第十二章のノート、その1は以下をご覧下さい。
金澤正剛は本書で、即興を2種類に分け、古楽との関連を説明しています。
「ひとつは、全体的即興演奏と呼んでよいもので、ひとつの作品を楽譜を用いずにその場で即興的に創作し、そのまま演奏してしまうという方法」(p. 239)
「もう一つは、部分的即興演奏とでも読んでよいもので、これは一応基礎となる楽譜があり、それにもとづいて演奏をする。ただしその場合、楽譜に書かれているものをそのまま演奏するのではなく、楽譜には書かれていない部分をつけ加えたり、一定の法則、またはしきたりに従って、変化をつけながら演奏する、という方法をとる」(pp. 239 – 240)
つまり、楽譜を用いない「全体的即興演奏」、楽譜に基づいて即興する「部分的即興演奏」の2つがある、ということです。
こういうふうに読んでみると、古楽と現代のポピュラー音楽に、態度的な類似性があると思われます。勝手に親近感が湧いてきます(ワいているのはお前の頭だというツッコミはしないでいただきたい)。
えー、先に引用した部分的即興演奏の説明に付け加えられた「一定の法則、またはしきたりに従って」の部分ですが、これは部分的即興演奏のみならず、全体的即興演奏にもあてはまると考えられます。全体的即興演奏とはいえ、やはり時代的・地理的な音楽的コード code (ややこしいですが、chord ではないです)から逃れることはできないと考えられるからです。「古楽、即興、ルール、自由」では、私は「ルール」と言い表しましたが、音楽的コード code があるからこそ、即興が成立することを忘れてはならないでしょう。
そうでなければ、「古楽」の「即興演奏」には決してなりえないからです。