英語の歌詞に韻 (rhyme) は必要か?

「韻を踏んでいる / 踏んでいない」「韻を踏む必要がある / ない」といった議論は、どういう理由かとても取り締まりに厳しい方々、通称ライム・ポリスがいらっしゃいます。ライム・ポリスのうち特に厳しい、もしかして過激派なのでは? と勘繰ってしまう一派は特に、韻暴論者と言われています。嘘です。韻暴論者、さきほど YouTube で調べたらさらに近づき難い同名のラップ・ユニットが存在しました。どこまで冗談なのか本当なのか、とにかく私は韻、というか rhyme の議論にあまり参加したくないのですが、調べていくうちに非常に興味深いことが分かりました。ですので、よくある「調べてみました!」系と似たような「英語の歌詞に韻は必要? 調べてみました!」的記事を残しておきます。

自分用のメモです。

主にインターネットの情報を集めたものです。

あまり信用度は高くないと思ってください。

ただ、「あまり信用するな信用するな」というと、参考にした先に失礼ですので、信用度の高そうな URL に関しては、そのリンク先、ぜひお読みください。

なおこの記事は、「Sagishi さんの YOASOBI「アイドル」評が興味深かったのでいろいろ調べました」 http://musicmusicologic.com/poems-without-rhymes/ の補足記事です。

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英語の歌詞は、ヒップホップに限らず韻を踏んでいる

さて、英語の歌詞は韻が踏まれているとよく言われます。これはヒップホップに限らずです。

実は韻という言葉はけっこう多様な意味を含んでいます。Mickey Mouse 、これも韻です (参考: 榊原知樹「エッセイの音楽性分析:頭韻とは」ー第13回東大院生によるミニレクチャプログラム https://www.youtube.com/watch?v=Yu0ONo_kHfY)。

この記事では、厳密な定義までは触れませんが、特に断りなく「韻」と使っている場合は、脚韻の意味です。rhyme です。厳密な定義までは触れません。ライム・ポリスさん、一度下がってください。職質は任意のはずです。

よく「ヒップホップは韻を踏んでいるんだ」的なことが言われますが、何も韻を踏むのはヒップホップの専売特許ではありません。ロックであっても、洋楽の歌詞を読むと韻が踏まれています。

グランジのバンド、Nirvana の「Smells Like Teens Spirit」(1991) のサビの歌詞をみてみましょう。

With the lights out, it’s less dangerous
Here we are now, entertain us
I feel stupid, and contagious
Here we are now, entertain us
A mulatto, an albino A mosquito, my libido

韻が踏まれていることが分かると思います。

もう一例くらいみてみましょう。UK ロックの名曲、OASIS「Don’t Look Back in Anger」(1995)、歌い出しです。

Slip inside the eye of your mind
Don’t you know you might find
A better place to play
You said that you’d never been
But all the things that you’ve seen
Slowly fade away

So I start a revolution from my bed
‘Cause you said the brains I had went to my head
Step outside, summertime’s in bloom
Stand up beside the fireplace
Take that look from off your face
You ain’t ever gonna burn my heart out

やはりきれいに韻が踏まれています。

対して日本人の書いた英詞を見てみましょう。ロックにもいろいろありますが、有名なところから引用したいと思います。やはり Hi-Standard「Stay Gold」(1999) でしょう。

My life is a normal life
Working day today
No one knows my broken dream
I forgot it long ago
I tried to live a fantasy
I was just too young
In those days you were with me
The memory makes me smile

Nirvana、Oasis と比べると、韻が弱い気がしますね。Hi-Standard が流行した頃、同じように英詞で歌うメロコア、スカ系のバンドが多数輩出されました。

たとえば Snail Ramp (「Mind Your Step」(1999))。

Did you sense any changes over that period of time
Mind your Step!
If you didn’t believe me, go and see yourself
So lucky! How did you enjoy
The last time!
Her free movement in dancing
I would give anything for the truth,
why are you hurrying so?
Our encounter was a mere chance, I can’t speak for yourself …
But promises should be kept without fail
there’s a bit of blue sky between the clouds all at once
We Will chance it,
This is our chance,
Don’t let it go!

こちらも韻を踏んでいるかというと、かなり厳しいです。

00 年代では日本でもだいぶ、「ラップは韻を踏む」ことが浸透したと記憶していますが、英詞で歌うロックはどうだったでしょうか? ELLEGARDEN をみてみましょう。

There ain’t no fear
There ain’t no hope
There ain’t no right
There ain’t no wrong
Just make it loud
Just make it loud
Just make it loud
I feel no touch
There ain’t no past
There ain’t no fate
There ain’t no thoughts
There ain’t no rules
Spoken words
Broken hearts
Instant dreams
Just let it slide, wasting time Just keep it going and going Just let it slide, wasting life
Just keep it rolling and rolling Just make it loud, in your room Just make it loud, no one cares And just let it slide

(「Salamander」(2006))

サビは踏んでそうですが、平歌は厳しいですね。「ヒップホップだから踏まなくて良いんだ!」とはなりません。Nirvana も OASIS も rhyme しています。英詞ではやはり、韻を踏んだ方が良さそうです。

では日本人の書いたラップ以外の英詞 (できればメジャーな曲) で、韻を踏んでいるものはないのでしょうか? もちろんあります。坂本龍一「The Other Side Of Love」(1997)

in my heart, I know I must be right
darkest shadows will someday come to light
I’ve been down, but I can rise above
I keep searching for the other side of love

さ、さすが教授・・・、分かってらっしゃる・・・!

ちなみにポップスだと、ドリカム「WInter Song」(1993) も英詞ですね。

The dusk is gaining ground
Lights flicker all around
And as I walk the lonely streets
The snow is falling ever faster
Looking to the sky, I wonder where you are
The way you came into my life
Filling every day with laughter

Mike Pela という方との共作だそうで、全く踏んでいないかと言われたら、そうでもない気がしますが、ちょっと弱いのは否めないと思います。

さて、日本人の書いた英詞のうち、オリコン上位にチャートインしていた楽曲は韻がけっこう弱い、という説が強まりましたが、ここで改めて、洋楽の歌詞をみてみましょう。

OASIS と同じく、UK ロックの Coldplay。

I used to roll the dice
Feel the fear in my enemy’s eyes
Listen as the crowd would sing
Now the old king is dead, long live the king
One minute, I held the key
Next the walls were closed on me
And I discovered that my castles stand
Upon pillars of salt and pillars of sand

(「Viva La Vida」(2008))

さすが、シェイクスピアと同じイギリスのバンドですね。もう少しみてみましょう。どうせなら同じ UK ロックで、Radiohead 。Radiohead は全員大卒で、OASIS とは違い、インテリ集団です。では、rhyme の方はどうかというと、

When you were here before
Couldn’t look you in the eye
You’re just like an angel
Your skin makes me cry
You float like a feather
In a beautiful world
I wish I was special
You’re so fuckin’ special
But I’m a creep
I’m a weirdo
What the hell am I doin’ here? don’t belong here

(「Creep」(1991))

どうでしょうか? 私にはあまり、きれいに韻を踏んでいるとは思えません。

「Creep」が例外なのかもしれません。代表曲なのに? 念の為、もう 1 曲有名な「No Surprises」(1997) の歌詞もみてみましょう。

A heart that’s full up like a landfill
A job that slowly kills you
Bruises that won’t heal
You look so tired, unhappy
Bring down the government
They don’t, they don’t speak for us
I’II take a quiet life
A handshake of carbon monoxide

やはり韻が弱いと思います。

調べてみると、Radiohead はあまり韻を踏まないようです。

インターネットの上、Reddit なのが情報源として心許ないのですが。

では Radiohead が例外なのでしょうか? 私は高校生で日本語ラップは韻を踏んでいるんだということを知りました。さらに大学生の頃 Nirvana や Jeff Buckley を自分でもコピーして歌い、ラップじゃなくても洋楽だったら韻を踏むのだな、ということを知りました。

正直言って、Radiohead の詞はそこまで真剣に読んではいませんでした。ここに白状します。

「洋楽だったら韻を踏む」というのは、私の思い違いだったのでしょうか。

もう少し調べてみました。

によると、Leonardo Cohen「Suzanne」(1967) は、韻は弱いそうです。「Suzzane」の YouTube の再生回数は 1000 万回以上。マイナーな曲ではありません。ていうか私がカバーした Jeff Buckley「Hallelujah」の原曲は Leonardo Cohen です。「Hallelujah」(1984) ではあんなにきれいに韻を踏んでいたのに。

I heard there was a secret chord
That David played and it pleased the Lord
But you don’t really care for music, do you?
Well it goes like this the fourth, the fifth
The minor fall and the major lift
The baffled king composing Hallelujah

どうして・・・。

なお「When Songs DON’T Rhyme 〜」では、Leonardo Cohen 以外に、

  • Paul Simon「America」
  • Radiohead「Karma Police」
  • Sting「Fields Of Gold」

などが、rhyme していない楽曲として挙げられています。

ここでも Radiohead が。Radiohead 、どんだけ韻を踏まないんだ。

どうやら、洋楽だったらラップじゃなくても韻を踏む、には、例外があるようですね。もちろん、韻を踏むのがふつう。洋楽だったらふつう、ラップじゃなくても韻は踏む。韻は踏むもの。

けれども一部、例外がある。

Radiohead みたいなインテリでも、Leonardo Cohen みたいな詩人でも、韻を踏まないときがある。

となると気になってきました。

そもそも英語に、韻を踏まない詩があるのでは?

そこで調べてみたら、あるんですね。私の不勉強で大変お恥ずかしいのですが、blank verse というのが。

blank verse というのは、私もこの記事を書くために初めて知ったので、詳しくは上記 URL など、参考にいただきたいのですが、例えば日本語のサイトだと下記。

英語にも rhyme のない詩は存在するんですね。

おそらく詩に親しんでいる人には常識でしょうね、無韻詩。

自分の無知を思い知らされたというか、詩の奥深さを改めて感じました。

むしろ英語の無韻詩の存在を知ったことで、詩に対する興味ががぜん湧いてきましたね。

Lenardo Cohen や Radiohead は、むしろインテリ過ぎて韻を踏まない歌詞を書いたのかもしれません。

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