音楽と言語、そしてそれらが私たちの文化にどのように影響を与えるのかについて考えたことはありますか？
本ブログの「音楽の哲学史」シリーズ、前回の記事では、現象学と音楽の関係を紹介しました。今回はその続きとして、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン（Ludwig Wittgenstein）の音楽、言語、文化に関する哲学的視点を考えてみましょう。ウィトゲンシュタインは20世紀の最も影響力のある哲学者の一人であり、音楽と密接な関係を持っていました。
ウィトゲンシュタインの哲学的発展
ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン（Ludwig Wittgenstein, 1889–1951）は、20世紀の哲学に大きな影響を与えた人物です。彼はクラリネットを演奏し、ドイツのクラシック音楽のレパートリーに詳しい音楽的才能を持っていました。ウィトゲンシュタインの哲学的発展は通常、2つの時期に分けられます。
初期のウィトゲンシュタイン：『論理哲学論考』
ウィトゲンシュタインの初期の哲学は『論理哲学論考』（Tractatus Logico-Philosophicus, 1921）に集約されます。この作品では、言語は偶然的な事象を記述する場合にのみ意味を持つと主張します。したがって、論理、哲学、倫理、美学の命題は規範的または非事実的であるため、厳密には無意味であるとされます。この初期の作品では、ウィトゲンシュタインは芸術についてほとんど言及していません。
後期のウィトゲンシュタイン：『哲学探究』
ウィトゲンシュタインの後期の哲学は、彼の没後に出版された『哲学探究』（Philosophical Investigations, 1953）やその他の著作に表れています。これらの作品では、言語の意味が特定の状況や活動の中での単語の使用に依存する「言語ゲーム」（Sprachspiel）という概念が提唱されています。言語ゲームは無数に存在し、私たちの生活形式（Lebensform）を構成する絶えず変化する慣習に依存するため、体系化することはできません。
音楽と言語のアナロジー
ウィトゲンシュタインの後期の哲学には、美的問題に関する重要な議論が含まれており、音楽が顕著に取り上げられています。彼は言語の働きを明らかにするために、音楽とのアナロジーを使用することがあります。その最も有名な例が次の発言です。
「文を理解することは、音楽のテーマを理解することに非常に似ています。文を理解することは、通常考えられているよりも音楽のテーマを理解することに近いのです。」（Philosophical Investigations, §527）
ここでウィトゲンシュタインは、言語理解を内的なプロセスとして捉える考え方から離れるために、言語と音楽のアナロジーを使用しています。言語と音楽、そして一般的には芸術において、理解は適切な行動をとる能力に現れます。例えば、ジャンル絵画の理解の基準は、そこで起こっている行動を描写したり模倣したりする能力かもしれません（Philosophical Grammar, III, 37）。音楽の場合、理解を示す明白な反応は、音楽を適切に描写したり演奏したりする能力です。
音楽理解と言語ゲーム
ウィトゲンシュタインは、音楽の理解が音楽と非音楽的な現実（特に言語領域）との間に適切な比較を引き出す能力にも現れると述べています。例えば、音楽のフレーズが質問のように感じられたり、特定の文を発するときのイントネーションを思い出させることがあります（Philosophical Investigations, §527; Zettel, §175）。音楽理解における非音楽的な参照の役割は、ウィトゲンシュタインが形式主義者と見なされるべきかどうかという問題を提起します。ウィトゲンシュタインの美学には、音楽の理解と鑑賞をそれが私たちに与える効果から分離するという、明らかに形式主義的な要素があります（Lectures on Aesthetics, IV, 2）。
音楽の価値と形式主義
ウィトゲンシュタインによれば、美的価値一般、および音楽の価値は、対象の効果に還元されるものではありません。したがって、芸術作品は特定の感情を伝えるから価値があるのではなく、自己を伝えるから価値があるのです。しかし、ウィトゲンシュタインの音楽理解の見解は、必ずしも形式主義的な見解と完全に一致するものではありません。彼の音楽理解における非音楽的な比較の適切性に関するコメントがその一例です。ウィトゲンシュタインは、音楽のテーマが周囲のもの、例えば私たちの言語やそのイントネーションと関連して印象を与えると述べています。
ウィトゲンシュタインにおける音楽の哲学への貢献
ウィトゲンシュタインの音楽哲学への主要な貢献は、彼が音楽にほとんど言及しない概念にあります。それは「アスペクト知覚」（aspect perception）の概念です。この概念は、ジョセフ・ジャストローの有名な「アヒル・ウサギ」曖昧図形で例示されるように、聴覚領域でも再現可能です。例えば、メトロノームのティッキングを2つまたは3つのグループとして聞くことです。
結論
ウィトゲンシュタインの音楽、言語、文化に関する哲学的視点は、音楽の理解とその意味の探求に新たな視点を提供します。彼の言語ゲームの概念や音楽と言語のアナロジー、アスペクト知覚の概念は、現代の音楽哲学においても重要な役割を果たしています。音楽と言語、そして文化がどのように相互に影響し合い、私たちの生活形式を構築するのかについて、ウィトゲンシュタインの哲学は深い洞察を提供しています。
