音波: 音楽の基本 (2)

前回の「音とは何か: 音楽の基本(1)」では, 非常にざっくりと音について説明しました. 今回はもう少し突っ込んで音について説明していきたいと思います. まあ, 突っ込んで, なんて言っても, 物理学的な観点からなんですけどね.

物理学的な観点から音について理解するためには, けっこう長めの前提知識が必要です. 前回のエントリーで,「音とは, 気体・液体・固体を媒介して伝わる波状の振動」と述べましたが,「波状の振動」とはどういうことなのか, 先ずはこの点について説明しましょう.

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波 (波動)  とは

波 (あるいは波動) とは, 物理的な, エネルギーの形態の変化, あるいはエネルギーの伝達の在り方です. エネルギーの伝達の在り方には, 衝突と波があります. 今回, 衝突については割愛するとして, 波とは,「物質内に乱れが生じると, 粒子間の相互作用によってその乱れを中心にエネルギーが拡散していく, エネルギーのこのような伝搬」のことをいいます.

このようなエネルギーの伝達は, 媒質 (エネルギーを伝達する物質) があってもなくても起こりえます. が, 音, つまり空気中を伝わる音波は, 媒質を伝わる波です. 楽器などの張った糸や金属の弦を伝わる波も同じく, 媒質を伝わる波だと言えます. こうした波は, 媒質中の隣同士の粒子が, 互いに作用し合って, 乱れを伝えているのです. そして耳は, 音という波を感知できる器官だと言うことができます.

波の性質

ここでは周期的な乱れとしての波の性質について説明しましょう. 周期的な乱れはとしての波は, ギターの弦をはじいたり, 笛を吹くとき生じます.

縦波と横波

周期的な波は, ぴんと張ったひもの端を振ることで発生させることができます.

こうして生じた波は, ひもを伝わって一定の速さで進みます. これが波の速度です.

波の速度から, 波の分類が可能になります. まず, 波の伝わる速度の向きと垂直であるような波を横波といいます.

[図1 横波](出典: 腹康夫『第 4 版 基礎物理学』(2012))

対して, たとえばバネのように, 波の伝わる速度の向きと平行であるような波を縦波と言います. もう少しあとで詳述しますが, 音波, すなわち物理的に理解された音は, 空気の圧縮と膨張によって生じる縦波です.

[図2 縦波](出典: 腹康夫『第 4 版 基礎物理学』(2012))

振幅

縦波および横波には, いくつかの特徴があります. 波の速度は, 波の方向と大きさを表し. そいして波の速さは媒質の性質によって決定されますが, 振動する媒質・粒子の変位の最大値を波の振幅と言います.

振幅は, 横波では波の高さを表します. また, 縦波では, 媒質部分が伝わる方向へずれる最大距離を表します. 振幅は波の速さに影響しません. しかし, 波の伝えるエネルギーは振幅と関係があります. 波のエネルギーは振幅の 2 乗に比例します.

振動数

周期的な波動では, 粒子は規則正しい振動を繰り返しますが, この波の性質を, 一定時間に振動する回数 = 振動数によって特徴づけることができます. 振動数はふつう, 1 病あたりのサイクル数 [cps] で表され, 単位はヘルツ [Hz] です. 1 Hz は, 毎秒 1 回の振動数を表します.

周期

波が完全に 1 回振動するのに必要な時間を波の周期といいます. たとえば, 決まった点を 1 秒間に 5 個の波の山を通過するとすると, 1 個あたりの通過時間は 1/5 s ですので, 周期は 1/5s だと言うことができます. このとき振動数は 5 Hz です. 振動数を f とし, 周期を T とすると, 振動数 = 1/周期ですので,

と, 簡単な関係を表すことができます.

波長

波の空間的な大きさは, 波長で表されます. 波長とは, 波の任意の点からつぎの波の同等の点までの距離のことです.

波の速さ v, 波長 λ, 周期 T (もしくは振動数 f) の間には, 簡単な関係があります. 波の速さ vは, 1 波長の距離を移動する時間, つまり, 1周期で割れば得られます.

あるいは,

と表すこともできます.

音波とは

さて, ここまでで波の性質についてみてきました. 前回のエントリーでは「音とは, 気体・液体・固体を媒介して伝わる波状の振動」と述べましたが, 本エントリーのここまでの波についての説明を元に, もう少し正確に言い換えましょう. つまり, 音とは, 媒介中を伝わる可聴領域の弾性振動の縦波です.

※弾性: 個体を変形させると, 変形をもとに戻そうとする復元力が働きます. この復元力を弾力といいます. 弾性とは, こうした性質のことだと理解していいでしょう

どういうことでしょうか. ごくごく初歩的な例から説明しましょう. 太鼓の皮, ピアノの弦などの音源, つまり発音体が振動すると, 周りの空気が圧縮と膨張を繰り返します. これによって空気中を疎密波 (縦波) が伝わります. この波が音で, 物理学では音波と呼ばれます.

音波が人間の耳へ入ると鼓膜を振動させます. したがって聴覚器官に音として聴こえるわけです.

音は, 水中や壁越しにも聞こえますので, 音波は液体や固体のなかも伝わるということになります. 「音とは, 気体・液体・固体を媒介して伝わる波状の振動」とは, こういった意味なわけです.

音の三要素

これは前回のエントリーでも説明したところですが, 音には 3 つの要素があって, それは音の高さ, 強さ, 音色です.

音の高さ

振動数が大きな音が高い音, 小さい音が低い音です.

人間が聴くことのできる音, これを可聴域と言います. 可聴域の振動数はだいたい 20 〜  2000 Hz の範囲です. 具体的に言えば, ピアノの中心音を代表とする, いわゆるチューニングの基本になる A (ラ) の音の振動数は 440 Hz です (ただこの 440 Hz と定められたのは 1936 年のことなんですが…, この辺の話題については今回は割愛します).

で, 1 オクターブ高い音というのは, 振動数が 2 倍の音ということになります.

なお, 可聴音より振動数の高い音のことを超音波といいます.

音の強さ

音の強さとは, 音波の方向に垂直な単位面積を, 単位時間に通過するエネルギー量の大小のことです. 気体の振動の振幅の 2 乗および振動数の 2 乗のそれぞれに比例します.

音色

同じ高さの音でも, ピアノとバイオリンでは音色が異なります. これは, 同じ周期の音波でも, 楽器によって波形が異なることによります.

楽器の音色の違いは, 倍音の混じり方の違いです.

倍音

楽器の音色の違いは倍音の混じり方の違い, と言われてもあまりピンと来ないと思います. そこで, 倍音についてもう少し詳しく説明しましょう.

弦固有の振動

両端を固定した弦の中点を指ではじいてみましょう. そうすると, 弦の振動が横波になって両側へ伝わります. この横波は両端で反射されて, 点の上を往復します. そこで, 互いに反対向きへ進む波同士は干渉し合い, 固定端である両端が節の定常波ができます. このときの波長 は, (両端の間の距離を L とすると, ) λ=2L になります.

弦固有の振動

[図 弦固有の振動](出典: 腹康夫『第 4 版 基礎物理学』(2012))

つづいて弦の端から 1/2, 1/3 の点を指で押さえて, その点に近い方の端との中点を指で弾いてみましょう. そうすると, 指で押さえた両端が「節」になる定在波ができます.

※定在波:  同じところで振動して進まない波のこと
※節: 定在波において振動しない点. なお, 定在波において振幅の大きいところを腹といいます.

このように, 弦に生じる定常波の振動を「弦の固有の振動」といいます. 腹の数 n=1 の固有振動を基本振動といい, n>1 の固有振動を倍振動といいます. この基本振動のことを基本音といい, そして倍振動のことを倍音というのです.

一般に, 弦は固有振動を重ね合わせた振動を行います. 倍振動の振動数は, すでに述べた通り基本振動数の整数倍です. なので, 弦は基本振動の周期で同じ振動を繰り返します. したがって, 弦の振動の周期は基本振動の周期と同じで, 弦の振動によって生じる音の周期と基本音の周期は同じである, ということができます.

定常波と共鳴

倍音とはどういったものなのか, が分かったところで, 倍音と音色の関係をもう少し詳しく説明したいと思います. 「音とは何か」がテーマの記事なのになんか倍音とかそういう説明が長くなってしまっていますが, その辺は目をつむっていただけると幸いです (笑)

さて, 張られた弦にその固有振動数の 1 つに等しい振動数をもつ周期的駆動力を外部から作用すると, 定常波が生じて振動の振幅が大きくなります. こういった現象を共鳴といいます. 共鳴が生じると, その系への最大のエネルギーの伝達がなされます.

ヒトの喉や鼻腔は, その構造によって共鳴する仕組みになっていますが, ヒトの声が個人個人で独特な音質なのはこのためです.

楽器がさまざまな音色を生み出すのは, 定常波と共鳴を利用しているからだと言えます.ギター, バイオリン, ピアノなどは, いわゆる弦楽器ですが, 両端を固定した弦に定常波が生じます. 弦楽器の音をチューニングするとき, 弦を締めたり緩めたりして, 弦の張力を調整しますが, これは弦を伝わる波の速度 v を変えているわけです. 弦の長さは固定されているので, この調整によって振動数 = ピッチを変えることができるのです.

ただし, 弦が振動するだけでは空気に十分な振動を伝えることはできません. そこでバイオリンのような楽器の胴は, 音響板として作用して弦の振動を空気に伝えます. バイオリンが大きな音を出す仕組みはこのようになっていて, つまり弦楽器の胴が共鳴箱の役割をしているのです.

管楽器の音が出る原理も, 同様に考えることができます. つまり, 管楽器の内部の気柱にも定常波が生じているのです. たとえばオルガンのパイプの長さは決まっていますが, これは固定弦と同じ原理です. トランペットやトロンボーンは, 気柱の長さを変えることで, 振動数 = ピッチを変更しています.


今回は波としての音にについて説明しました. 次回はもう少し音楽的な内容がテーマです. 次回は「音律」を取り上げます.


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