西洋音楽史、20世紀後半の12回目です。前回はコチラ。
さて今回は、引用の音楽 Musical quotation に並び、ポストモダニズム Postmodernism の兆候のみられる音楽として、新ロマン主義 Neo-romanticism を取り上げます。
新ロマン主義
1980年代以降、ヨーロッパとアメリカで新ロマン主義という同じジャンル分けの下に様々な音楽が登場しました。
新ロマン主義は統一的な主張を有していません。そのため、印象主義や表現主義のように、明快な音楽概念ではありません。ただ、従来のロマン主義に内包される自己表出や調性の復活、交響曲やオペラといった伝統的な形態の発展的な継承といった点に、彼らの共通性を見てとることができます。
ニュー・シンプリシティ
ドイツでは、1950年代生まれの作曲家が注目を浴び、新ロマン主義とは別にニュー・シンプリシティNeue Einfachheit (新簡素主義、新しい単純性)と呼ばれることもありました。
第2次世界大戦後、多くの音楽家たちが前衛や実験音楽などのモダニズムを押し進めるなかで音楽の方向性を探っていきました。しかしさらに若い世代は、より感覚に訴える・生命感の有するような音楽を求めました。
結果として、様式的には不純な・複合スタイルの音楽が誕生しました。代表的な作曲家としては、
- リーム Wolfgang Rihm
- ボーゼ Hans-Jürgen von Bose
- トロヤーン Manfred Trojahn
らがいます。
アメリカ
アメリカでは1983年と84年に、ニューヨークで開催されたホライズンズ音楽祭 The New York Philharmonic’s Horizons ’83/’84 festival の音楽監督、ドラックマン Jacob Druckman によって、新ロマン主義が有名になりました。
ホライズンズ音楽祭で紹介されたのは、
- クラム George Crumb
- シュヴァントナー Joseph Schwantner
- レヴィンソン Gerald Levinson
らです。
この音楽祭では、評論家たちによって、新ロマン主義にふさわしい音楽として、トレディチ David Del Tredici の作品が取り上げられました。
なお、近年では、コリリアーノ John Corigliano も新ロマン主義を代表しています。彼はエイズを題材にした交響曲を作曲し、話題になりました。
次回はポストモダニズムの動向について取り上げます。
参考文献
- 片桐功 他『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
- 久保田 慶一 他『キーワード150 音楽通論』