西洋音楽史、バロックの6回目です。さて、前回のエントリーまでで、イタリア、フランス、ドイツ、オーストリアといったヨーロッパ各地のオペラ事情について取り上げました。
今回はイギリスについて取り上げます。
1.宮廷仮面劇
マスクは、ルネサンス期が起源で、仮面をつけた俳優によるパレードと全出演者の舞踏によるフィナーレの間に、パントマイム、舞踏、歌と合唱などを織り込んだものです。
2.シェイクスピア
17世紀には、このようなマスクや演劇と結びついた音楽に、イタリアで生まれた独唱・通奏低音の様式が取入れられました。そして、イギリスでのオペラ作曲の地盤ができました。
3.イギリス・オペラ
イギリスでは、1641年から49年にかけてのピューリタン革命 Puritan Revolution の後、共和制時代に、劇場が封鎖され宮廷音楽家はその職を離れるようになります。この共和制時代に、イギリス最初の本格的なオペラが誕生しました。ダヴェナント William Davenant の台本に5人の作曲家が音楽をつけた、《ロードス島の包囲》 The Siege of Rhodes, Part I です。
1660年には、イギリスは王政復古を果たしました。これを機に劇場が再開されます。劇場再開後にイギリスで活躍したのは、パーセル Henry Purcell です。
4.パーセル
パーセルはセミ・オペラ Semi-opera という、音楽を多く含んだ劇というジャンルで活躍しました。パーセルによるセミ・オペラの代表作には、
- 《テンペスト》The Tempest
- 《夏の夜の夢》Midsummer Night’s Dream
また、パーセルの作った英語によるバロック・オペラの傑作として、
- 《ダイドーとイーニアス》Dido and Aeneas
しかしパーセルの死後、英語によるオペラやセミ・オペラは急速に衰退してしまいます。というのも、17世紀イギリスではもともと、オペラよりも演劇への関心が圧倒的に高かったからです。
5.イタリア・オペラの流行
1711年、ヘンデル Georg Frideric Handel がロンドンオペラ界にデビューしました。彼は出生作《リナルド》Rinaldo 以来、30年間に数多くの傑作を作曲・上演しました。
代表作として、
- 《ジュリオ・チェーザレ》Giulio Cesare
- 《セルセ》Serse
が挙げられます。
ヘンデルは、レチタティーヴォからアリアへという機械的反復を避け、合唱、アンサンブル、伴奏付きのレチタティーヴォを巧みに廃止、劇的効果を高めることに成功しました。
6.バラッド・オペラ
イタリア・オペラの隆盛と同じく、1720年代〜30年代のロンドンで、英語によるバラッド・オペラ Ballad Opera が人気を集めました。
英語によるバラッド・オペラは、歌詞に諷刺や皮肉が効いていて、民謡風の旋律・馴染みの歌を使って作曲されました。
バラッド・オペラで活躍していたのが、ヘンデルの商売敵とも言われているペープシュ Johann Christoph Pepusch です。ペープシュの《乞食のオペラ》The Beggar’s Opera は、バラッド・オペラの代表作です。