「 2026年04月 」一覧

本当に最近の音楽は「単調」で「退屈」なのか?: 西洋音楽の進化をネットワーク科学で定量評価する

皆さんは、最近のヒット曲を聴いたとき「どこかで聴いたことがあるような気がする」と感じたことはありませんでしょうか。SpotifyやYouTubeのアルゴリズムが次々と「おすすめ」を提示する時代、音楽の構造そのものに何らかの変化が起きているのではないかと考えたことはないでしょうか。

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トランスのリズム: 音楽が誘発する「非日常的意識状態」の文化現象学と神経科学

音楽を聴きながら、気づいたら別の世界にいるような感覚に陥ったことはないでしょうか。あるいは、長時間踊り続けるうちに自分と音楽の境界が溶けていくような体験をしたことはないでしょうか。こうした体験は、単なる「没入感」にとどまらず、人類が太古の昔から儀式や宗教的実践の中で意図的に引き起こしてきた「トランス状態」と本質的に同じ現象かもしれません。

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機械は音楽を作れるか? AI支援音楽制作の革新と倫理的課題

スター・ウォーズのオープニングで高まるあの旋律、ハリー・ポッターの「ヘドウィグのテーマ」の繊細で浮遊するような音色——誰もが一度は耳にしたことのある名曲たちです。これらの楽曲がこれほど深く人間の記憶に刻まれる理由は何でしょうか。それは、創り手の人間的な感性と意図が込められているからだ、と多くの人は答えるかもしれません。では、もし人工知能(AI)が作った音楽にも同じような力が宿るとしたら——あるいは、そもそもAIに「音楽を創る」ことが本当に可能なのでしょうか?

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AIガチャ音楽が「バイラルヒット」を量産する時代——IngaRose「Celebrate Me」事件と確率論的ドーパミン・マーケティング

2026年4月、米iTunesチャートの1位に見慣れないアーティスト名が躍り出ました。IngaRose、楽曲は「Celebrate Me」。R&B系の女性ボーカルで、聴いた瞬間からどこか引っかかるものがある。なぜか耳に残る。でも、何かがおかしい。

実はこのIngaRose、実在しません。楽曲はAIが生成したものです。


IngaRose「Celebrate Me」とは何か

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Angine de Poitrine(アンジーヌ・ドゥ・ポワトリーヌ)徹底解説——仮面のマス・ロック・デュオが世界を席巻するまで

2026年2月、インターネット上の音楽コミュニティに一本の動画が投下されました。映っているのは、白黒水玉模様のコスチュームを身にまとい、巨大なパピエ・マシェ(張り子)マスクで顔を完全に隠した2人組。片方は変則的なダブルネック・ギターを奏でながら、素足のつま先でループペダルを操作し、もう片方は怒涛のドラムを叩き続けます。

投稿から一週間で200万回以上再生されたこの動画をきっかけに、カナダ・ケベック州発のロック・デュオ Angine de Poitrine(アンジーヌ・ドゥ・ポワトリーヌ) は、一夜にして世界規模の現象となりました。4月現在、KEXPへの動画再生回数は600万回超(一部報道では900万回近くとも)。Dave Grohl(Foo Fighters)が「完全に頭おかしい、最高だ」と絶賛し、ニューヨーク・タイムズが謎に迫る特集を組み、ツアーチケットは即完売——転売チケットは500ドル超まで高騰しています。

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音楽レビューという発火

レビューとは、評論とは、批評とは何か。 私は長いこと、それらの厳密なあり方にとらわれていました。

私の中にははっきりとした批評への考え方、評論への考え方というのがあって、それはある程度レビューと区別されて、そして多くの人の考える批評や評論とはまた別の何かです。それは平たく言えば内在的批評なのですが(ただし少々歪んだ)。

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音楽における「保守主義」を問い直す: ヴェーバーにおける合理性概念による演奏会場とストリーミングの捉え直し

「また同じ曲ばかり」「古い名曲を繰り返すだけで新しい試みがない」「ストリーミングのアルゴリズムはいつも同じ音楽しかすすめてこない」――こんな不満を抱いたことがある方は少なくないでしょう。音楽の世界における「保守主義(conservatism)」は、批評家や聴衆から、あるいは演奏家や研究者からも批判の的になることがあります。しかし、その批判は本当に的確なのでしょうか。そして、伝統を守ることはすべからく批判されるべきことなのでしょうか。

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脳と心を理解する新たな鍵: 「音楽」という科学的メタファー

私たちは日常的に、複雑なものを別の何かに例えて理解しようとします。「脳はコンピュータのようなもの」「記憶は引き出し」──こうした比喩は、科学の世界でも強力な役割を果たしてきました。では、もし脳と心を「音楽」に例えたとしたら、何が見えてくるでしょうか?

「Music as a scientific metaphor for mind and brain(脳と心のための科学的メタファーとしての音楽)」によれば、音楽は単なる比喩的な表現を超えて、脳と認知の働きを理解するための体系的な科学的フレームワークになりうると言います。2026年に学術誌『Neuroscience and Biobehavioral Reviews(神経科学・生物行動レビュー)』に掲載されたこの論文は、アグスティン・イバニェス(Agustin Ibanez)氏を筆頭著者とする国際的な研究チームによるものです。彼らはチリ、アイルランド、アメリカ、ドイツ、イタリア、スイスにまたがる研究機関から集まり、音楽が脳科学の新たなメタファーとして機能しうることを包括的に論じました。

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