古代ギリシア音楽(8): ギリシアの音組織

西洋音楽史の出発点、古代ギリシアについての8回目です。前回までで古代ギリシアにおける音楽理論家をみてきました。

なお, 全体の目次はコチラです。

今回は、古代ギリシアではどのような「音」が使用されていたのか、古代ギリシアの「音組織」についてみていきたいと思います。

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テトラコルド

ギリシアの音組織は一般に下方形で示されます。そしてその音組織を形成するための基礎となっているが、「テトラコルド」と呼ばれる音列です。

「テトラコルド」とは、もともとは「4つの弦」という意味であり、一般的には4つの音による音列のことです。特に、「完全4度(「ド」に対してであれば「ファ」)」とその間の2つの音を合わせた4つの音(「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」であれば、「ド・レ・ミ・ファ」。なお蛇足ですが(非常に重要ですが(笑))、「ソ・ラ・シ・ド」も同じく、「ソ」に対して「ド」が完全4度の関係にあります)を示す際にしばしば使用されます。現在でも、音階や旋法の理論で重要な意味を持っています。

もう少しテトラコルドについて、かなり大雑把ではありますが、整理しましょう。「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」のなかの完全4度のテトラコルドは、分かりやすく言えば「ド・レ・ミ・ファ」の4つの音です。ただ、ピアノを見れば分かるように、「ド・レ・ミ・ファ」の間に4つしか鍵盤がないかというと、黒鍵もありますので、6つの鍵盤があります。つまり、「ド・レ・ミ・ファ」というテトラコルドの、「ド」と「ファ」の間の音、「レ」と「ミ」は、白鍵ではなく黒鍵を弾いても良い、そして、黒鍵を弾いても「テトラコルド」としてみなされますし、さらには、黒鍵を弾くことでテトラコルドの種類が増えることになります。ピアノで言えば、「ド」から「ファ」の間には、「ド」と「ファ」を除くと4つの鍵盤があることになりますが、この4つのうちの2つを選ぶことでテトラコルドの種類が増えるということになりますので、「ド」から「ファ」には6通りのテトラコルドを作ることができます。

古代ギリシアにおけるテトラコルドの種類

と、ここまでテトラコルドについて大雑把でも分かっていただくために、ピアノを例にしましたが(すみません、これ、かなり乱暴な説明です。「テトラコルド」についても詳しい説明は、『音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか』がイチバン分かりやすいと思います)、



ギリシアのテトラコルドも1種類ではなく、3種類あり、中間音(「ド」から「ファ」であれば、「レ」と「ミ」)の位置によって、

  • 全音階的(例:「ラ・ソ・ファ・ミ」、「ラ」と「ソ」、「ソ」と「ファ」の間が全音、「ファ」と「ミ」の間が半音)
  • 半音階的(例:「ラ・♯ファ・ファ・ミ」、「ラ」と「♯ファ」の間が全音+半音、「「♯ファ」と「ファ」、「ファ」と「ミ」の間が「半音」
  • 四分音階的(例:「ラ・ファ・↑ミ・ミ」、「ラ」と「ファ」の間が2全音、「ファ」と「↑ミ」、「↑ミ」と「ミ」の間が「1/4音(※半音の半分)」

の3つに分けられました。

古代ギリシアの音列

古代ギリシアの音列は、前述の「全音階的」「半音階的」「四分音階的」の3つのテトラコルドを積み重ねることで拡大されていきました。これには2つの方法がありました。

  • 接合型: 上のテトラコルドの下端の音を、下のテトラコルドの上端の音として重ね合わせる
  • 分離型: 上のテトラコルドと下のテトラコルドの間に全音の隔たりを置いて並べる

そしてこの2つを組み合わせることで「完全音組織(詳細は割愛します)」ができました。

ギリシアの音階は、「完全音組織」から1オクターブを切り取り、各民族の名をとって7つに区別されます(※音階はすべて「下方形」)。

  • ミクソリュディア(シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド・シ)
  • リュディア(ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド)
  • フリギュア(レ・ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ)
  • ドリス(ミ・レ・ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ)
  • ヒュポリュディア(ファ・ミ・レ・ド・シ・ラ・ソ・ファ)
  • ヒュポフリュギア(ソ・ファ・ミ・レ・ド・シ・ラ・ソ)
  • ヒュポドリス(ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド・シ・ラ)

このようなオクターブの音階は、オクターブ種であるとか、ハルモニアと呼ばれていました。

次回は「古代ギリシア(9)ギリシアの楽譜」です.

参考文献

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