西洋音楽史、20世紀後半の8回目です。前回はコチラ.
さて今回は、アメリカ実験音楽の流派の1つ、フルクサス Fluxus から生まれたミニマル・ミュージック Minimal Music を取り上げます。
黎明期のミニマル・ミュージック
1960年代後半頃から、アメリカではフルクサスのメンバーだったヤング La Monte Young らが、ミニマル・ミュージックを生み出しました。ヤング以外の初期の代表的な作曲家としては、
- ライリー Terry Riley(ヤングとともに、バークリーで音楽を研究した)
- ライヒ Steve Reich(アフリカのドラムから影響を受ける)
- グラス Philip Glass(ラヴィ・シャンカルから影響を受ける)
がいます。
ミニマル・ミュージックの特徴
4人の作風はそれぞれ個性的です。ただ共通しているのは、彼らは調性による三和音を躊躇なく使用し、限られた音素材を何度も反復するという手法を駆使しました。
「ミニマル」という言葉は、絵画のミニマル・アート(同じかたちを無数に連ねていき、その組み合わせ同士の間で相互に鑑賞が起こっているような美術作品)から借用されました。
ただ、音楽的には、ヴェーベルンやサティ、東洋の民族音楽、古代・中世の音楽の影響が強いと言われています。
初期のミニマル・ミュージックの代表作には、上記に挙げた、ライヒ《カム・アウト》(テープ・ループを使用した作品)や、ライリー《イン・C》があります。これらの楽曲では、作曲家が音型をずらしていくプロセスを作り、そこからその都度、どのような音の響きが生じるのかを聴き取ることを、楽しませました。
ポスト・ミニマルへ
やがてミニマルは、ポピュラー音楽の文脈で広く受け入れられるようになります。捉えられようによっては、「イージー・リスニング」へと変貌したと言ってもいいでしょう。また、アメリカのアダムズ John Adams や、イギリスのナイマン Michael Laurence Nyman、ブライヤーズ Richard Gavin Bryars らは、ポスト・ミニマルの作曲家と呼ばれ、反復音型をポップな響きの中に取入れています。
次回は 20 世紀のオペラについて取り上げます。
【参考文献】
- 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
- 久保田 慶一 他『キーワード150 音楽通論』