023 年現在のファームウェア = 2.11 ではありません (たぶん。あったら教えてください)。しかしクリッププログラムを使えば可能です。

クリッププログラムでフィンガードラムを設定する方法

クリッププログラムを使うと、パッドごとに「Toggle」または「One Shot」を設定できます。さらに、クオンタイズをオフにすることも可能で、ワープ機能を無効することも、パッドのミュートグループを変更することもできます。

これらを組み合わせることで、クリッププログラムをフィンガードラムのような演奏スタイルに近づけることができます。つまり、特定のパッドをループ再生させながら、他のパッドでフィンガードラムのように演奏することができるのです。

以下の動画も参考にしてください。

クリッププログラムのエディット画面で、ループ再生したいサンプルをアサインしたパッドには「Toggle」を設定し、フィンガードラムのように演奏したいパッドには「One Shot」を設定します。また、ワープ機能とクオンタイズをオフに、パッドのミュートグループもオフにします。

これらの設定を組み合わせることで、クリップモードとドラムプログラムモードを同時に使ったような演奏が可能です。

クリッププログラムでフィンガードラムをする際の注意点

ただし、再生中の「Toggle」でループ再生しているパッドを叩くと、ループが停止してしまうことに注意が必要です。ドラムプログラムで数小節にわたるループサンプル素材をパッドにアサインした場合は、同じパッドを再度叩くことで、サンプルの頭から再生することができます。しかし、クリッププログラムでは同じ操作をすると「停止」してしまうため、演奏感覚が異なることにも注意が必要です。


MPC で出来てしまう意外なこと

現行 MPC (X、Live 2、One、ファームウェア 2.11 )でできてしまう意外なことを紹介します。

便利な裏ワザから意味不なナゾ機能まで、「形を持った DAW」として、パーフェクトな音楽制作機材として名高い、深遠な MPC の世界へようこそ…

オーディオインターフェイスを使える

現行の MPC は、それ自体、パソコンと接続してオーディオインターフェイスとして使うことができます。が、MPC にオーディオインターフェイスを繋げてることもできます。
これによって、オーディオ入力・出力ともにチャンネルが増え、MPC はより強力な音楽制作ツールへ変貌します。

例えば MPC Live 2 は XLR 入力がありませんが、XLR 入力のあるオーディオインターフェイスを Live 2 へ接続すれば、マイクを XLR 入力で録音するなどができるようになります。
ただ、Live 2 の場合、内蔵スピーカーが使えなくなります。何とかしてくれ。

また、オーディオインターフェイスの種類によっては、ノイズがヒドく、ライブパフォーマンスで扱い難いケースもあります。オーディオインターフェイスの設定で解消できることもあるかもしれませんが、私の場合、YAMAHA AG-03 で試したところ、ノイズがヒドくて使えたものではありませんでした (MPC が AG-03 を認識はしました)。

USB ハブを使える

Live 2 の場合、USB ポートが 2 つあるのですが、1 つを外部ストレージ、1 つをオーディオインターフェイスで使うと、MIDI キーボードを接続できなくなります。

ですが、パソコンのように USB ハブを使えばこの問題も解消します。

パソコンかよ!

MIDI の読み込み

ドラムプログラムなどと同じ要領で、ブラウザ画面から外部ストレージなどに保存した MIDI ファイルを読み込みことができます。特殊な設定は必要ありません。

ただし、MIDI への書き出しはできないようです。できるようにしれくれ。

特定のパッドを反復させながら、他のパッドでフィンガードラムをする

クリッププログラムの裏ワザ的な使い方です。
クリッププログラムは、パッド単位で Toggle か One Shot かを設定できます。また、ミュートグループやクオンタイズ、そしてサンプルのワープをオフにできます。

反復させたい素材をアサインしたパッドだけ Toggle に設定し、他のパッドは One Shot に設定、そしてミュートグループ、クオンタイズ、(ワンショットサンプルの) ワープをオフにすれば、特定のパッドをループさながら、他のパッドでフィンガードラムをすることができます。

パッドから出ている音を別のパッドで停止する

ドラムプログラムにおいて、サンプルをアサインしていない = 空のパッドと、サンプルをアサインしているパッドを、ミュートグループやターゲットミュートでまとめると、サンプルをアサインしたパッドから出ている音を、空のパッドを叩くことで止めることができます。

音階 1 つ 1 つに異なるサンプルを使って、鍵盤で演奏できる

音色が一つ一つ鍵盤によって違うピアノをイメージしてください。ドの音はピアノ、レの音はバイオリン、ミの音はギター… みたいな夢の鍵盤楽器がほしいと思ったことはありませんか? 現行の MPC ではそれが可能です。キーグループのパッドプログラミングから設定できます。

キーグループでは、ユーザーが用意したサンプルを仮想の鍵盤へ割り当てて、音階を生成することができます。

これを設定する際、キーグループ内にさらにグループを設定するのですが、仮にこの、キーグループ内のグループをここではサンプルグループと呼びましょう。そのサンプルグループを 1 鍵盤 1 サンプルグループに設定すると (データダイヤルをがらがら回したらできます)、1 鍵盤ごとに違うサンプルを割り当てることができます。

結果、音階 1 つ 1 つに異なるサンプルを使って、1 つの鍵盤で演奏できます。
誰がこんな設定するんだ、て感じですが。

MIDI ノートのランダム自動生成

Q-LINK で特定のプログラムにだけリアルタインでエフェクトをかける、みたいなみんながしたいことの設定はかなり面倒臭いのですが、一部のモノ好き電子音楽愛好家しか使わないだろ、というような機能は、割とさささっとできたりします。

それが MIDI ノートのランダム自動生成です。
トラックの鉛筆マークを押すと、ランダマイズのアイコンがありますので、それを押すと MIDI ノートを自動でランダムに配置できます。ランダム具合はパラメータがあるので調整できます。

もちろん、ランダムに自動配置された MIDI ノートを再生した音楽はなんとも奇怪で、趣があります。

これも誰が使うんだ、しかも音階ごとに異なるサンプルを使った鍵盤を作る、に比べてはるかに単純な手順でできるのですが、個人的には好きな機能ですので、ファームウェアをアップデートしてもいつまでも残しててや、と思う次第です。



本当は簡単な MPC Live 2 の使い方: MPC Live 2 の基本的な使い方について解説動画を公開しました

MPC Live 2 は、シーケンサー付きサンプラーである MPC の現行モデルの 1 つ。自分の好きな音を録音 =サンプリングし、編集・加工した音素材を使って楽曲制作したり、演奏したりできる音楽機材です。

サンプリングした音素材の演奏は4 × 4 に配置された 16 個のパッドで行います。この 16 個のパッドを自在に叩いて「フィンガードラム」もできます。

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