ロマン主義の音楽(7)シューマン

西洋音楽史、ロマン主義の7回目です。さて、初期ロマン派において最重要人物とされるのはシューベルト Franz Peter Schubert ですが、シューベルトに続いて初期ロマン派を代表する音楽家は、メンデルスゾーン Jakob Ludwig Felix Mendelssohn Bartholdy 、シューマン Robert Alexander Schumann 、ショパン Fryderyk Franciszek Chopin です。

前回のエントリーではこの3人のうちメンデルスゾーンを取り上げましたが、今回はシューマンを取り上げます。

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1.生まれ、音楽の特徴

シューマンはドイツのツヴィッカウで生まれました。

シューマンの音楽の特徴は、尽きることのないロマン的精神の燃焼だと言われることがあります。彼の精神は矛盾する傾向を併せ持っていて、自分自身でその精神を、「衝動的なフロレスタン Florestan」「夢想家のオイゼビウス Eusebius」「成熟した大家のラロ Raro」と言い表しました。

2.ホフマンからの影響

シューマンはホフマン Ernst Theodor Amadeus Hoffmann の評論や小説から大きな影響を受けました。

ホフマンは19世紀初頭に活躍した小説家、作曲家、音楽批評家です。1808年〜09年に歌劇場の音楽監督を務め、オペラ《水の精》Undine を作曲して高く評価されました。

  • 《水の精》

また、ラオプツィヒの音楽新聞に書いた音楽批評や、『ベートーヴェンの器楽』などの音楽論を通じ、ロマン主義的音楽観へ決定的な影響を与えました、文学作品としては、『カロー風の幻想画』『牝猫ムルの人生観』などがあります。

シューマンの器楽曲には、ホフマンの作品を暗示していると思われる題名がありますが、ただしだからといってそれらの作品を標題音楽であると単純に判断することはできません。というのも、シューマンの音楽は、芸術の来ん原意存在する詩的な想念が、音楽という形でもって表現されたものだ、と考えられているからです。

3.創作の時期

シューマンは、一定の時期に1つのジャンルをまとめて作曲しました。

  • 1839年まで: ピアノ作品が集中している
  • 1840年: 歌曲の年
  • 1840年以降: 代表的な管弦楽曲・室内音楽

こうした点も、シューマンの創作の特徴です。

4.ピアノ小品集

シューマンの独自性が最も表れているのが、ピアノ小品集です。例えば、20曲の性格的小品の集まりである《謝肉祭》Carnaval です。

シューマンのピアノ小品集は、1曲1曲が、極端に短いものや、断片的なものがあるなど、個性的で、一聴すると統一性を感じられません。しかし明らかに、全楽章が1つの統一性を以って作曲されています。

《謝肉祭》の場合は、全体が或る一定の音列に関連付けられています(このことは、「スフィンクス 」Sphinxes と名付けられた楽譜にはっきりと示されています)。

5.歌曲

シューマンは、シューベルトに次いで重要な歌曲の作曲家である、とみなされています。シューベルトに比べシューマンの歌曲は、形式的に凝縮され、感情表現の繊細さが増していると言われます。また、ピアノの表現力も増し、前奏・間奏・後奏が重要な意味を持つようになります。

例えば、連作歌曲《詩人の恋》Dichterliebeでは、最終曲(第16)の後奏で第12曲の後奏が回想され、ロマン的な余韻を添えるような効果があります。

6.多楽章器楽作品

シューマンは、多楽章の器楽作品(交響曲や室内楽曲など)に関しては、ベートーヴェン Ludwig van Beethoven を理想にしました。ただ、シューマンは単に古典派の伝統を受け継いだわけではありません。どの作品も独特の想像力と情念に溢れる世界を形成しています。

  • 交響曲第1番変ロ長調《春》Frühling

  • 《幻想小曲集》Fantasiestücke

7.音楽ジャーナリズム

19世紀には音楽雑誌が相次いで創刊され、音楽の普及と研究に役立てられました。また、作曲家も著述活動を行っていました。シューマンはその代表です。シューマンは1834年『音楽新報』Neue Zaitschrift Fur Musik を創刊し、ショパン、ベルリオーズ Louis Hector Berlioz 、ブラームス Johannes Brahms を紹介するために自ら執筆しました。



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