吉村秀樹への追悼文

先ず、唯一まともに弾くことのできる楽器というのが、ギターなのですが、ワタシは。しかしそれでも、相当ヘタクソで、「え? お前、それでギターとか言っちゃってるのwww」みたいなレベルなのですけれども。本当に、マジで。

で、上手くなろうと思ってちょろちょろ弾いたりしてるのですが、一向に上手くならない。なぜ上手くならないのか。なぜワタシはギターが、というか演奏全般がヘタクソなのか。なぜこうも作る曲作る曲ゴミのような曲なのか。その理由の1つとして挙げられるのが、吉村秀樹、あなたでした。あなたです。あなたでしょう。あなたでありつづけます。

初めて吉村秀樹の名前を知ったのは、Number Girl の《SAPPUKEI》というアルバムに収録されている〈Abstract Truth〉という曲だったと記憶しています。

「禅問答 禅問答 吉村秀樹」

と絶叫する向井秀徳の声に吉村秀樹というコトバを聴いたときから、吉村秀樹とは何者だ、という思いがずーっとあります。『ROCK’IN ON JAPAN』で eastern youth のインタビューを読んだときも、吉村秀樹という名前が頻繁に出てきました。確か。「ワタシをこうも魅了する Number Girl や eastern youth の尊敬する「吉村秀樹」というのは、一体何者なのか!?」という思いが、日に日に募っていきました。

インターネットが今のように発達していない、Youtube もなければ違法ダウンロード/アップロードが話題にもなっていない当時、吉村秀樹が何者なのかを知る手段は、まったく限られていました。地方都市の高校生だったワタシは、2日3日遅れで入荷される音楽雑誌を真っ先に手にし、1ページ1ページを舐めるように読み尽くし、見つけたのです。bloodthirsty butchers の名前を。

辞書で調べました。「血に飢えた肉屋」

なんというバンド名でしょう!

一体どんな音楽なんだろう…。

しかし当時のワタシは、それをなかなか知ることができませんでした。アルバム1枚を買えば1ヶ月の小遣いが吹っ飛ぶ。そしてそもそも、よく行く CD ショップにはブッチャーズのアルバムなんて置いてなかった。

なので、その名前を知ってから実際に音楽を聴くまで、けっこうなタイムラグがありました。初めて聴いたのは、映画『けものがれ、俺らの猿と』のサントラに収録されていた〈燃える、想い〉です。

ぶっ飛びました。言うまでもなく、ぶっ飛んだのです。

何だこの音質の悪さは、何だこの今にも自分に弾けそうなギターは、歌ってるのか歌ってないのか、何だこのヘタクソな歌は…!

当時、ワタシが必ずチェックしていたロックバンドは、スーパーカー、eastern youth、Number Girl でした(他にもありましたが)。ブッチャーズの〈燃える、想い〉には、この3バンドの全部が込められていたのです。スーパーカーのヘタっくそでローファイの塊のようなギター、ノイズ。イースタンみたいな日本っぽい情緒性、ナンバガのようなシャウトそしてこのシャウトを打ち消すディストーション…。

完璧だった。完璧だったのです。打ちのめされたのです。あの日、〈燃える、想い〉を聴いたあの日、ワタシはブッチャーズに打ちのめされ、吉村秀樹のギターサウンドとボーカルに打ちのめされたのです。

それからというもの、吉村秀樹は間違いなく、ワタシにとってのギターヒーローのうちの1人になりました。今でも、あなたがいなくなった今でもそうです。

あなたのせいだ。あなたがあんなギターの音を鳴らさなければ、ワタシはもっとギターが上手かったはずだ。でもどうだ。ヘタクソだ、ワタシは、ギターが。死ぬまでワタシはギターがヘタクソなままだろう。あなたが教えてくればギターサウンドが、ワタシの精神の奥の奥の方に巣食っているから。

でも、ありがとう。

あなたというギターヒーローは、ワタシにギターを持つ勇気を与えて売れたのだ。あなたがいなければ、ワタシは今ギターを弾いていない。本当にありがとう。本当にありがとう。これからも、本当に、本当にありがとう。


吉村秀樹の訃報を知って、ワタシなりに何かリアクションしたいと思いました。でも、コトバでは言い表せませんでした。その日のうちに、コトバで言い表すことは、不可能だったのです。

だから、この、何とも言えない喪失感を、何とか表現しようと、表現することで吉村秀樹への想いが結実するのではないかと思って、曲を書きました。それが、〈追悼 吉村秀樹〉です。

この楽曲は、「吉村秀樹」、および彼の活躍した場である「bloodthirsty butchers」を音楽的に表現できないか、といろいろ思案して作りました。

この楽曲の要素は全て、「吉村秀樹」および「bloodthirsty butchers」を表してます。主題として執拗に繰り返されているメロディーは、「吉村秀樹」をローマ字表記し、「A」から「Z」までにそれぞれ12音階と5つの音価を割り当て、その上で、メロディーの一音一音のベロシティーの値をブッチャーズのアルバムリリースに関連する値に設定しました。バッキングコードもまた、同じように、「吉村秀樹」とブッチャーズに関連した数値に設定してあります。もちろん、徐々にフェードインされるディストーションの設定値や、テンポ、音量などについても、すべて同様です(楽曲の最初の音量が極端に小さいのもそのせいです)

ですので、ワタシの意志は音楽の要素への「設定」のみといってもいいでしょう。「設定」の「結果」に対しては全く恣意的な操作を施していません。「といってもいいでしょう」というのは、バッキングの演奏のみ、手弾きだからです。あとはすべて(広い意味での)プログラミングです。

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