あまりもうフジロックに魅力を感じなくなっていて、よっぽど観たいアクトが来ない限り行きたくないのですが。
みたいなことを、フジロックのレポートの枕に毎回書いている気がします。
それで今回、「マジで… 来るの… 単独じゃなくて… しかも何でよりによってフジ…」
いやもう本当に、『Cuz I Love You』を初めて聴いたときから大ファンで、セラムンのコスプレとか、どこかユーモアのあるように見える「Juice」MV のから、最初はコミカルな人なのかな、と思ってたのですが。
「Good As Hell」の新しい MV に感動し、さらに歌詞の和訳も読んで、もうなんというかその、「陽」のパワー!!!!! に魅了され、さらに大・大・大ファンになってしまいまして。
YouTube でそのパフォーマンスを見る度に、来てくれ! 日本に来てくれ! 頼む! と願っていたのですが、願いが叶ってフジ 3 日目の大トリ。
20:20 Lizzo 待機。
ヤバい。めっちゃ人多い。
BAD HOP 中、モッシュピット後方いたであろう人が一気に前方へ。ちなみに最前列はほとんど動かず。まさかの Lizzo 地蔵。どんな体力だ …
BAD HOP もめたくそクールだったのですが、転換で組まれていくステージセットはかなり豪華。
やっぱりライブはこうじゃないとね。他のアクトがやけに簡素に思えてしまいます。
足の疲労もそろそろ限界な、立ちっぱで 1 時間待った、予定スタート時刻から 20 分押し。ステージが暗転。光り輝くピンクのハートのネオン。地鳴りのような歓声。を掻き消す生バンドの怒涛の音圧。そして全てを包み込む、Lizzo の「Cuz I Love You」。とんでもない。
マジで良かった
ヤバい。
完璧。
無理してモッシュピットに入って良かった。半分意識を失いかけながらも、疲労困憊のなか、待ち続けて良かった。
Lizzo はマジで良かった。
Lizzo 自身の大迫力な存在感はもちろん、総勢 10 人のダンサー、4 人のバンド・アンサンブル、全てがトップクラス。
ちなみにダンスで言えば、並いるダンサーを押しのけて Lizzo 自身が圧巻でキレッキレ。ケツ丸出し T バックで Twerk を披露。
Lizzo の生ケツ丸出し Twerk 。
圧倒的パワー。
歌・ダンスだけでなく、得意のフルート演奏も聴かせてくれました。
そしてパフォーマンスに華を添える映像と衣装 (お色直しあり)。映像もリアルタイム合成で、US 仕様のデザインがめちゃくちゃクール (ここはテクノロジーの発展を感じさせられました)。
映像のハイライトは、Cardi B とヴァーチャルコラボしたところでしょうね。スマホのメッセージ・アプリを模したタイムラインに続き、テレビ電話に映ったのは Cardi B。「RUMORS」!!!!! この演出はエグい。
最新作からだけでなく、「Juice」 、「Good As Hell」、「Truth Hurt」など、前作アルバムからの人気曲も披露し、バランスの良いセットリスト。Coldplay カバー(「Yellow」) のサプライズも。
特に「Good As Hell」を聴けて良かった …! これはもう、人生で生で聴いておきたいセットリストかなり上位だったので、本当にうれしい。
音楽以外の面では、セーラームーン愛を披露し、ファンとコミュニケーションもとり、サインするなど、非の打ち所ナシ。てかマジでガチのスター中のスターなのに、ライブ中にファンにサインするとか、そんなキャラだったの!?!?? と驚きです。
なんで単独ないの!? と思ってたけど、フジで観れて良かったかも知れない。フジという非日常に、さらに Lizzo という非日常。何より野外。Lizzo のとめどなく溢れるパワーは、どんなに大きなキャパでも屋内では抑えきれないはず。どこまでも連れてってくれ。エンタメの力で …!
これが…! アメリカ…!
本当に夢のような、至高の時間で、あっという間の 70 分でした。いやほんと、3 時間くらい観ていたい。ぜんぜん 70 分では足りない。
これがアメリカ…!
これがアメリカなのか…!
トランプ政権の誕生とか、頻発する銃乱射事件とか、中国の台頭で国際的プレゼンスが下がっているとか、アメリカの凋落みたいなニュースは日常的に耳にするし、音楽チャートはラップばかりでコード進行も単調で面白くないとかなんとかみたいな意見もありますが…!
これが! アメリカ! ヤバい!
あああああ
現時点での、あらゆる US カルチャーの権化。これは日本人、ムリ。どんなに束になっても敵わないでしょ。
ちょっと、これが今の日本だったら…、と考えてもみたんですが、不毛だと判断してやめました。
Lizzo がフジで歌った意味
終わって、振り返って。
フジといえば、環境配慮を謳ったり、原発反対の立場を鮮明にしたり。どちらかと言うと左寄りなイベントだと思うのですが 、もうそのね、左寄りのフジロックを、ガッチガチの資本主義も資本主義、US カルチャーがガッと、全部持っていっちゃう感じね。大トリで。あれがたまらなかったですね。もちろん、Lizzo の努力と才能があれだけの世界観を構築したのですが、あれだけの世界観を築くために必要なマネー。そのマネーを引き寄せた、Lizzo の努力と才能。その努力と才能にビジネスチャンスを見出し、投資する資本主義 … 、うーん! フジロックとは真逆の価値観!
しかし! ステージ上で発せられるメッセージは、一貫して、愛。そしてその愛の正体は、私自身が一人一人、特別であるという、お互いによる、お互いへの思い遣り。多様性とも言い換えられ、レインボー演出にも表されていました。Lizzo のステージは、ほとんど(生物学的に) 女性だけ ((生物学的な男性は 2 名)。ダンサーだけでなく、バンドメンバーも女性。有色人種の。さらにダンサーはボディポジティブ。膝にサポーターしている演者もいました。
そう、Lizzo も発しているメッセージはリベラルな立場。しかしそのリベラルなメッセージを、観る者の心に沁みるほど沁み込ませることができたのは、資本家の力。
極度に高められたエンターテイメントは、政治・経済的対立を完全に克服する。
それが実現したのが Lizzo のステージだったのです。