ボーカロイドにラップをさせる方法(草稿)

以前のエントリーで、ボーカロイドラップについて、「のちのち、もうちょっと、ラップの「フロウ」も含めて、ちゃんとまとめたものを書きたい。つもり。予定は未定」と言ったんですが、ちょくちょく書いています。が、全然完成しそうにないんで、とりあえず「草稿」ということで、随時、当ブログにアップすることにしました(楽曲を作るときも、作りかけのをよくネットにアップしてるんで、そんなノリです)。本当はすでに完成している予定でしたが、書き始めたらけっこう時間がかかる。というかこれ、完成するのか。完成したら良いなあ。

ということで、本当に「草稿」ですので(笑)、まだまだ読み難いかもしれませんが(そもそも「ですます調」と「だである調」が混在しています)、ご興味のある方はどうぞ。

あ、ちなみに、わたしの作ったボーカロイドラップで、割とウケがいいのは、コチラ。

最初に免責事項を。以下の文章は、ほとんど、Wikipedia の記事でいうところの「独自研究」であり、何か信頼ある研究機関で発表されたものをまとめたものであるとか、あるいは(絶対にありえませんが(笑))、これから信頼ある研究機関に発表される予定のものであるとか、そういう類のものではありません。当たり前か。また、いわゆる「先行研究」みたいなものを網羅的に調べ上げたうえでの文章でもないので、もしかしたら、広いインターネットの世界、既に誰かが同じようなことを書いているかもしれません。ということで、単に、わたしが、ボカロラップを作りながら、ラップとはどういうものか(特に音程)、ボーカロイドにラップをさせるにはどうすればいいのか、などと考えたものを、まとめたものです。とは言え、以下の文章と同じように作ると、きっと、ボーカロイドにラップをさせる、つまり、ボカロラップが作れるはずです。

さて、以下の文章は、大きく3つに分かれています。

  1. フロウとは何か
  2.  ボカロラップの作り方(実践編)
  3. ボカロラップの作り方(理論・仮説編)

です。

1. では、ボカロラップに限定せず、ラップの「フロウ」について、特に音程に焦点を当てて、わたしなりの考えを述ています。2. では、1. を踏まえた上で、どのようにボカロラップを作ればいいのか、わたしが具体的に行った調声を紹介します。3. では、2. を踏まえた上で、ボカロラップを作る法則を、わたしなりにまとめます。

御託はいい、こっちは具体的にボカロラップをどうやって作るかさっさと知りたいんじゃい! ていう人は、1. と 3. は読まず、2. のみ読んでいただいてかまいません。が、残念ながら、当然、1.、2.、3. はそれぞれ有機的に連関し合っていますので、全体をお読み頂いた方が、より理解が深まるかと思います。なお、念のためもう一度書いておきますが、2. は、実際に作れる・具体的な方法の紹介ですので、「事実」と捉えていただいて大丈夫かと思いますが、1.

3. は、あくまで私見、仮説としてお読み下さい。

また、例として上げられている楽曲を選択する際に、「ヒップホップ史」といったものは考慮に入れていません。ガチなヒップホップ界隈からすると、「それでwwwww そこの楽曲かよwwww」「ヒップホップじゃねぇよwwwww」みたいな選曲もあります。が、選曲の基準は、あくまで、「ボーカロイドにラップをさせるための分かりやすい例(のうち、わたしが聴いたもの)」です。

目次

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参考文献・web サイト

この免責事項の最後に、以下の文章は、2年前の4月に聞いた、知人の、MC・トラックメイカー・DJ であるコボリアキラくんによる、小さな「ラップ講義」に、大きな影響を受けています。彼の講義を聞くことがなければ、ラップ、ひいてはヒップホップ・ミュージック全体の良さについて、このように深く考えることはなかったでしょう。ここに感謝の意を申し上げます。

フロウとは何か

ラップにおいて最も重要なのが、わたしは「フロウ」だと考えています。どんなにカッコいいトラックでも、どんなにいい歌詞でも、フロウがよくなければ台無しです。逆に言えば、ただ手拍子に合わせるだけでも、へんちくりんな歌詞でも、フロウがバッチリだと、カッコいいラップになります(たぶん)。しかし、このフロウ、ガチなヒップホップ界隈以外の人からすると、いまいち意味をつかめません。が、それほど難しい概念でもないと思います。

なぜ「いまいち意味をつかめない」のか、それは、「フロウ」という単語が、単に「ラップの仕方を表す」同時に、「良いラップを褒める」ためにも使用だれるからだ、とわたしは考えています。言い換えれば、「フロウ」という言葉は、単に事実 = ラップの仕方を表すと同時に、価値判断 = 良いラップを表している。というこの2つの「フロウ」という単語の使われ方は、文脈で判断するしかないでしょう。例えば、「2Pacのフロウ」という場合には、「2Pacのラップの仕方」という意味で使われていますが、「2Pacはフロウしている」という場合には、「2Pacのラップがカッコいい」という意味で使われていることになるでしょう。この2つ「フロウ」という単語の使われ方を混同することで、「いまいち意味をつかめない」ことになってしまう、のではないでしょうか。

今回扱うのは、あくまで「ラップの仕方」という意味での「フロウ」です。「いいフロウ」までは踏み込みません。

補足として。「フロウ」は、ラップ以外にも、事実を指し示す単語、あるいは、価値判断としての単語として使用されます。このラップ以外にも使用されるという事態もまた、「フロウ」という単語が「いまいち意味がわかりにくい」一因になるでしょう。しかし、今回の本題はあくまで、「ボーカロイドにラップさせる」=「ボーカロイドのラップの仕方」=「ボーカロイドのフロウの作り方」であり、「フロウの包括的な定義」ではありません。前述の通り、ボーカロイドにラップさせるために、ラップの仕方という意味で使われる限りの「フロウ」とは何かについて、以下では簡便に説明します。

さて、ラップの仕方としての「フロウ」ですが、ポール・エドワーズは、『HOW TO RAP』(2009)のなかで次のように述べています。

「フロウ(節回し)」

「ヒップホップの曲におけるフロウとは、単純にそこに含まれているリズムとライムのことである」

音楽を好むなら、「リズム」と聞いて、ピンとこない人はいないでしょう(リズムとは何か、の概念的な確定は恐ろしいほど難題でしょうので、ここでは追求しません)。「ライム」とは、「韻を踏む」ことです。この韻の踏み方にも様々あるのですが、ここでは(特に、歌詞上の文節末において)「母音を揃える」あるいは「揃ったように聴こえるように単語をつづる」程度に理解しておけばいいでしょう。ライムについてより詳しくは、『HOW TO RAP』の「フロウ」の章を参考にしてください。

エドワーズによって「リズムとライム」というふうに定義されたフロウですが、わたしとしては、さらに2つの要素を付け加えたいと思います。つまり、「フロウ」は以下の4つの要素から成り立っているのではないでしょうか。

フロウの4要素

(1)ライム
(2)リズム
(3)声質
(4)音程
このうち、初音ミクでは声質はほとんど決まっています。また、リズム関しては、今回は扱いません(補足程度に、最後にちょろっと書きます)。

音程

メロディ型・・・(1)

  • 例 FUNKY MONKEY BABYS
  • 例 下克上

オクターブ上下型・・・(2)

  • 例 AUDIO TWO
  • 例 ビバハピ

音程一定型・・・(3)

  • 例 Dragon Ash『Let yourself go, Let myself go』
  • 例 【初音ミク】般若心経ダンスホールレゲエ【アレンジ』http://youtu.be/UjxlmPOoDzE

喋り型・・・(4)

  • K DUB SHINE『日出ずる処』https://www.youtube.com/watch?v=sM_kjraGfl0
  • ケフィアP『VOCAL ENGINE』http://www.nicovideo.jp/watch/sm5932293

(1)ほど調性感が強く、(4)ほど調性感が薄い。(1)ほどボーカロイドで作りやすく、(4)ほど作りにくい

(1)と(4)の分かりやすい比較として、Dragon Ash「Grateful Days」と、この曲をサンプリングした LG Monkeys「Grateful Days」を聴き比べてみてください。

LG Monkeys の方のラップは、以下のように五線譜に簡単に表すことができます。対してDragon Ash のラップは、オフィシャルバンドスコア p. ○○を参考にする限り、簡単に五線譜に表すことができません。

ボカロラップでは、ほとんど(1)です。Mitchie M の『ビバハピ』にでてくるラップは(2)に当てはまるでしょう。(4)は挑戦している人はいるが、聴いた範囲では、ケフィアPしかいない。(3)は、ぱっと聴きは、人間の場合は、音程は一定に聞こえるが、実は、それぞれのシラブル内で、音程が変化している。これを再現しないと、ボーカロイドでは、「お経ラップ」のように思われてしまう。。

実際のラップでは、(1)〜(4)を組み合わすことが普通です。

また、上記以外か、上記に含まれるか、自分ではまだはっきりしませんが、(日本人にとって)英語の発音に近いように聴こえるラップと、そうではないはっきりと日本語らしいラップとがあります。しかしこの分類の音程については、先ほど述べたように、自分のなかでもまだはっきりしていませんし、音程以外の要素が原因の可能性もあるでしょう。ということで、今回は扱いません。

日本人にとって、英語らしく聴こえるラップとして、Shingo 02 や、Diggy-Mo’ が挙げられます。

日本語ラップ限定

日本語(東京弁)の発音限りなく近く聞こえ、かつ、ラップしているように聴こえる調声

日本語ラップには、関西弁らしいラップもあります(餓鬼レンジャーなど、※7月1日追記。すみません、餓鬼レンジャーは熊本でした。関西弁らしいラップとしては、SHINGO☆西成など)。が、以下では東京弁に限定します。

カロラップの作り方(実践編)

  • 例としてキングギドラ『公開処刑』、「俺もボーイケンとは同意見、あれば話し合う相違点」、ここはボーカロイドらしく、「鏡音レンとは同意見」に歌詞を変えます。
  • ノートの音程を一定にし、リズムだけ確認しながら、打ち込んでいく

メロディ型

メロディ型は、調性から外れないようにノートを配置していきます。その際、なるべく平坦にノートを配置するようにしましょう。ラップらしいメロディと、ラップらしくないメロディの違いがあると思います。が、今回はこの点については主題ではありませんので、割愛します。

「Yo!」をボカロで再現

さて、いよいよここからが徐々にラップらしくなるのですが、次のステップに移る前に、ヒップホップらしい掛け声、「Yo!」を作ってみましょう。

「Yo!」を作るその前に、ボーカロイドで打ち込む実作業と、五線譜での表記の間に、解離があることを確認しておきましょう。ビートルズの「Yesterday」です。「Yesterday」の歌い出し、「Yes」は、「◯◯」によると、「◯」一つの音符で表記されていますが、この「◯」の一つの音符を、一つのノートとみなし、に「い」「え」「す」をそれぞれ入力しても、「Yesterday」らしい「Yes」を再現することはできません。

これと同じように、ラップでよく使用される「Yo」もまた、一つのノートに「よ」を入力しても、ラップらしい「Yo」を再現することはできません。

では、どうすればいいのでしょうか。リスニング能力(ここでの「リスニング能力」は、クラシック教育で言うところの「ソルフェージュ」とほとんど同じ意味で使用していると思ってください)の高い人は、「Yo」のなかに、音程の変化を聴き取れるでしょう。そうでない人は、任意の楽曲から、「Yo」をサンプリングし、スローモーションで再生してみてください(サンプリングしてスローモーションで再生する実際の作業手順は、ここでは割愛します)。

これを耳コピし、ボーカロイドで再現すればよいのです。耳コピするのが難しい場合は、メロダインなどのソフトを使用するのも一つの手でしょう。なお、わたしは、メロダインを所有していませんので、先ほどの音声をメロダインで処理した効果は分かりません。

さて、「Yo」を、ボカロエディタで再現すると、次のようになります。

人間の「Yo」を完璧にコピーするのではなく、制作者にとって「Yo」と聴こえるようなノートの配置ができれば、それで十分だと思います。目標はボーカロイドラップを作ること、そして、ここでの目的は、「Yo」といった簡単な掛け声であっても、再現するために、いかに豊かなノート配置が必要であるかを知ることです。

トークロイドの作り方

続いて、これを応用して、ボーカロイドを喋らせる、いわゆる「トークロイド」に挑戦してみましょう。

また、『DTM MAGAZINE 増刊 CV (キャラクターボーカル) 01 初音ミク 2008年 01月号』(寺島情報企画、2008)にも、トークロイドの作り方が、簡単に説明されています。人間の発話に近い音程を再現するためには、5度に注意しながらノートを配置させるといいらしいです。また、トークロイドを作る際にもう一つ参考になる文献として『』があり、これによると、人間の発話は、音程が一定に聴こえて、実は徐々に下がっているらしい。この2点、つまり、

  • 5度の音程に注意する
  • 徐々に下がっている

に留意しながら、トークロイドに挑戦しましょう。ミクちゃんに喋らせるセリフは、『ゆるゆり』の登場人物である、杉浦綾乃のセリフ、「罰金バッキンガムよ!」です。なぜこれを選んだかは、察せよ。

さて、「罰金バッキンガムよ!」を実際に作っていきましょう。最初は音程を一定にし、リズムだけを確認しながら、ノートを配置します。

ここから、「罰金バッキンガムよ!」と喋っているようにノートを変化させます。先ず、「罰金」です。

アクセントには第1アクセント、第2アクセント、非アクセントがある。これを、第1アクセント = 8度、第2アクセント = 4度、非アクセント = 1度とノートを配置させる。個人的には、第1アクセント = A♭3、第2アクセント = E♭3、非アクセント = A♭2 に配置すれば、初音ミク V3 を人間らしい発音に近づけることができる。

一音の中にも、音程の変化が見受けられる。いわゆる「イントネーション」。これは、「ー」で再現する。「おはよう」なら、「お↓ は↑ よ↓ う↓」だろう。「お」「は」「よ」「う」音程を再現した各ノートを分割し、「↑」なら半音上、「↓」なら半音下に「ー」を挿入する。

同じアクセントが続く場合は、半音づつ下げる。わたしが作った範囲では、いまのところ、どんなに長い単語でも、同じアクセントが4つ以上続くことはない。その際、アクセントになる音を中心とし、半音づつ下げる。つまり、例えば、或るアクセントがE♭3であったとして、それが3音続くように聴こえた場合、これを再現するには、E3 – E♭3 – D3 という順番で下げる。

(2)オクターブ上下型
(3)音程一定型
(4)喋り型

(4)を中心に扱う

ボカロラップの作り方(理論・仮説編)

では、最後に、見出される法則を、仮説的に理論化していきましょう。この理論化は、わたしの楽理の知識不足から、かなーりトンデモになっているかと思います。より楽理に詳しい人からのツッコミをお待ちしております。ツッコミは甘んじて受け止めます。さて、以上の実践から、次のような法則を見出すことができるでしょう。すなわち、「コードの半音階的な進行、および各コードをモードとしてとらえ1度、4度、8度を割り当てる。各度には、上下1〜2度程度の装飾音」それぞれ説明していきましょう。

コードの半音階的進行

トークロイドに近いラップをさせるためには、トークロイドの原則の1つ、「人間の発話の音程は、徐々に下がっている」ことに留意しなければなりません。これを再現させるためには、「1度 – 4度 – 8度」の関係、これを仮に「ブロック」と呼びましょう、このブロックを、維持させたまま、半音ずつ変化させる = 進行させることが必要になります。或るブロックの次のブロックを、強調させたい場合は、半音上げ、強調させない場合は、半音下げることになります。ここからがトンデモ仮説ですが、半音的にコードを進行させることは、いわゆる「裏コード」と呼ばれるものと類似の現象と見なすことができるのではないでしょうか。裏コードとは、…

各コードをモードとして

補足 リズム

3連符を基本にした方が、雰囲気が出る
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