西洋音楽史の出発点、古代ギリシアについての2回目です。1回目はコチラ。
なお、本サイトの西洋音楽史関連のエントリーは、以下も参考にして下さい。
目次
吟遊詩人ホメロス
古代ギリシアの音楽は、前800年前後の吟遊詩人、ホメロス Ὅμηρος 叙事詩まで遡ることが出来ると言われています。
ホメロスは今日、「二大叙事詩」と呼ばれる作品を残しており、それが『イーリアス』と『オデュッセイア』です。
『イーリアス』はトロイア戦争がテーマでアキレウスが活躍する作品、『オデュッセイア』はトロイ戦争後、オデュッセウスのギリシアへの帰国がテーマになった作品です。
ただこの2つは作品といっても、口承詩だったといわれています。つまり、何日もかけて語り続かれたもの、日本で言えば『平家物語』のようなものだということです。
都市国家スパルタ
時代を下り、前7世紀頃には、ギリシアの都市国家、スパルタが音楽の中心地となります。スパルタでは、ギリシアの都市国家のなかでは初めて、音楽が国家の保護を受けるようになりました。そして、教育の1つの手段として、音楽が市民生活に取入れられるようになりました。
スパルタの音楽家としては、
- テルパンドロス(古代ギリシアの弦楽器で「ギター」の語源である「キタラ」のノモイ(旋律型)を定めた。また、古代ギリシアの竪琴リラ(リュラー、ライアーとも呼ばれる)の弦を7本に増やした)
- タレタス(音楽で少年たちを訓練した)
が知られています。
アウロス
また、スパルタが音楽の中心地であったのとほぼ同じ頃、アウロスという管楽器が定着していました。このアウロスの最初の奏者として、半ば伝説上の人物、オリュンポスが知られていますが、このことは、アウロスが小アジアからギリシアに伝わったことを象徴しています。
サカダス
さらに時代を下り、前6世紀には、標題音楽の初めと考えられる楽曲が作られたと言われています。前586年に、サカダスが作ったとされる〈前触れ〉〈最初の攻撃〉〈戦い〉〈勝利の凱旋〉〈竜の死〉という5つの楽章から成立する楽曲です。この楽曲は、アポロンと隆との戦いがテーマであり、都市国家デルフォイで行われたピュティア祭という行事で演奏され、優勝したと言われています。
抒情詩
サカダスが活躍したのと同じ頃、個人の立場・心情を歌う「抒情詩」もさかんになってきました。この頃の抒情詩には、独唱スタイルと合唱隊スタイルがあったと言われています。
独唱スタイル
独唱スタイルの抒情詩人としては、
- サッフォー
- アルカイオス
- アナクレオン
らが活躍していました。
合唱隊スタイル
前6世紀後半から前5世紀前半には、合唱隊スタイルもまた、さかんになりました。合唱隊は、独唱と異なり、音楽以外にも舞踊の要素が加わります。このため、作者は詩人兼音楽家兼振付師という、今で考えるとありえないような役割をこなさなければなりませんでした。この合唱隊スタイルの作者としては、
- シモニデス
- ピンダロス
- バッキュリデス
の3名が頂点に立っていたと言われています。彼らの作品には、莫大な報酬が支払われました。
次回は「古代ギリシア(3)ギリシア悲劇」です。
参考文献
- 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
- 田村和紀夫『アナリーゼで解き明かす 新 名曲が語る音楽史 グレゴリオ聖歌からポピュラー音楽まで』
- 岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』
- 山根銀ニ『音楽の歴史』