昔, 岩井俊二が好きだったので,『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』がアニメ化される, という情報を知ったとき, これは絶対観ねば! と思いました. しかもよく調べてみると, 制作はシャフト, 監督は新房昭之じゃないですか! 岩井俊二×新房昭之すごい組み合わせだな, 大丈夫なのか, なんか怖いもの観たさ的な感じになりつつも, やっぱ観ないと! と期待が高まりまくっていました.
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『打ち上げ花火〜』の音楽を担当するのは?
ただ, この期待は, 主題歌 (ていうか ED 曲) 情報を知って, うーん, やっぱ微妙かも, へ変わりました. DAOKO でしょ… 苦手なんですよね… ああいうの…
岩井俊二の映画の音楽ってまた, これが独特な雰囲気あっていいんですよね, Yen Town Band とか, リリィ・シュシュとか, この辺, 小林武史ですが,『花とアリス』の, 実写版と去年公開されたアニメ版のサントラとかすごくいいですし. ヘクとパスカルとかね, すごく好きです.
だから, まあ, シャフトだからって, DAOKO か〜, って. しかも米津玄師って誰やよく知らんぞ〜, ってなって, やっぱ観るのやめようかな, てなってたんです.
いや, 観たんですけどね, 観て, ED 曲を聴いた率直な感想としては, 頼むからもっといい感じの人選あったんじゃないの, シャフトのあの感じとヘクとパスカルでも面白かったかもね, ていうか絶対そっちの方がいい! ていう.
で, 話を戻すと, ED 曲がなんかアレそうだし, 観るのやーめた, てなってたんですけど, 公開されて 2 日で, どうやら酷評の嵐らしいぞ, と (笑). これはクソアニメ・ファンとして観なければならない. 果たして (勝手に同じ路線だと決め付けている・実際は全然違うんですけど)『グラスリップ』超えあるか!? 的な一抹の期待を抱いてですね, 観に行きました. 地元, 唯一の映画館である, イオンのシネコンへ.
『打ち上げ花火〜』はフツーのアニメ (あるいは新しすぎ!?)
結論を言うとですね,『打ち上げ花火〜』, クソアニメ認定にすら至らない, いたってフツーのアニメでした.
どうやら巷では, 難解とか, オチがよく分からないとか, そういう不満があるようですが, 映画なんてそんなもんなんじゃないんですか? て思いますけどそれはさて置き.
どうしてフツーのアニメ, ていう感想になったか, いくつか要因を挙げて説明したいと思います.
とか言いながら, 先ずはポジティヴに評価したいと思います. あの, 岩井俊二の原作の, 実写の雰囲気を, 2017 年現在のアニメっぽい表現で再構築するとどうなるか? ていう試み, 意欲作. この映画の価値ってそういうところにあると思うんです.
でも, その試み, 意欲が果たして達成されたのか, 大衆受けとしても, 評論に耐えうるものとしても, というと, そこは, うーん, 評論に耐えうるかどうかは, 評論家ではないので分かりませんが, 正直, 微妙なところだと思います.
もっとぶっ飛んでもよかったと思います. せっかくね, すごく重要な, 小学生っていう設定を改変しちゃったんですから. なずなが魅力的なのは, 小学生だからなんですよね. 小学生で, 成長が早いから目立つ, そこに憧れる, ていうのがあるんですけど, それが中学生になっちゃうと, そういう魅力が減ってしまう. 中 1 でもね,「16 歳に見える?」とか言われてもね, 小 6 が同じセリフを言ったときのインパクトには負けるだろう, と.
だから, 原作の最大の魅力の 1 つであるヒロインのなずなの魅力を最大限に引き出すことのできる設定をあえて捨ててリメイク, ていうのですから, 映画全体的に, もっとぶっ飛んでもよかったんじゃないか, て思います. めちゃくちゃでよかったんじゃないか, ていう. ところが, きっと, 原作リスペクトかどうか分かりませんが, 変にね, 岩井俊二っぽさを残そうと, 岩井俊二とシャフトとイヌカレーの着地点を探ろう, とした結果, 物語の進行の時間感覚は岩瞬時っぽい, 演出だけやたら派手, みたいな感じになってしまっている.
新しすぎた, と言ったらんー, まあ, 聞こえはいいですが, まあ, 割とよくありそうなあらすじを演出で盛り上げた, みたいなね, そういう出来になってしまっているんじゃないか, と. フツーだぞ, と. ちょっと言ってることが矛盾していますが, そういうことです.
いや, 話を元に戻すと, めちゃくちゃっていうかちょっと笑ってしまうポイントはあって, たとえば制服とかね, ちょっと田舎の中学校にしては無理ありますよね, 校舎も (笑). あれでも抑えてるんでしょうけど, まあでも, 舞台設定に対して無理がある, 違和感がある, ていう, そういうところが意欲的なところなんでしょうけど, 成功しているかどうかは, 果たして, ていう.
あとね, 世界観の軸になるアイテムの玉のね, フィラメントが「if」って言う形で光るのがね, なんとも珍妙で滑稽で, 笑えてしまうんですよね. なずなの魅力は下げて, なんか原作にはないアイテム = 玉を導入して, そんで原作リスペクトでなんか「if」っていう文字をフィラメントとして光らせてね, なんか笑っちゃいますよね, 珍妙で.
ていう, 細部で, なんかちょっと笑ってしまう, あるいは笑ってしまいはしないけれど違和感みたいなのがありつつ, あらすじ的には, 別になんか新しい何かがあるわけでもない, そりゃ, 90 年代の実写のリメイクなんであらすじが新しい, ていうのはおかしいとしても, じゃあそれを演出で完全に乗り越えられたか, ていうと, ちょいちょい岩井俊二への遠慮があったりして, 無難にまとまってしまっている.
だからですね〜, まあね〜, ふつうなんですよね〜.
広瀬すずの演技
巷で酷評の対象になっている広瀬すずの演技は, ぜんぜんよかったし, あれはあれでアリです. あれで, なずなの友達とかがもっと出てきたら, また広瀬すずの演技への評価は変わると思いますが, 他に女性で目立ったのは, 男主人公の母と, なずなの母, あと, 担当教師くらいですからね. 男性の登場人物に比べると少ない. そして, なずなは友達少ない設定で, (おそらくは) 初めて男の子を誘う, ていうので, ああいうもんでしょ, 女子中学生が好きな男の子と喋ってるときの感じって. いや, ああいう感じであってくれ.
あとは広瀬すずの歌声もよかったですね. 素朴さと慣れた感じ, あと恥ずかしさといった微妙な心情が表現されているようで.
まとめ
と, いうことで (?) , まとめとしては, 『打ち上げ花火〜』, フツーの映画でした. 繰り返しになりますが, せっかく良い組み合わせ (岩井俊二の新房昭之) なんで, もっともっと意味不でもよかったと思います.