プロモーターさえ気付かなかった、DJ Shadow が未来的すぎた理由

昨年の大晦日、amass が公開した DJ Shadow に関する記事が、ネット上でちょっとした話題になったりしてます。また、250円棚なんかも関連した記事を公開しています。

英文で読める記事ではコチラが参考になるかと。

で、DJ Shadow のスタッフによるミックスの説明とかですね、「強制終了」したクラブ側の釈明とかはですね、上記記事にお任せするとして、どういうふうに「未来的」だったのか。この点を当ブログでは、勝手に解釈したいと思います。

さて、問題のミックスは、DJ Shadow の soundcloud からダウンロードできます。

では、聴いてみましょう。とりあえず、「強制終了」された30分まで聴きますか。

えー、男性の声のサンプリングに続いてですね、ビートが入ってくるんですが、コレ、スゴいです。何がスゴいのか。BPM が違う。

BPM というのは、1分間にビートが何回鳴っているのか、っていうのを表すものなんですけれども、コレを合わす、というのは、DJ 初心者にとっては最初の難関というか。特にアナログ・ターンテーブルだと。今だと、 PCDJ とかだったら、ボタンポン押しで BPM 合っちゃうらしいですね(笑) それ面白いんかな〜、と思うんですが、まあ、その辺は置いといて、とにかく。DJ にとっては、BPM を合わすのは、必須。BPM 合ってなかったら踊れない。みたいな。そういうですね、表立った了解があるわけです。あ、ロック DJ とかはですね、あんーま或る曲と別の曲の BPM を合わせるとかですね、そーいうのはしないんですが。ワタシはロック DJ の良さは理解できません(泣)

で、ミックスです。いきなり BPM 合ってません。DJ として最低限守るべきマナーとしての、「BPM を合わせる」というのが、冒頭で無視されてます。例えば、シンセと、ハイハットとかの BPM がズレています。またさらに、これに加えて、異なる BPM のシンセが入ってきています。なお、拍子自体は、別に複雑な変拍子を刻んでいるわけではありません。ではソレで、めちゃくちゃに聴こえるのか、っていうと、めちゃくちゃに聴こえない。むしろクール。最高にカッコいい。

もっと聴き進めましょう。1度音が止まります。そして次の曲が始まります。コレもなかなか、DJ としては勇気のいるプレイです。DJ は音を止めてはいけません。DJ は曲をつなげるからです。DJ と DJ が交替するときにさえ、如何にスムーズに、曲を止めずに、交替するか、しかも BPM を合わせて。というのが、大原則です。しかし DJ Shadow は、このミックスの中で、曲が変わることがはっきり分かるように、一度音を止めました。そして音が止まった後・・・、ようやくシンセとハイハットの BPM が合ってきました。しかし、ところどころ SE 的に挿入される音は、やはり BPM がズレたままです。

んで、また音が止まって、今度は BPM は或る程度合ってるんですけど、ヨレてるというか。シンセのアクセントやスネアのアクセントが、拍子のジャストに対して、相当後ろにきています。で、ところどころやっぱり、BPM がズレてます。ビートとヴォイス・サンプリングとか。そういうのが。で、また音が止まって、今度はそれまでと全然違う BPM です。DJ というのは基本的に、1つのミックスの中で BPM を極端に変えたりしません。そうすると踊り難い、とオーディエンスが考えているからです。でも、DJ Shadow は、このミックスで、曲が終わるタイミングで音を止めることがある(毎回ではありません)上に、前の曲と次の曲の BPM を合わせていない、という、通常では考えられないプレイを平然と、クールに、最高にカッコ良く。やってのけっています。というのが、30分間続くのです。

音律的には、あまり凝ったカンジではありませんが、やはり、あまり調性を重視せずにミックスされている、ということで、結果的に相当不協和になったりですね、そういうところがカッコ良かったりします。しかしこれはあくまで「偶然」であり、聴いた限りでは、DJ Shadow が狙って「不協和音」を鳴らしているようには思えません。

音響的にも、すげー発明みたいなのはあんまなさそうです。何と言うか、2000年代前半に流行したエレクトロニカ的なシンセと、80年代風の薄っぺらいリズムマシーン風のスネアとかが基本で、そこにキツくディストーションがかけられたりとか。そういう感じです。何かこう書くと、 Prefuse 73

みたいですが。まー、んー、確かに似てるかもですね。

えー、最後、30分近くになるとですね、それまで割とエレクトロニカ風だった音色から、いきなりロック×ドラムンベースみたいな、かなりエッジィな音色になります。コレーはかっこいいな〜、しかもまた楽曲の途中で BPM 変えてるし、、、もう、反則ですよね・・・。

26分過ぎた辺りで、2秒くらい音が止まります。この2秒。この2秒もまた、通俗的な「DJ」にはあり得ません。DJ にとっての2秒の静寂は、永遠に等しい長さです。嘘です。そんなに長くなかった(笑) そして、第2部みたいな。それまでとはまた違った、割と BPM のズレなんかが少ない、けど、ビートはヨレまくっている、っていう、そーいうヒップホップへ移ります。あ、BPM が倍転しましたね。倍転というのは、2倍になる、ってことです。BPM が 70 だったら、140 になる。コレは割とフツーのプレイです。

はい、30分経ちました。で、そこで。やはり面白いのは、リズム、もそうですけど、BPM ですね。では、どういった点が「未来的」だったのか。まとめてみましょう。

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1. ポリ BPM

音楽用語に、「ポリ〜」というのがあります。ポリフォニーとか、ポリリズムとか、そういうやつですね。コレには、複数の、という意味がありあます。例えばポリリズム。ポリリズムには、複数拍子、という意味があります。例えば1/4拍子と1/3拍子が、同時に鳴らされる。パフュームの〈ポリリズム〉という楽曲がありますね。この楽曲の間奏部分は、バックトラックとコーラスがポリリズムになってます。あと、ダンスも。スゴいっすよ、コレ。バックトラックに対してダンスがポリリズム。並大抵の女の子にゃーできません。ただ、中田ヤスタカの音楽って、メロディーとコードが単純過ぎて、何か童謡みたいに聴こえちゃうんですよね・・・

あ、パフュームの話じゃないっすね。DJ Shadow です。DJ Shadow のこのミックスは、異なる BPM が同時に鳴らされています。ポリリズムの場合は、拍子は異なれど、BPM は同じです。DJ Shadow は、拍子は同じ、しかしヨレているビートを、異なる BPM で、同時に鳴らしているのです。言わばポリリズムならぬ、「ポリ BPM」状態。先述の通り、DJ にとって BPM は言わば命。BPM を合わせられぬ者、DJ にあらず。というふうにですね、非常に BPM には厳しかったりするんですが、Shadow はそんなのドコ吹く風。全く異なる BPM を、同時に、フツーならめちゃくちゃになるところを、カッコよく、クールにミックスしているのです。なぜ、BPM が合ってないのに、まとまって聴こえるのか。ワタシには現時点では分かりません。また別の機会に分析してみたいですね。

2. BPM の変化

何度も言っている通り、DJ にとって BPM を均一に保つ。というのは、最低限守るべきマナーみたいなものです。確かに、プレイを盛り上げるために合えて BPM をぐんぐんアゲていく、っというのはテクニックの1つとしてあります。しかし、そういうのは特殊な例です。あくまでアゲるため。しかし Shadow はこのミックスで、盛り上げる/盛り上げないに関わらず、次にかける曲の BPM を合わせてなかったりします。おそらくは意図的に。しかし、違和感はありません。

3. 音を止める

BPM を均一に保つ。これは DJ にとって最低限守るべきマナーですけれども、例えば、ロック DJ なんかは、そんなの気にせずガンガン曲をかけます。とにかく、音を止めない。つなげる。しかし Shadow は、曲を止めます。長いと2秒もの無音。効果的に無音を用いる、というのは、DJ にとっては非常に勇気のいる行動です。テクノ DJ が、曲の途中で、盛り上げるためにわざと曲を一瞬止めたりします。しかし Shadow は、盛り上げるようなタイミングでも、曲の途中でもなく、無音状態を生み出します。コレもフツーの DJ ではありえません。しかし、やはり違和感はありません。

4.でも、ミニマル

1〜3をまとめると、かなーりハデな DJ かと。音源を聴かずに文章だけ読むと、BPM は合ってないし、曲毎に BPM 変化するし、しかも途中で音止めるし。みたいな、そーいう DJ というのは、例えばロック DJ なんかはそうなんですが、かなーりハデな、アゲアゲな DJ に思ってしまいます。しかし、(非常に抽象的な言い方で申し訳ないんですが、)グルーヴはミニマルです。つまり、大きく展開するような進行は少なく、ゆっくり、繰り返されるビートが、押し寄せ、変化し、少しずつ、少しずつ、でも、ダイナミックに・・・、というふうに、決して調和されなそうな2項対立が、このミックスでは見事に、まさに「ミックス」されています。

と、いうことで、ポリ BPM、BPM の変化、無音。こうした非常にですね、フツーの DJ に対して挑戦的な DJ。というのは、イマまであんまなかったんじゃないんでしょうか。こういう点で、DJ Shadow は未来的すぎたのです。・・・と、話はココでは終わりません!

5.プロモーターさえ気付かなかった、DJ Shadow が未来的すぎた理由

全く合ってない BPM 、そしてディストーションのかかった不穏なシンセ、さらにこれに挿入される、不協和な SE。と、こう書けばまるで騒音です。騒音、そうです。騒音と言えば騒音音楽、騒音音楽と言えば騒音楽器イントナルモーリ。イントナルモーリと言えば製作者であるルッソロ Luigi Russolo 。そして、そう。ルッソロとは、イタリア未来派に括られる、20世紀前半に活躍した偉大な芸術家です。



イタリア未来派のルッソロは、1913年に、「騒音芸術」という声明文を出しました。1913年から数えでちょうど100年にあたる昨年、DJ Shadow は、未来派か? と思われても仕方ないような、そーいう DJ をしてしまった。DJ Shadow の問題のミックスは、ヒップホップ、エレクトロニカ、そして DJ、という、20世紀の終わりに隆盛したポピュラー音楽を吸収した上でアップグレードされた、イタリア未来派の音楽なのです。未来派は、1920年代以降、イタリア・ファシズムに受け入れられます。そして、戦争を「世の中を衛生的にする唯一の方法」として持ち上げます。プロモーターは、この点を、自覚のないまま嗅ぎ付けた。「あかん、コイツ、イタリア・ファシズムや、やめさせな!」プロモーターの無意識が、プロモーターにこう命令したに違いありません。そして———、DJ 中にプレイを強制終了させられる。という、非常に悲しい事態が起こったのでしょう。

って、んなこたーないんですが(笑) いやー、かっけぇっすね、Shadow のこのミックス。後半、ストップされた以降って、何でしょう? スタジオで1人でコツコツ作ったんでしょうか? それもそれでちょっと悲しいですが(笑)

あ、あとですねえ、やっぱその、一流の DJ のミックス、ミックスっていうかもうほとんどコレ、原曲の原形をとどのめてないので、或る意味「ニュー・アルバム」みたいな。そーいう捉え方をしても良いと思うんですけど、そーいう音源がですね、インターネットで無料配信されて、しかもダウンロードできる。しかもしかも公式に。っていうのはですね、かなり未来だなー、って思いますね。


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