西洋音楽史、バロックの12回目です。今回はバロック期に生み出された器楽ジャンルの1つである、組曲 suite を取り上げます。
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1.組曲の起源
組曲は、調が同じで、速度や拍子の異なる舞曲を集めたものです。16世紀のリュート音楽や、イタリア、フランスのバレー組曲 ballet suite に、その初期の形が認められると言われています。
17世紀中頃には、フローベルガー Johann Jakob Froberger の組曲において、「アルマンド allemande -クーラント courante -サラバンド sarabande」の配列と、ジーグ jig を含む形が定着しました。その後、サラバンド-ジーグの順序で定型化されました。
2.組曲の構成
前述の組曲の配列は、
- アルマンド: ドイツ起源で、やや緩やかな2拍子または4拍子
- クーラント: フランス起源で3拍子または6拍子
- サラバンド: スペイン起源で、緩やかな3拍子
- ジーグ: イギリス起源で急速で分割された拍子(6/8、9/拍子など)
を特徴とする舞曲です。
これら以外にも、
- メヌエット menuet: ヨーロッパの舞曲のひとつ。4分の3拍子で、各小節の1拍目にアクセントが置かれます。比較的ゆったりとしたリズムで優雅に踊られる宮廷舞踊です。
- ガヴォット gavotte: フランスの地方のフォークダンスと、それに由来する古典舞曲の名称。中庸のテンポの舞曲で、4分の4拍子ないしは2分の2拍子で記譜されます。ガヴォット特有のリズムの特色は、小節の半ばかアウフタクト(楽曲が第1拍以外から開始すること、弱起)に始まることです。
- ブーレ bourrée: 速いテンポの2拍子の舞曲で、ガヴォットに似ています。
- パスピエ: ブルターニュに起源の舞曲。古い時代は、8分の3拍子ないしは8分の6拍子の速い旋舞でした。
- リゴドン Rigaudon: プロヴァンス地方を起源とする舞曲。4分の2または4分の4拍子で、快活なテンポで演奏されます。
- ポロネーズ polonaise:「ポーランド風」の意であり、ポーランド起源の舞曲す。テンポがゆっくりな4分の3拍子。
などの舞曲や、前奏曲、エアなどが加わることもありました。
※前奏曲: (他の楽曲の・大規模な楽曲の)前に演奏する楽曲の意味。普通は、声楽を伴わない器楽曲です。本来はリュートや鍵盤楽器によって即興により演奏されるものでしたが、後に書きとどめられるようになり、しばしば演奏技巧を発揮するような曲として、また、即興的な自由な作風の作品として、作曲されるようになりました。
3.楽器
組曲はバロック期にたいへん好まれたジャンルでした。使用された楽器としては、
- チェンバロ
- リュート
- ヴァイオリン
- ガンバ
などが挙げられ、また、管弦楽のために作曲もされました。
【参考文献】
- 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
- 田村和紀夫『アナリーゼで解き明かす 新 名曲が語る音楽史 グレゴリオ聖歌からポピュラー音楽まで』
- 岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』
- 山根銀ニ『音楽の歴史』