近代の音楽思想 (3): シェリングとヘーゲル

本ブログでは「音楽の哲学史」というシリーズを通して、音楽に対する哲学者たちの見解を探求しています。前回の記事では、ショーペンハウアーの音楽思想について詳しく解説しました。今回は、その続きとして、シェリングとヘーゲルという二人の哲学者の音楽観について詳しく見ていきます。シェリングとヘーゲルはそれぞれどのように音楽を捉え、その哲学体系に組み込んだのでしょうか?彼らの見解を探ることで、音楽の本質についての理解が深まることでしょう。

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シェリングの音楽美学

芸術と無限の関係

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・シェリング Friedrich Wilhelm Joseph von Schelling は、芸術を有限の中に無限が現れるものと定義しました。彼は芸術を造形芸術と口述芸術に分け、音楽を造形芸術に分類します。造形芸術はその特有の素材、つまり媒体を操作することで機能し、一方で口述芸術は内容を意味的に伝達します。

音楽の三要素

シェリングは音楽をリズム、変調(和声)、旋律の三要素に分けました。リズムは音楽における音楽的な要素、変調は絵画的な要素、旋律は彫刻的な要素と位置づけられます。彼はリズム、つまり音楽の時間的側面が根本的に重要であると考え、音楽の必然的な形式は時間の連続であると主張しました。リズムは一連の時間的に連続した瞬間を一体として知覚させ、これにより様々な経験を一体として知覚させる自己意識と同様の機能を果たします。

ヘーゲルの音楽美学

理念の歴史的発展

ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル Georg Wilhelm Friedrich Hegel は、彼の芸術に関する考察をより厳密かつ体系的に発展させました。ヘーゲルの体系は理想主義的な形而上学に基づき、芸術の発展を歴史的に分析します。彼によれば、現実は自己決定的な精神的原理、すなわち理念 Idee と一致します。理念は、正の瞬間であるテーゼ、その否定であるアンチテーゼ、そして両者の総合であるシンセシスによって歴史的に発展します。

芸術の三位一体

ヘーゲルは芸術を象徴的、古典的、ロマン主義的な三位一体の構造で分析します。象徴的芸術は本来の芸術に達せず、精神の自由の十分な感覚的表現を提供するのではなく、精神の象徴を提供することにとどまります。古典的芸術は最も完全な形態の芸術であり、精神的なものを完全に感覚的に表現します。彼はこれを古典ギリシャ芸術、特に彫刻で最もよく例示されると考えています。ロマン主義芸術(ヘーゲルは中世以降のキリスト教芸術を指す)は、目に見える領域を超えた内容の表現を特徴とし、外的な自由ではなく内的な自由を表現します。

音楽の役割と表現

ヘーゲルによれば、音楽は空間的な広がりを完全に放棄し、時間を通じてのみ展開するため、内的自由の表現に最も適した芸術です。旋律はリズムと和声の総合であり、音楽の最高の表現です。旋律は、時間の展開において感情を提示することにより、音楽が精神の自由に感覚的な形を与えることを可能にします。

独立音楽と伴奏音楽

ヘーゲルは伴奏音楽と独立音楽を区別し、前者には音楽とテキストを含む作品が含まれ、後者は器楽曲です。音楽が伴奏として機能する場合、ヘーゲルはテキストが音楽に従属すべきと考えます。独立音楽はその最大の潜在能力を発揮し、精神の自由を表現するのに最も適しています。

演奏者の役割

ヘーゲルの音楽思想の独創性は、演奏者の役割について述べた数少ない考察にも現れています。彼は二つの演奏アプローチを区別し、第一のアプローチは演奏者の個人的な貢献を放棄し、作品を可能な限り忠実に再現しようとするものであり、第二のアプローチは演奏者に一定の自由を許します。

結論

シェリングとヘーゲルの音楽美学は、音楽の本質についての深い洞察を提供します。シェリングは音楽を無限の現れとして捉え、リズムの重要性を強調しました。一方、ヘーゲルは音楽を時間の中で展開する内的自由の最高の表現と位置づけました。これらの考察は、音楽が単なる音の集合ではなく、人間の精神と深く結びついた表現形式であることを示しています。次回は、これらの思想が現代の音楽哲学にどのように影響を与えたかについてさらに探求していきます。


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