西洋音楽史、20世紀後半の2回目です。前回はコチラ。
さて、20世紀「前半」に勃発した2つの世界大戦は、もちろん、音楽の歴史にも大きな影響を及ぼしました。
目次
第1次世界大戦終了後
第1次世界大戦終了後には、モダニズムの傍らで、発展の推進力が途切れたかのように、新古典主義 Neoclassicismという反動的な音楽が一世風靡しました。
第2次世界大戦中
第2次世界大戦中には、ファシズムの台頭で前衛芸術家が弾圧を受けることがありました。また、ナチスは、ユダヤ人音楽家や、文化的ボルシェヴィズムに加担する音楽家を排斥しようとしました。自らの作品が体制批判だと、ナチスに捉えられた音楽家は、自らの創作を曲げざるを得ませんでした。生命を脅かされる状況になった音楽家は、アメリカへ亡命することとなりました。ドイツ国内では、敵対国、ポーランドやフランス、そしてロシアやアメリカの音楽を演奏することが禁止されました。
頽廃音楽
第2次世界大戦中、ナチスによる反ユダヤ文化政策が使ったのが、頽廃音楽 Entartete Musikというレッテルです。無調の音楽やジャズに影響を受けた曲、もしくは、どのような楽曲であれユダヤ人音楽家が創作した楽曲にたいしてはナチスは、頽廃音楽というレッテルを貼ったのです。
「頽廃」とはもともと、19世紀の医者・犯罪学者であるロンブローソ Cesare Lombroso が、異常な状態を示すために用いた概念です。ナチスは1937年にミュンヘンで「頽廃芸術展」を開き、翌38年には「頽廃音楽展」を開きました。そこでユダヤ人たちの芸術が誹謗されたのです。
亡命した
- クルシェネク Ernst Krenek
- コルンゴルト Erich Wolfgang Korngoldhttps://play.google.com/music/m/Bajtxkye3cqqbxk56gad4kp2n5i?t=Korngold_Die_stumme_Serenade_Recorded_1951_-_
あるいは強制収容所で亡くなった
- シュールホフ Ervín Schulhoff
- ウルマン Viktor Ullmann
といった作曲家たちは、「頽廃音楽」というレッテルを貼られ、不当な非難を浴びることとなりました。
次回は「ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習会」についてとりあげます。
参考文献
- 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
- 田村和紀夫『アナリーゼで解き明かす 新 名曲が語る音楽史 グレゴリオ聖歌からポピュラー音楽まで』
- 岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』
- 山根銀ニ『音楽の歴史』