中世音楽(3)世俗音楽

西洋音楽史、中世の3回目です。

本サイトの西洋音楽史全体の目次はコチラです。

また, 中世音楽の目次はコチラになります。

中世の音楽と言えばグレゴリオ聖歌、というのが、教科書的な西洋音楽史を読めば通俗的な理解であるように思えます。しかしもちろん、本サイトでも触れている通り、教会以外の音楽が全く存在しなかったわけではありません。

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ジョングルール 

解読可能な楽譜として現存する中世の世俗音楽は、11世紀頃までさかのぼることができるそうです。現存する西洋世俗音楽の資料の中で、最初に重要になるのは、ジョングルール jongleurという人々の楽譜です。

ジョングルールとは、フランスの旅芸人たちのことです。彼らの作品からは、村から村へ、城から城へと渡り歩いていた貧しい生活ぶりが表れています。ジョングルールの中でも、貴族に仕えて住居が定まり、社会的に地位が向上した人たちのことは、ミンストレル Minstrel と呼ばれるようなりました。

トルバドゥール

12世紀に入る頃から、南フランスのプロヴァンス地方に、トルバドゥール Troubadour という人々が登場しました。

彼らの多くは、特定の城に仕えた騎士です。作詞・作曲をしましたが、公の場での演奏活動はありませんでした。

作品の多くは恋愛詩。音楽的にはフレーズの区切り方が不明確で、自由リズムに近いといった特徴がありました。

トルヴェール

12世紀中頃には、トルバドゥールに続いて、北フランスでトルヴェール Trouvere と呼ばれる騎士が音楽的な活躍するようになりました。

特徴としてはフレーズ構成が明確で、拍節感が意識されるようになりました。また、曲調は陽気で警戒なものが多くなりました。

トルヴェールの代表者の1人として、アラン・ド・ラ・アル Adam de la Halle がいました。彼の《ロバンとマリオンの劇》は、現存最古の音楽劇として有名です。

ミンネゼンガー

フランスの世俗音楽の影響を受け、ドイツでは12世紀末から、やはり騎士を中心とした人々が音楽で活躍するようになります。彼らはミンネゼンガー Minnesinger と呼ばれていました。音楽的には地味で重々しい楽曲が多いと言われます。

作品としては、ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ  Walther von der Vogelweide 《パレスチナの歌》が有名です。

世俗音楽の共通特徴

1.〜4.に挙げた世俗音楽の特徴は、「単旋律」という点にあります。旋律の基礎になっているのは「教会旋法」。次第に長調・短調の傾向が強まり、楽曲形式も固定化されていきます。歌詞はフランス語やドイツ語と言ったラテン語以外の俗語が使用されていました。

騎士階級を中心とした人々の音楽は、十字軍の遠征による騎士階級の没落などが原因となり、次第に衰退していきました。

マイスタージンガー

14世紀頃からは、ドイツにはマイスタージンガー Meistersinger と呼ばれる人々が登場します。マイスタージンガーは騎士ではなく、商人や職人といった一般市民でした。時代的には中世からルネサンスにかけて活躍したと言われています。音楽的には、単旋律という、西洋音楽史的には「保守」的な特徴を持ち続けました。

マイスタージンガーの代表者の1人として、H.ザックス Hans Sachs が挙げられます。

H.ザックスは、ヴァーグナー Wilhelm Richard Wagner《ニュンゲルングのマイスタージンガー》Die Meistersinger von Nürnberg で取り上げられ、有名になりました。

次回は「中世音楽(4)オルガヌム」です。

参考文献

  • 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
  • 田村和紀夫『アナリーゼで解き明かす 新 名曲が語る音楽史 グレゴリオ聖歌からポピュラー音楽まで』
  • 岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』
  • 山根銀ニ『音楽の歴史』

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