音楽を聴きながら勉強 / 仕事は実際のところどうなのか?

仕事や勉強をしているときに音楽を流すことがあるでしょうか? その音楽があなたのパフォーマンスにどのような影響を与えているのか、気になったことはありませんか? 音楽が認知タスクのパフォーマンスにどのような影響を与えるかについては、これまで多くの研究が行われてきましたが、その結果は一様ではありません。今回は、Lena Maria Hofbauer らによる「Background music varying in tempo and emotional valence differentially affects cognitive task performance: experimental within-participant comparison」(日本語タイトル: 「背景音楽のテンポと感情価が認知タスクのパフォーマンスに与える影響」)という論文に基づき、このテーマについて詳しく解説していきます。

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論文の概要

この研究は、音楽のテンポと感情価が認知タスクのパフォーマンスにどのように影響するかを検証するために行われました。参加者は異なるテンポ(速い/遅い)と感情価(ポジティブ/ネガティブ)の音楽が流れる中で認知タスクを行い、そのパフォーマンスを比較されました。具体的には、即時記憶リコール、語彙流暢性テスト、トレイル作成テストといったタスクが用いられました。

研究の背景と目的

背音楽が認知タスクのパフォーマンスに与える影響については、過去の研究でも議論されてきました。例えば、Kahnemanの認知容量モデルに基づく研究では、背景音楽が注意を引き、限られた認知処理資源をタスクから奪うことでパフォーマンスを低下させるという結果が示されています。一方で、音楽が覚醒を高め、タスクへの注意を向上させることでパフォーマンスを向上させるという研究もあります。このように、音楽の効果については一貫した結論が得られていないため、本研究では、音楽のテンポと感情価という要素に着目し、個人差も考慮した詳細な分析を行いました。

研究方法

本研究では、40名の参加者が対象となりました。参加者は、異なるテンポ(速い: 130BPM、遅い: 67BPM)と感情価(ポジティブ/ネガティブ)の4種類の音楽が流れる中で認知タスクを行いました。使用された音楽は、映画のサウンドトラックから選ばれ、事前に感情価が評価されたものです。具体的なタスクとしては、即時記憶リコール、語彙流暢性テスト、トレイル作成テストが含まれ、各タスクは各条件下で4回ずつ行われました。

結果と考察

即時記憶リコール

即時記憶リコールでは、速いテンポとポジティブな感情価の音楽が最も高いパフォーマンスを示しました。具体的には、速いテンポの音楽は遅いテンポの音楽に比べて記憶リコールのスコアが有意に高く、ポジティブな感情価の音楽もネガティブな感情価の音楽よりも高いスコアを示しました。この結果は、速いテンポとポジティブな感情価の音楽が認知覚醒を高め、タスクへの集中を促進する可能性を示唆しています。

語彙流暢性テスト

語彙流暢性テストでも同様の結果が得られました。速いテンポとポジティブな感情価の音楽が最も高いパフォーマンスを示し、特に外向性の高い参加者においてその効果が顕著でした。これは、外向性の高い人々が音楽による覚醒の影響をより強く受けやすいことを示しています。また、音に対する敏感さが高い人々は、速いテンポの音楽によってパフォーマンスが向上する傾向が見られました。

トレイル作成テスト

一方、トレイル作成テストでは、音楽のテンポや感情価による顕著な効果は観察されませんでした。ただし、音に対する敏感さが高い参加者において、ポジティブな感情価の音楽がパフォーマンスを低下させる傾向が見られました。これは音楽が一定の認知タスクにおいては逆効果をもたらす可能性があることを示唆しています。

結論と実用的な示唆

この研究の結果は、音楽の選択が認知タスクのパフォーマンスに重要な影響を与えることを示しています。特に、速いテンポでポジティブな感情価の音楽が即時記憶や語彙流暢性においてパフォーマンスを向上させることが明らかになりました。ただし、個人の特性やタスクの種類によっては、音楽の効果が異なる可能性があるため、音楽を選ぶ際にはその点を考慮する必要があります。

例えば、勉強や仕事において、速いテンポのポジティブな音楽を選ぶことで、集中力やパフォーマンスが向上する可能性があります。一方で、複雑なタスクや深い集中が必要な場合には、音楽が逆効果になることも考えられるため、静かな環境を選ぶことが適切かもしれません。

個人差の重要性

この研究が示すもう一つの重要な点は、個人差の影響です。外向性の高い人や音に対する敏感さが高い人など、個々の特性によって音楽の効果が異なることが分かりました。これにより、個人に合った音楽の選択が可能となり、より効果的な認知パフォーマンスの向上が期待できます。

最後に

音楽が認知パフォーマンスに与える影響については、まだ多くの研究が必要ですが、今回紹介した研究はその一助となる重要な知見を提供しています。皆さんも、勉強や仕事の際には、この研究結果を参考にして、音楽を選んでみてはいかがでしょうか。適切な音楽を選ぶことで、パフォーマンスを最大限に引き出すことができるかもしれません。

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