ロマン主義の音楽(5)シューベルト

西洋音楽史、ロマン主義の5回目です。

前回は, ロマン主義の音楽の形式、ジャンルについて紹介しました。

なお, 西洋音楽史の目次はコチラになります。

さて、今回からロマン主義のなかでも、初期に分類される(初期ロマン派などと言われます)代表的な音楽家を取り上げたいと思います。今回は、シューベルト Franz Peter Schubert です。ウィーンで生まれ、活動し、亡くなりましたが、その価値は生前はほとんど認められませんでした。しかし作品の質の高さと構成への影響という点で、初期ロマン派の作曲家の中で最も重要な人物です。

シューベルトの作品の特徴としては、

  • 自然な抒情性をそなえた旋律の美しさ
  • 和音の色彩感覚にすぐれいている点

にあります。

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1.歌曲

シューベルトの業績の中心は、600曲を超える歌曲です。

1−1.代表作

10代から歌曲を作曲し始めました。17〜18歳のときには、代表作である《糸を紡ぐグレートヒェン》Gretchen am spinnrade《魔王》Der Erlkönig を作曲しています。

  • 《糸を紡ぐグレートヒェン》
  • 《魔王》

後期の代表作には、《美しき水車小屋の娘》Die schoene Muellerin《冬の旅》Winterreiseといった、連作歌曲があります。

  • 《美しき水車小屋の娘》
  • 《冬の旅》

1−2.シューベルト歌曲の重要性

シューベルトは歌曲において、

  • 有節形式
  • 変奏有節形式
  • 通作形式
  • 3部形式
  • 前半と後半に分かれる形式
  • 以上の変化形

など、歌曲として考えられるあらゆる形式を用いました。

シューベルトの歌曲の重要性は、

  • 旋律の魅力
  • ピアノに音楽表現の大きな役割を担わせたこと

にあります。

そのピアノ伴奏は、有名な《野ばら》 Heidenröslein のように単純なものもありますが、

  • 《野ばら》

多くが、絵画的なイメージを描く音型や、多様な和声的手法によって、詩の深い情緒内容を表しています。

2.器楽作品

器楽作品ではシューベルトは、古典派の形式に基づきながら、情緒性に溢れた独自の境地を確立しました。

特に後期に、傑作が多い。例えば、

  • 交響曲第7番 ロ短調《未完成》
  • 交響曲第8番 ハ長調《ザ・グレート》Große Sinfonie
  • 弦楽四重奏曲第13番 イ短調《ロザムンデ》Rosamunde
  • 弦楽四重奏曲第14番 ニ短調《死と乙女》Death and the Maiden
  • 弦楽四重奏曲第15番 ト長調
  • ピアノソナタ第19番 ハ短調
  • ピアノソナタ第20番 イ長調
  • ピアノソナタ第21番 変ロ長調

などです。

次回メンデルスゾーンを取り上げます。

【参考文献】

  • 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
  • 田村和紀夫『アナリーゼで解き明かす 新 名曲が語る音楽史 グレゴリオ聖歌からポピュラー音楽まで』
  • 岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』
  • 山根銀ニ『音楽の歴史』


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