「音楽の良さ」は分からないけど, 誤魔化して納得する方法はある

先日, こういう記事を読みまして.

投稿者の方は, 歌詞が好きな曲 = 良い曲というのが基本で, 楽曲を構成している歌詞ではない要素についての良し悪しが分からない, 分かるとしたら,

「なんかいい感じ、くらいの感覚を良し悪しと言うのだろうか。爽快感とか?意外性?」

程度で, 音楽の良さを教えてほしい, という内容でした.

これは非常に興味深い, 面白い, といったら失礼にあたるかもしれませんが, いざ「音楽の良さ」について「語る」, つまり音楽以外の, 特に言語行為において説明しようとすると, なかなか難しい. 興味深い問いかけです.

ということで, 自分の考えていることを整理するためにも, 以下の文章を書いてみました.

え〜, 前置きが長くなる「ハイデガー病」に侵されていますので, もうしばらくこの, のらりくらりな文章にお付き合いいただきたいのですが, まずはやはりね, 問いの整理から始めないといけない.

この「音楽の良さが分からない」( から「教えてほしい」), というのは, 「音楽の良さとは何か」と言い換えることができます. 「音楽の良さとは何か」という問いには, 自立語として, 「音楽」「良さ」「何」という単語が含まれている. それぞれを明確にしなければならない .それも, それぞれの単語が他の単語の関係性 = 付属語の連関を機能させるような仕方で. 先ず, 音楽についてだが…,

ってやってられません. これでは一向に「音楽の良さ」にたどりつけません.

なお, わたしの考えている「音楽」とは「何か」については, 少し古くて修正したいところはたくさんありますが, コチラをお読みいただければと思います.

もう少し気軽にいきましょう.

先ず, 「「音楽」とは何か」という問いかけはあまりにも難解だからとりあえず不問にするとして, ただし, 次の 2 点は気に留めておくべきです.

1 つ目. 「音楽」といった場合, その指示対象はさまざまです. 「この音楽が良い」といった場合, 多くの場合は楽曲を指示すると思われますが, 世界には, 楽曲という対象に収まらない音楽もまた存在します.

2 つ目. 音楽を構成する要素はさまざまで, そのうちの 1 つを取り上げて「良い」「悪い」を判断することは, 特殊な場合を除いて困難です ( 「特殊な場合」とは, 無音の音楽といった事例です ). なぜなら, 多くの場合, 音楽の構成要素は他の構成要素が存在することで初めて構成要素として成立するからです. リズムのないメロディーは存在しないし, ビートには音程が存在します. また, 「悪い」と判断する人は少ないとだろうバッハの「無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 ( BWV.1007 )」という楽曲を, 黒板を引っ掻く音のサンプリングで再現したら, 多くの人はその「音楽」を「悪い」と判断するでしょう.

なお, 歌詞のある楽曲については, 歌詞もまた, 非常に重要な構成要素です ( この点については別の機会に ).

以上の点を気に留めたうえで, 「良さ」について少し.

「良さ」といった場合, それは判断をする主体によって 2 つの場合に分けられるでしょう. 1 つ目に, 「わたしが良い」と思う場合, 2 つ目に, 「わたしを含んだ複数の「わたし」が良い」と思う場合.「2 つの場合に分けられる」とは書きましたが, 実は第 3 の場合がある. それは, すべての「わたし」が存在しなくなったあとでも「良い」とされる場合. 言い換えれば, 判断する主体が存在しなくても「良い」と判断することのできる「良さ」です. 果たして「音楽の良さ」は, この 3 つの場合のいずれかに属するのか, 属さないのか. もしかすると「音楽の良さ」は, 3 つの場合の中間に属するような「良さ」なのか.

そんなん知るかよ, という話ですが, 仮にこの, 判断する主体の問題が大した問題ではないとしても, 「良さ」には別の困難が待ち構えています. それは理由の遡行です. どういうことかというと, たとえば, ある楽曲の「良さ」は, ある人の脳のこの部分が反応してそれは快さをつかさどる部分なので, その楽曲は「良い」という結論がでたとしましょう. そしてその楽曲は, 多くの他の人でも, 同じ快さをつかさどる脳の部分が反応するので, ほとんど普遍的に「良さ」がある, と言っていい. つまり, 音楽の良さは, 脳の音楽の良さをつかさどる部分が反応することに理由がある. 等々. しかしこのような回答が答えになっていなことは明白です. このような回答は, 「良さ」と「脳の反応」を言い換えただけす. 「なぜ脳が反応するのか」, と問われたら, また別の回答が用意されるでしょうが, それもまた, 「良さ」の言い換えに過ぎません. 同じ操作を繰り返したところで, えんえんと理由が遡行され, 決して「音楽の良さ」に回答することはできないでしょう. このようにしてしか回答することしかできない, という立場も認められなくはないですが.

気軽になっても, これほどの問いが思い浮かばれます. そしてこういった問いについて気になってインターネットや図書館で調べるうちに, 音楽美学というものがあると知り, ハンスリックがどうやら有名みたいだと読み始め, そもそも美学はバウムガルテンが始めたらしい, いやなんか価値判断についてはカントの第三批判だ, そもそもアリストテレスの『詩学』をだな, なるほど, 近年では「音楽の哲学」という潮流があって, とりあえず Kivy から始めるか …

ってやってられません. これではやはり一向に「音楽の良さ」にたどりつけません.

と, ここまでが前置きです.

こうした問題は真剣に取り扱われるべき問題ですが, もっともっと気軽に「音楽の良さ」が「分かる」とまではいかなくても, 「気付ける」くらいの方法はありまぁす! ただし, もしあなたが「変化」を楽しめる性格であれば, ですが.

それは, 「音楽史を体系的に聴く」です. 音楽史を, 年代順に聴いていくことで, 音楽の進化, 音楽の変化を知ることができます. もし進化や変化を楽しめるのなら, 本当にエキサイティングな経験ができるはずです. 音楽史と言ってもジャンルによってさまざまで, クラシック, ジャズ, ロック, クラブミュージック, あるいは日本の音楽, 等々とありますが, わたしのオススメしたいのはクラシックです.

わたしはクラシックという言葉があまり好きではないのですが, というのも, クラシックという言葉で指示されている総体が, 一単語で表されるにはあまりにも多様だからです.

初心者用の, そんなに厚くない入門書を 1 冊用意しましょう ( わたしのオススメは, 片桐 功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』( 2009, 音楽之友社 ) です ).

入門書を用意できない場合は, インターネットで「西洋音楽史」などで検索してもいいかもしれません. ただ, わたしは本をオススメします. とか言いながらわたしもかつて, 独学もかねて西洋音楽史について web サイトでまとめたことがあるのですが笑

そして…, 用意した本 ( あるいは web サイト ) を 1 ページ目から読み, 出てきた作曲家, 作品名を Apple Music や Google Play Music など定額ストリーミングサービスで検索し, 順番に聴きましょう ( こういったサービスに登録できない場合は, Youtube でもかまいません ). 音楽がどのように進化してきたかを聴き取るうちに, 「音楽の良さ」に気付くでしょう.

しかしそれはあくまで「誤魔化し」に過ぎません. 「音楽の良さ」を, 「音楽の変化」で誤魔化しているだけで, 音楽とは何か, 良さとは何かといった問題を考えないようにしている状況だということを忘れてはいけません.

ま, ていうかね, 音楽史を順番に聴いていくなんてね, もともと「良さ」うんぬん抜かして音楽好きな人じゃないとできないけどね笑


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