近代の音楽思想(7) 音楽と生命科学:ダーウィン、スペンサー、ガーニー

近代の音楽思想において、音楽は生命科学的な観点から、特に音楽の起源とその進化について論じられるようにもなりました。

これまでの記事では、ショーペンハウアー(Arthur Schopenhauer)、ワーグナー(Richard Wagner)、ニーチェ(Friedrich Nietzsche)の音楽思想を詳しく見てきましたが、今回はその続きとして、19世紀後半の音楽と生命科学の関係について、チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)、ハーバート・スペンサー(Herbert Spencer)、エドムンド・ガーニー(Edmund Gurney)の視点を探ります (参考: History of Western Philosophy of Music: Since 1800)

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ダーウィンの進化論と音楽

チャールズ・ダーウィンは『人間の由来』(The Descent of Man, 1871年)と『人間と動物における感情の表現』(The Expression of Emotions in Man and Animals, 1872年)で、音楽の起源について性選択(Sexual Selection)が重要な役割を果たしていると提案しました。ダーウィンによれば、音楽は求愛の一環として発展し、感情を表現し喚起する力を持つものとして進化してきたとされます。

ダーウィンの具体例

ダーウィンは、鳥の歌などの動物の発声行動が求愛の一環であることを観察しました。例えば、鳥の歌はその目的として求愛を持ち、これは音楽の起源として性選択が関与していることを示唆します。ダーウィンは、音楽が言語に先行する可能性を示し、感情的な抑揚やメロディが基本的なコミュニケーション手段として進化したと考えました。

スペンサーの生理学的アプローチ

ハーバート・スペンサーは、音楽の起源についてダーウィンとは異なる見解を持っていました。スペンサーは、感情が身体運動を引き起こし、声帯を通じて発声に変わるという生理学的原理に基づいて説明しました。彼の論文「音楽の起源」(The Origin of Music, 1857年)では、音楽は感情の自然な表現の延長として発展したと述べています。

スペンサーの具体例

スペンサーは、音楽が情熱の自然言語の理想化であると主張しました。彼によれば、感情的な発声がメロディの基礎となり、音楽の主要な表現手段となったと考えました。スペンサーは、音楽の価値がその感情的表現にあるとし、メロディの重要性を強調しました。

ダーウィンとスペンサーの比較

ダーウィンとスペンサーの音楽の起源に関する理論は、方法論的に大きく異なります。ダーウィンは経験的証拠に基づいて一般化を行う一方で、スペンサーは一般法則に依存しました。この違いは、音楽の価値とその進化に対する理解において重要な意味を持ちます。

エドムンド・ガーニーの形式主義

エドムンド・ガーニーは、ダーウィンとスペンサーの議論に関連してしばしば言及される音楽学者です。彼の形式主義的アプローチは、音楽の価値を抽象的な形態に依存すると考えました。ガーニーは、音楽が美的価値を持つのはその形式的特性に基づくものであり、感情の表現や喚起ではないと主張しました。

ガーニーの具体例

ガーニーは、音楽の主要な価値はその印象的な能力にあると述べました。彼は、美しい音楽が特有の感情を喚起する力を持つとし、これが音楽の美的価値の源であると考えました。また、ガーニーは、音楽が短いシーケンスに分割され、それぞれが独立した価値を持つと主張しました。

結論

ダーウィン、スペンサー、ガーニーの見解は、音楽と生命科学の関係について異なる視点を提供します。それぞれの理論は、音楽の起源と価値に関する理解を深めるために重要です。音楽の哲学史におけるこれらの議論は、音楽がどのように進化し、その美的価値がどのように評価されるべきかを考える上で欠かせないものです。

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