本サイトの西洋音楽史、今回からバロック baroque の音楽を取り上げます。
前回まででルネサンスの音楽について取り上げました。
なお、西洋音楽全体の目次はコチラ。
さて、いわゆる「クラシック」に馴染みのない方にとっても、バロックから徐々に知っている音楽家の名前が出てくるかもしれません。
さて、先ずは大まかにバロック時代について取り上げていきます。
目次
バロック時代
バロック時代とは、16世紀末頃から1750年頃までの約150年間を指します。ちなみに1750年は、バッハ Johann Sebastian Bach の没した年です。
「バロック」という語は、ポルトガルの真珠商人が、いびつな形の真珠を指して読んだ「バロコ」に由来します。
最初は、「大げさな」「誇張した」「ゆがんだ」などの否定的な意味で用いられていました。
ただ、19世紀末から20世紀初頭には、バロック時代はルネサンス時代とは対照的な性格をもった時代として認められ、バロックの固有の美と魅力が広く知れ渡るようになりました。
バロック様式
バロック様式の魅力は、ルネサンス様式の均斉と調和に対して、こうしたものを打ち破る躍動感と運動性、明白な対照とドラマ、芸術の根源としての人間の情緒などが重視されている点にあります。
モノディー、協奏様式
音楽においては、
- モノディー monodia
- 協奏様式
が中心となってきます。
モノディーとは、フィレンツェの理論家、ドーニ Doni によって名付けられた独唱声楽曲の一種です。歌詞のリズムや抑揚を尊重しながら、その意味や感情・情緒の表現を目指した独唱声部を、通奏低音で伴奏したものです。ルネサンスの対位法の否定が発想源で、その後のホモフォニー音楽の発展のきっかけになったと言われています。
協奏様式とは、2つあるいはそれ以上の合唱隊や楽器群が、掛け合いながら対比と調和を作ってゆく様式です。複数の音響隊(合唱、器楽群、または両者の組み合わせ)が交互に掛け合ったり、多声曲の声部で同じモティーフを呼びかけ合うように演奏し、対比と調和を生み出してます。
バロック音楽の様式・ジャンル
- モノディー様式
- 通奏低音
- 劇的様式(スティーレ・ラップレゼンタティーヴォ)
などが生まれました。
声楽では、
- オペラ Opera
- オラトリオ oratorio
- カンタータ cantata
が生まれ、器楽では協奏様式を取入れた作品が書かれました。
17世紀後半には、組曲とトリオ・ソナタ trio sonata が完成され、コンチェルト・グロッソ concerto grosso とソロ・コンチェルト solo concerto が生み出されました。
18世紀前半は、以上に挙げたような楽曲の成熟期であり、ヘンデル Georg Friedrich Händel やバッハがバロック音楽の頂点を築きました。また同時に、オペラ・ブッファ opera buffa などの、新しい旋律と和声信仰を持つ音楽が人々に迎えられるようになりました。
では次回から、声楽を中心に、バロック音楽について具体的に取り上げていきます。
次回は「バロック音楽(2)オペラ」です。
参考文献
- 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
- 田村和紀夫『アナリーゼで解き明かす 新 名曲が語る音楽史 グレゴリオ聖歌からポピュラー音楽まで』
- 岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』
- 山根銀ニ『音楽の歴史』