田村和紀夫『音楽とは何か ミューズの扉を開く七つの鍵』「第4章 音楽はリズムである」のノートです。この章を通じて、「リズムとは何か」について、あれこれ思い巡らせたいと考えています。以下も参考にしてください。
さて、「リズムの定義」では、「或る音現象と或る音現象の時間関係全体」がリズムと言えるのではないか、と私なりに考えてみました(ただこの場合、「時間」という単語がクセモノなのですが)。
しかし田村和紀夫は、もう少し広い意味でリズムを捉えようとします。
「一般的にはリズムは「音価」のようにも「拍子」のようにも、あるいは「ビート」のようにも使われている〔中略〕。それを一義的に捉えるのは不可能です」(田村和紀夫『音楽とは何か ミューズの扉を開く七つの鍵』2011年 講談社 p. 95)
少し説明が必要かもしれません。同書 pp. 94 -95 での、「音価」「拍子」「ビート」、これに加えて「律動」についての説明をまとめてみます。
- 音価 = 音の相対的な長さの関係(p. 94)
- 律動 = 周期的な時間的推移に現れる秩序(p. 94)
- 拍子 = 整った周期を持つ時間経過(p. 94)
- ビート = アクセントを打つこと、そこに生じる始めるような弾力、躍動感、生命感(p. 95)
なお、「ビート」の例として、ハンス・フォン・ビューローの言葉である「太初にリズムありき」、また、
「「ベートーヴェンの交響曲第七番を、ワーグナーが「リズムの神格化」と呼んだときの「リズム」」(p. 95)
を挙げています。
確かに、「リズム」と単語で指されている事柄は、音楽に限定されず、多種多様です。ですから、「一義的に捉えるのは不可能」ということです。これを踏まえて、田村和紀夫は次のようにリズムを説明します。
「リズムとは音の相対的な長さの関係ではあるが、拍節構造と深く結びついており、また音楽の生命の源である「何か」ということにしておきましょう」(同 同ページ)
「音楽の生命の源」! かなり比喩的な表現なので、この意味をとらえるために注意深くなる必要があるかもしれません。
田村和紀夫は、「生命」という単語をワーグナーの例において使用しました。ということは、音 楽 を 音 楽 と し て た ら し め る あるいは、文字通りそれがそれとしてあるように 命 を 与 え る といった意味だけで、「生命」という単語を使用しているわけではないと推測できます。もちろん、こういった 命 を 与 え る といった意味も込められているでしょうけれども。
もう少し、「躍動感」に近い意味で使用しているのではないでしょうか。「生気」といってもいいかもしれません。
えーっと、個人的にはグルーヴといった方がしっくりきます。ワーグナーがベートーヴェン交響曲第七番を「リズムの神格化」と呼んだときの「リズム」は、グルーヴに言い換えることができる。ベト七はグルーヴの神だ! そろそろ白い目を向けられそうなのでやめます(笑)