初音ミクを使用した楽曲の良さが未だに分からない

初音ミクに独自の音楽とは何か, あるいはボーカロイドに独自の音楽とは何か, という疑問は, 実際に初音ミクを購入して使用する前から持っていました.

流行りましたからね. 否が応でも, 音楽が好きなら誰でも, 初音ミク発売以降, ボーカロイドを始めとする歌声合成ソフトの話題が目についてしまう, と言っても過言ではありません.

ボーカロイドを使用した楽曲は, ボカロ曲と言われる. 何か, 初音ミク登場以前にはなかった新しい音楽の在り方のようなものが, 囃し立てられている. こうした風説を元に, ボーカロイド, あるいはこれに類似した歌声合成ソフトの使用された楽曲 (ボーカロイド以外の歌声合成ソフトを使用した楽曲も, 以下, この記事ではボカロ曲と総称します) をいくつか聴いてみる. でも, 自分の感受性が鈍感なためか, あるいは決定的に知識が足りないためか, ボカロ曲に有意義な新規性を見出したことはありません.

確かに, あまりにも人間と懸け離れた, 不自然な (自然という言葉の曖昧さは一旦考慮から外します) 歌, というのは, 新規性があるかもしれません. しかし, それが有意義な, こう言ってしまうと元も子もないのですが, リスナーとしての自分にとって好みな新規性かというと, そうではありません. 人間の声を不自然に加工してたジャンルは多々あって, たとえばポピュラー音楽かつ最近でぱっと思いつくものに限定すると, vaporwave や chipmunk soul が挙げられますが, こういったジャンルに匹敵するリスナーとしての興奮がボカロ曲にあるのかというと, 安易に首を縦にふることはできません.

そもそも, ボカロ曲のほとんどが, 既存の音楽のジャンルのボーカル部分をボーカロイドへ置き換えただけで, こういう点ではボーカロイドに何か新規性を感じたことは一度もありません. 何かしらの新規性を狙っている, 実験的な楽曲もありますが, 聴いた範囲ではどれも成功しているとは思えません.

ボカロ曲に有意義な新規性がある, というのと, カッコイイと思えたボカロ曲というのはまた別の話です. 念のため.

自分はボーカロイドを 3 年くらい使ってます. 最初は初音ミクを購入して, GUMI, IA, 鏡音リン・レンと, いまでは 4 本のソフトを使用して, 日曜 DTMer しています. 3 年間, ボーカロイドを使用して日曜 DTMer をして気付いたのは, 初音ミクに新規性があったとしたら, それはボーカロイドの技術という点にだけであって, 要するに楽器としていままでになかった, という, この点だけです (厳密に言えば, 人の言葉を歌わせるシンセサイザーというのは, 初音ミク以前にも当然ありました (商用ベースだと, たとえば  YAMAHA PLG100-SG (1997) が挙げられます).

だから, 初音ミクの楽曲, ボーカロイドの楽曲, いわゆるボカロ曲に何か特徴を付けようとすると, それはボーカロイドを使用した, この点以上でも以下でもない.

音楽史を紐解けば, 楽器が新たな音楽の誕生を推進させるという現象は確かにあります. いま, ぱっと思いつく例だと, ターンテーブルはヒップホップという全く新しい音楽の誕生に寄与しました. そしてヒップホップは現在, 世界的に最も商業的に成功しているジャンルの 1 つだと言えます. この場合は, ターンテーブルという既存の機材から偶発的に新しい音楽が発生した, という, 新しい音楽の発生のタイプでしょう.

新しい音楽の発生のタイプを簡単に分類すれば, ヒップホップのような (1) 既存の楽器 (機材) の新しい使用法のほかに, (2) 理論的新規性, (3) 理論が先行して存在しそれを実現する楽器の発明, (4) 新しい理論のための新しい楽器の発明 ( (2) と (3) が同時に達成される) が思い浮かびます.

こういった分類にボーカロイドがあてはまるかというと, 現状, ない, というしかありません (後述の通り, これから先は分かりませんが).

繰り返しになりますが, ボカロ曲の有名曲はどれも, しょせんはポピュラー音楽のボーカル部分をボーカロイドに置き換えただけで, 何か (ボーカロイドを使用した以外の) 新規性があるようには聴こえません. 有名曲でなくても, ボカロ曲はどれも, (拙作を含め), 既存のジャンルのボーカル部分をボーカロイドに置き換えただけです. これも繰り返しですが, 実験的な楽曲の成功例もいまのところ知りません.

ボカロ曲にはボーカロイドを使用したという点以外の新しさのある楽曲もあるよ, という場合は, ぜひ教えていただきたいところですが, もし存在していれば, すでにもっと普及しているはずです.

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楽器という視点に捉われない, ボカロ・ブームという視点からは, いままでにない現象だったかもしれなません. たとえば, それまで無名だったDTMerがコツコツとニコ動にアップして少しずつ再生数を伸ばしていって, ていうのは面白いかもしれない (ていうかそれも舞台がネットに移っただけで, たとえばバンドマンなんかは同じことをライブハウスで行ってきています). けど, それも, けっきょく, 売れたボカロ P が人に楽曲を提供したり, 自分で歌ったりして, それが成功みたいなってしまっていますので, ボーカロイドがゴールではなかったという点で, かなり残念だったりします. いわゆるボカロ文化の主役は, ボーカロイドじゃなくて, ボカロ P だったのではないでしょうか. ボカロ衰退論なんて一時期言われてたけど, あれは P 文化が飽きられた, というのが本当のところだと思います.

ボーカロイドが流行ってるか流行ってないかは, 本質的には, ソフトの売り上げで判断するべきで, ニコ動の再生回数や投稿数では分からいないでしょう (多分売り上げも減ってるとは思いますけど).

なぜボカロ文化が流行したのかは分かりません. 2007 年当時の, サブカルチャーの状況がいくつか重なって, その重なり合った点に初音ミクが上手く適合した, くらいしか言えません. 2007 年から, 2010 年前半くらいまでの当時, 萌えアニメが以前に比べると少しは市民権を得たり, ニコ動が流行ったりで, ロックでも神聖かまってちゃんみたいなのが流行ったり, あと, 80 年代リバイバルも関連してるかもしれませんね. そういう状況に, 初音ミクは上手くフィットしたのではないでしょうか.ここまでくると, なぜゼロ年代後半からテン年代前半に, オタク文化が市民権を得て, 80 年代リバイバルが起こったのか, というテーマへ発展しますが, そうなると手に負えません.

というかね, ボカロ文化とか, ニコ動文化みたいなのって, 正直苦手なんですよね, いまだに. これは自分の感性がすでに当時, 古臭くなってしまったからかもしれませんけど, 神聖かまってちゃんとも苦手でしたしね. いまでこそアニメとかふつーに見られるし, 今期だったら『天使の 3 P!』めっちゃ好きなんですけど, 当時はそういうの気持ち悪い, て思ってましたね. だから, ボーカロイドを使い始めるのも遅かったんですけど.

それで, 使い始めたら…, 楽器としては相当楽しかったですね (いまちょっと飽き気味なのは内緒).

だから, ボーカロイドはすごく好きなんです. 自分がどれくらいボーカロイドが好きなのかは, 今日発表した楽曲を聴いていただければ少しは伝わるかと思います.

また, 割と頑張ってボーカロイドについて考えたこともある, というのは, 以下の記事をお読みいただければお分かりいただけるかと思います.

でも, ボーカロイドはすごく好きなんですけど, ボカロ曲にすごく新しいという点で魅力的な何かがあるかと言われたら, 繰り返しになりますが, ありません.

初音ミクが登場してボカロ文化が流行している以降でも, ボカロ文化以外の新しい・聴いたことのないポピュラー音楽の流行は起こっています. たとえば Trap は, 誕生こそ 2007 年以前ですが, 2010 年以降にポピュラー音楽においてなくてはならない存在になったと言えます. ベース系のさまざまなジャンルの集合点としての future bassもまた, Trap に比べれば規模は小さいですが, いままでにない新しいポピュラー音楽だと言えます. こうしたジャンルに比べれば, ボカロ曲のもたらした, 初音ミクのもたらした音楽へのインパクトは, 本当にささいなものに思えます.

とは言え, 初音ミクが登場してまだ 10 年. 商用の歌声合成システムの 1 つである YAMAHA PLG100-SG が市販されたのが 1997 年. さらにさかのぼって, ベル研究所がコンピュータに「Daisy Bell」を歌わせたのが 1961 年. 他の楽器に比べると, まだまだ歴史は浅いと言わざるを得ません. さきに, ターンテーブルがヒップホップという全く新しいジャンルの誕生へ寄与したと述べましたが, (蓄音機までさかのぼった)  ターンテーブルの誕生とヒップホップの誕生には, タイムラグがあります. ですので, これから先のの未来に, 歌声合成の技術を用いた, 全く新しくかつ, ポピュラー音楽として流行する新しい音楽が誕生するかもしれませんね.

ということで, ボーカロイドはまだまだ発展途上だと言えるでしょう. 正直言って, ぶっちゃけ, 繰り返しになりますが, ボカロ曲なんてどれも全然面白くないぞ! もっともっと冒険してリスナーとして楽しませてくれ!(自分も頑張ります…)


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