音楽学と哲学 (『The Oxford Handbook of Western Music and Philosophy』読書ノート (2)「1.1 Historical Musicology and Philospohy」)

この記事は『The Oxford Handbook of Western Music and Philosophy』「PART Ⅰ. Chapter 1. Historical Musicology and Philospophy」の読書ノートです。

本章では、音楽学と哲学の関係が探求されています。音楽学はその定義が曖昧であり、音楽とロゴス(言語)の対立が原因であることを指摘します。音楽学は19世紀後半に確立され、グイド・アドラー Guido Adler の『音楽学の範囲、方法及び目標』がその基礎を築きました。

歴史的音楽学は音楽作品そのものを対象とし、民族音楽学は音楽文化やその実践を対象とします。新音楽学の台頭により、音楽を文化的実践として捉える視点が強調され、演奏、作曲、受容に関する社会的文脈が重要視されています。

哲学と音楽理論の間にはしばしば摩擦があり、アドルノ Theodor W. Adorno のジャズに関する論文やハルム Oscar Bie Halm のヘーゲル Georg Wilhelm Friedrich Hegel の歴史解釈がその例です。19世紀のドイツでは、音楽と哲学が密接に結びついており、ショーペンハウアー Arthur Schopenhauer は音楽を意志の直接的表現と見なし、他の芸術形式よりも高く評価しました。

この章は、音楽学と哲学の関係を批判的に分析し、両者の学際的な対話が重要であることを強調しています。

では、まずこの章の概要について、簡単にまとめていきましょう。

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音楽学の定義の曖昧さ

  • 音楽学はその定義が明確ではない
  • 音楽とロゴス(言語)の対立が原因

音楽学の起源と発展

  • 19世紀後半に学問として確立
  • アドラー『音楽学の範囲、方法及び目標』が基礎

歴史的音楽学と民族音楽学の対立

  • 歴史的音楽学は音楽作品を対象
  • 民族音楽学は音楽文化を対象

文化的文脈と音楽実践の重要性

  • 新音楽学の台頭により強調される
  • 音楽の演奏、作曲、受容に関する社会的文脈の重要性

音楽学と哲学の交差点

  • 一方向的な関係から、批判的分析へ
  • 分析哲学と大陸哲学の両方が影響

美学の持続

  • 美的体験の重要性を再認識
  • 科学的分析だけでは捉えきれない

身体性の回復

  • 身体的、音響的、物質的な側面を重視
  • パフォーマンス、サウンド、エージェンシー、場所の研究が重要

リスニングの重要性

  • Jean-Luc Nancy「Is listening something of which philosophy is capable?」への言及
  • リスニングの重要性と音楽の非言語的思考を理解することが必要

結論

  • 音楽学と哲学の間に新たな関係を築くためには、学際的な対話が必要
  • 音楽の非言語的思考を理解し、その価値を認識することが重要

それでは詳しい内容を解説しましょう。

音楽学の定義の曖昧さと起源

音楽学はその定義が曖昧であるという問題を抱えています。ジョセフ・カーマン Joseph Kerman によると、音楽についての考え方は急速に変化しています。この学問は、音楽とロゴス(言語)の間の解消できない対立に根ざしています。音楽学は19世紀後半に科学として確立され、最初の学術誌である『Vierteljahrsschrift für Musikwissenschaf』が1885年に創刊され、アドラーの『音楽学の範囲、方法及び目標』がこの分野の基礎を築きました。

歴史的音楽学と民族音楽学の対立

歴史的音楽学と民族音楽学の対立は、対象とするものの違いに起因します。歴史的音楽学は主に音楽作品そのものを対象とし、民族音楽学は音楽文化やその実践を対象とします。しかし、これらの区分は絶対的ではなく、互いに補完し合うことが多いです。例えば、新音楽学の台頭により、音楽を文化的実践として捉える視点が強調され、音楽の演奏、作曲、受容に関する社会的文脈が重要視されるようになりました。

哲学との交差点

音楽学と哲学の関係は長い間一方向的なものでしたが、最近では音楽が哲学にどのように組み込まれているかを批判的に分析する必要が認識されています。音楽学における分析哲学と大陸哲学の両方のアプローチが重要です。それぞれのアプローチは異なるが、音楽と哲学の関係を深めるためにはどちらも重要です。

美学の持続

歴史的音楽学は、美学的体験の重要性を再認識する必要があります。音楽が提供する美的経験は、科学的な分析だけでは捉えきれない部分が多いです。音楽は単なる歴史的産物ではなく、美的価値を持つものであり、その美的側面が再評価されるべきです。

身体性の回復

音楽学は、音楽の身体的、音響的、物質的な側面を重視する必要があります。パフォーマンス、サウンド、エージェンシー、場所の研究が重要であり、これらの視点から音楽を再評価することが求められます。

リスニングの重要性

Jean-Luc Nancyの「Is listening something of which philosophy is capable?」では、哲学がリスニングにどう対応するかを問うています。音楽と哲学の関係を深めるためには、リスニングが重要であり、音楽が持つ非言語的な思考を理解し、その価値を認識することが求められます。

結論

音楽学と哲学の間に新たな関係を築くためには、両者の学際的な対話が必要です。音楽が持つ非言語的な思考を理解し、その価値を認識することが重要です。これにより、音楽学と哲学が互いに影響し合い、より豊かな学問的発展が期待されます。

この読書ノートは、『The Oxford Handbook of Western Music and Philosophy』「PART Ⅰ. Chapter 1. Historical Musicology and Philospophy」の内容をまとめたものです。より詳細な内容は、『The Oxford Handbook of Western Music and Philosophy』をご確認ください。


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