ジオシティーズが… 終わってしまう… このままでは… 高校の頃にしたためていた音楽レビューが消えてしまう… なんとか救出しないと… とあたふたしていたのですが, パソコンを検索したら出てきました! ということで, せっかく発見したので,「さよなら, ジオシティーズ」と題して, 過去に書いた音楽レビューをこのサイトへ転載することにしました. 22 回目は, 2004 年 2 月にリリースされたスーパーカーのアルバム『ANSWER』のレビュー. 文章はほぼそのまま, そして今回で「さよなら, ジオシティーズ」は最後!
ではどうぞ…!
スーパーカー『ANSWER』レビュー
前作まででエレクトロ路線の完成形を一応提示したスーパーカーが、
次にどのような一手を打ってくるかは非常に予想し難かった。
ずっとこの路線でダラダラ言ったり、妙にインストばっかりになったらつまらないな、そんな一抹の不満さえ覚えた。
『HIVISION』後に最初に出されたシングル、「RECREATION」は、優しいバンドサウンドに美メロが乗った佳作で、これなのか??と誰もがスーパーカーのつぎの動向に期待をした。
しかしその後、「BGM」によってスーパーカーファンは一斉に戸惑う。
個人的にはかなりヒットしたが、世間的には抽象的な歌詞とメロディ、そしてざっくり粗い電子音アレンジ、良くも悪くも「RECREATION」とは対極の曲だった。
アルバム発売日の発表と同時に送られてきた「LAST SCENE」は、ピアノアレンジが施されたミディアムバラードで、落ち着いた印象があり、タイトル通りスーパーカーが終わっていくような不安もあった。
果たして、全く予想が付かない。アルバムは・・・どうなるのか、その時点で公開されていたサイケなジャケットは、アルバムへの期待と不安、両方を増長させた。
やわらかいシンセが繰返される。生バスドラの4つ打ちキックとパーカッションがそれに重なり、ハウシーなビートが作られる。
印象的なのはベースだ。うねってうねっている。ずいぶんわかってきたな、Miki ちゃん。
より聞き取りやすく、しかし更に甘ったるくなったナカコーの声は、今までのそれとはまた違った魅力を感じられる。
ギターも元気である。
そう、バンドサウンドなのだ。
しかし、初期のように闇雲にドライブするような印象は皆無である。
『HIVISION』で構築された高度な音楽をロックバンドで再現しよう、そんな印象を受ける。
一つ一つの音はロックの音でしかもとても丁寧であるが、それらの構成方法は繰返されるフレーズ、つまりテクノに近い。
暴力的で繊細な音が単調に、しかしとても丁寧に構成されている、そんな印象を受ける。
音と音の間を埋めるのは薄いエレクトロのシーケンスで、決してノイズで強引に音圧を高めようとはしていない。
そこも好印象である。
賛否両論が多いとは思うが、個人的にはこのアルバムには大賛成である。
スーパーカーの良さというのは、一つの作品はとても完成度が高いのだが、しかし常に次が予想できない所にある。
このアルバムの次・・・、全く予想できない。
強引に予想するなら、スーパーカーのアルバムには次のような法則があるように思える。
つまり、奇数のアルバムは曲数が多い、偶数のアルバムは曲数が少ない、である。
1st はデビュー前にストックしておいた曲を衝動的に轟音バンドで再現していて、
2nd もストック曲ではあるが、しかしエレクトロの処理が施され、キレイにまとめられている。
3rd はテクノの要素を取り入れたという音楽の衝動が溢れており、
4th でその方法論をまたきれいにまとめている。
『ANSWER』は...4thまでの方法論をバンドで解体して...また音楽の力が溢れている。
次は『ANSWER』を昇華したものになるのだろうか。
褒め言葉ばかりでも何なので、批判を少々。
歌詞について
面白いとは思うが、やめたほうがいい。
英語と日本語はそもそも概念が違うので、完全に対訳するのは無理。結局、殆ど日本語で歌ってるし。
前作の歌詞で完全に一人称を廃して、その傾向は今作にも受け継がれているが、英語は主語がはっきりしている。
例えば「LAST SCENE」の
“袖に独り立って”の主語が”i”になっているが、これはむしろ”he”に変えたほうがいいのではないだろうか。
そんな箇所が多々見受けられ、歌詞カード見ながら聴いてると少し冷めてしまう。
アレンジについて
「RECREATION」の時に少し思ったのだが、もう益子樹とやらないでほしい。
益子樹の音の方が印象的で(それはそれでいいんだけれど)、スーパーカーの個性がイマイチ強調されていない。
シンセやヴァイオリン、ギターの音がもろROVO。
スーパーカーだけでやってほしい。