音楽美学者 Peter Kivy が逝去

こう書くと不謹慎かもしれませんが, いよいよ「音楽の哲学」という哲学の, 美学の, 動向の 1 つが歴史的なものになるのか, という感があります.

音楽美学者 Peter Kivy が 5 月 6 日に亡くなられました. 87 歳でした. ガンで闘病中だったとのことです.

いわゆる, いちばん分かりやすい社会的な立場で言えば, Kivy はラトガース大学の音楽学・哲学の名誉教授です. いや, でした. 専門は, 特に「音楽の哲学」と言われる, 哲学のジャンルの 1 つです. 詳しくは我らが SEP を参考にしましょう.

引き続き Kivy の略歴について. Kivy は哲学と音楽学両方で修士号を取得したのち, コロンビア大学で博士号を取得. 1976 年からはラトガース大学の教員に就任. そこで生涯, 研究・教育を行いました.

音楽の哲学は, 分析哲学の中の分析美学のなかの一つのジャンル, ていう, ざっくり言えばそういうことなんですど, Kivy のメインの研究対象 (というか研究手法って言った方がいんですかね…) が最初から分析哲学だったわけではありません. 研究を始めた当初は, 18 世紀イギリスにおける美学がテーマ で, Francis Hutchesonから影響を受けていました. そして徐々に分析美学へ関心が移行していきます.

音楽哲学 (音楽の哲学って言ったり, 音楽美学っていったり, 音楽哲学って言ったり, ややこしいですね…) を主要な研究テーマにするようになるのは, 1970 年後半からです. 著書『The Corded Shell』によって Kivy は, 主要な音楽美学者として数え上げらえるようになりました.

Kivy が熱心に取り組んだことのうちの 1 つが, 感情の表現は器楽にとって何を意味するのか, という問題です.

これ, けっこういまでもややこしい問題だと思うんですけど, Kivy の出した回答というのは, 次の通り. 人には, おおよそ他の人と共通している感情がある. そういった感情には, 肉体的な行動による表現がある. 音楽においてそれは現れうるし, そして模倣できる. だから, 音楽は, 人間が行動で表している以上の複雑な感情を現すことはできない. と (シビアですよね…/似たような立場は, Stephen Davies によって支持されています).

ていう感じだと思います. すみません, 本当はこんなことを偉そうに書けるような立場になく, ただただ不勉強なのにも関わらず, 書いてる, ていうのが本当のところです.

が, Kivy の訃報は, 音楽の哲学が「比較的新しい」ジャンルから一歩踏み出す徴し (こういう考え方も非常に不謹慎だとは自覚しているんですけれども) になるのでは, と思い, 記事にした次第です.


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