現行のスタンドアロン型 MPC は、まさにそれ 1 台で音楽制作を完結できる非常に優れた機材です。一方で、MPC で楽曲を完成させたは良いものの、どうやってライブでパフォーマンスしていいのか、よく分からないこともあるでしょう。
せっかく MPC で楽曲制作したのに、いざライブで披露するときに再生ボタンを押すだけではつまらないですよね?
MPC にはせっかくパッドが付いているのですから、ライブのときにはパッド・パフォーマンスをしたい! でもどうやっていいか分からない! という方に、この記事では、MPC で制作した楽曲をライブで生演奏する方法を 6 つ、紹介します。
1. 完全に生演奏する
1 つ目は完全な生演奏です。MPC にはシーケンサー機能 = 自動再生機能がありますが、それを一切使わずに生演奏する。MPC での設定はパッドへのサンプルのアサインや、シーケンスごとのドラムプログラムの選択程度で、最小。つまり、MPC をサンプラーというより楽器として使用する。
この方法はアドリブ性も高く、生演奏の醍醐味を最も発揮できます。
ただし、フィンガードラムをめちゃくちゃ練習する必要があります。つまり、人前で演奏できるようになるにはフィンガードラムのテクを何年も何時間もかけて習得しなければいけません。つまり、ピアノやギターなど、サンプラーではない伝統的な楽器と同じように、です。
もちろん、練習すればいいのですが、ライブが間近に迫っている状況では、現実的な方法ではありません。
そもそも MPC はサンプラー。アイデア次第でいろいろな使い方ができますので、フィンガードラムだけのために MPC を使うのはややもったいないですね。サンプラーならではの演奏方法があるはずです。
以下、MPC のサンプラーならではの演奏方法について、紹介していきます。
2.「ウワモノ」だけ自動再生、ドラムパートはフィンガードラム
楽曲の構成要素の全てを 16 パッドで再現し、生演奏するのはかなり難易度が高いですね。そこで、構成要素の一部をパッド演奏し、一部はシーケンサー機能を使って自動再生するという解決法があります。
もしくは、多くの MPC プレイヤーが採用しているのが、「長めのウワモノをパッドにアサインしておく」という方法です。16 小節とか 32 小節とかあるウワモノをパッドにアサインし、アサインしたパッドを 1 回叩いてその間にフィンガードラムをプレイします。
1 つめの動画でも「パッドに長めの小節分のウワモノをアサインする」方法は採られていますが、この「The World of Japanese Sound」という動画ではより分かりやすく使われています。
シーケンサー機能を使うにしろ、長めのウワモノをパッドへアサインするにしろ、分かりやすいのは、ドラムパートだけをフィンガードラムに置き換えることです。
ギターやピアノ、ベースといったいわゆる「ウワモノ」は、自動再生します。
これもフィンガードラムを練習する必要があります。
3. ドラムパートは自動再生、「ウワモノ」の一部をパッド演奏
2. とは逆 (?) に、ドラムを自動演奏し、ギターやピアノといった「ウワモノ」をパッド演奏。もちろん、ギターやピアノの全てを 16 パッドで演奏できないので、ギターのみ、ピアノのみをパッドで演奏することになります。
頑張ればピアノやギターに近い演奏はきでるかもしれませんが、16 パッドではそれも限界がありますね。というかパッドでピアノやギター並みの演奏ができるなら、普通のピアノやギターを練習した方がいいのでは? と個人的には思います。
現実的な使い方としては、ウワモノの「フレーズ」をサンプルとしてパッドへのアサインし、然るべきタイミングで叩く、ということになるでしょう。
下の USAGI さんのパフォーマンス動画では、パッドへキーボードのフレーズをパッドへアサインして、(おそらく) 自動再生のドラムに乗せて良い感じにパッドを叩いています。
なんだかこれだとできそうですね。
ということでただし。ドラムが自動演奏であることもあいまって、演奏の自由度は低いと言わざるをえんません。
2.’ ドラムパートを分解演奏
1〜3 の難点を解決する 1 つの手段がこの方法です。
一度制作したドラムパートをもう一度、MPC 内で再度サンプリング = リサンプリングして、パッドへアサインし、分解演奏。そうするとパッドを左下から右上へ (A1 から A 16 へ) 順番に一定のテンポで叩いていくだけで、MPC 内で自作したドラムパートを演奏することができますよね。
リサンプリングは、シーケンス単位で実施すると、サンプリングしやすいし、サンプリング後のチョップだったり、また、分解演奏もしやすいですね。
演奏の際、叩く順番を変えたり、タイミングを変えると、アドリブ要素を加えることもできます。
3.’ 「ウワモノ」を分解演奏
2’ の逆(?)。ウワモノだけを MPC 内でリサンプリング、パッドへアサインし、分解演奏。そうすると 2’ で紹介した、ドラムパートに分解演奏と同じ要領で、パッドを左下から右上へ (A1 から A 16 へ) 順番に一定のテンポで叩いていくだけで、MPC 内で自作した「ウワモノ」を演奏することができます。
下の動画「YOASOBI で夜遊び」では、他人の著作物をサンプリングしていますが、発想としては「ドラムを自動演奏、ウワモノを分解演奏」です。
リサンプリングの単位は、ドラムパートと同様、シーケンスにすると、あとの作業 (パッドへのアサインや分解演奏) をしやすいですね。
もちろん、ドラムパートの分解演奏と同様、パッドを叩く順番を入れ替えたりすることで、アドリブ演奏要素を加えることができます。
4. 自作した楽曲全体を分解演奏
2’. 3’. の統合。MPC 内で作成した楽曲を丸々、リサンプリング、パッドへアサインし、分解演奏。
これが、MPC をライブで演奏する際の最適解ではないでしょうか。
MPC のサンプラーとしての役割と、パッド演奏楽器としての役割、2 つを充分に発揮できます。
基本は、さまざまな楽器の「伴奏」のように、リサンプリングしてアサインしたパッドを順番に叩けば良いのですが、楽曲中にフックを作りたいときに、叩く順番を変えたり、スピードを変えるなどすると、生演奏的なアプローチもできます。