とにかく語らせてくれ! Chance The Rapper『Coloring Book』がヤバ過ぎる 10 の理由

先週金曜に, ほぼ予告通り, 無事リリースされた Chance The Rapper のソロ新作『Coloring Book』.

ヒップホップ史上, 最高の作品かもしれない. Chance The Rapper『Coloring Book』
ついにでました!!!!! 先月からアナウンスされていた Chance の新作, タイトルは『Coloring Book』!!!!! ...

定期的にレビュー記事を書いていると, どの作品に対しても最高以外の言葉が思い浮かばず, なんて貧弱な語彙なんだ, と自分に笑えてくるのですが, そんな残念な感じも全く気にならなくなるような, 最高を超えて上昇するような, まあ, いまんとこリリースされて 3 日経ったけど, これしか聴いてません!

こんなに 1 つの作品を経験し続けるのは久しぶりです. ストリーミングでうんたらな聴き方が主流になったいまでも, やはり, 繰り返し聴くことができる, というのが, よさのある, 新しい音楽の基準になるんだなあ, というのが確認できました.

と! ( ? ) いうことで!( ?? ), Chano のこの最高の作品がどれだけヤバいのか, わたしは Chano を『Acid Rap』をリアルタイムで知って以来追っかけてるんですがそういう贔屓目的なのを抜きにしてどれだけヤバいのか.

うまい具合に文章にできればいいんですが, そんな力量はないし, そんな余裕を持たせないほどカッコいい作品なので, 箇条書きで 10 コくらい列挙します. まだ聴いてないヤツは絶対聴くべき!!!!! これはホント, ヒップホップ史上, 最高の作品かもしれない!!!!!

目次

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あくまでいままでの作品の延長線上, 進化系

そう, このミクステがいかに最高の作品だとしても, Chano のいままでの作品を丁寧に追っていれば,『Coloring Book』があくまでいままでの作品の延長線上にあるということが分かるでしょう. 『10 day』で鮮烈に耳に刻まれ Chano の代名詞となっている「IGH!」,

グルグル回るパン処理 ( 後述します ), ゴスペル・ジャズなど伝統的なアメリカ音楽の要素 ( 後述します ), 現在形のベース・ミュージックを貪欲に取り組んでいく要素 ( 後述します ) などなど, いままでの Chano の, そして Chano が関わってきた音楽作品の要素がすべてぶち込まれつつ, あ, カネかかってんだな, 的な感じで最新系にアップデートされてます!

ゴスペル的な要素? 前からあります!

耳を奪われやすいのは, ゴスペル的な合唱でしょう. しかしこれで以って, Chano がただのラッパーではなく, ゴスペルの継承者だとするのはあまりにも早計です. Chano はあくまでラッパーです. ゴスペルにラップ的な要素を取り入れたのではなく, ラップにゴスペルを取り入れているのです ( ていうかゴスペルを取り入れたラップというのは Chano 以前にもけっこうあります ). かなり大胆にゴスペル的な要素を取り入れてもあくまでラップである, そして Chano の個性 ( いままでの作品の延長線上にあるということ ) が消されていないことが, この作品の魅力なのです.

サイケ! これも進化形

そしてゴスペル的な要素は, パン, ピッチ, ボイスチェンジャー ( オートチューンふくむ ) , ダイナミックレンジ, リバーブなどなどのエフェクトによって, サイケ的に処理されています. 過剰なダイナミックレンジを除けば, どれもいままでの Chance の作品にみられた手法です. たとえば「Good Ass intro」では, コーラスがパンを縦横無尽にかけめぐっていることを聴けます. 『Surf』の諸楽曲では特にその特徴が顕著です. これはアレをアレしているときの音の聴こえ方です. これもまた後述しますが, このアレをアレしているときの音の聞こえ方は, およそポピュラー音楽では正解とはされにくいダイナミックレンジによってさらに強化されています. 要するに Chano はもともとサイケ的で, 『Coloring Book』はその延長線上, 進化形にあるということです.

JUKE 的な要素, あるいはなんとかベース的とかなんとかウェーブ的な要素

Chance の楽曲には, JUKE 的な要素があるのが珍しくありません. 『Coloring Book』も例外ではありません. しかし JUKE 的な要素に加えて, ていうかもともとそうなんですが, なんとかベースとかなんとかウェーブとか, そういう要素もあります. このことは, Chance が単なるゴスペルとかジャズとラップを融合させた音楽家ではない, ということを意味します. サウンドクラウドでは毎日, なんとかウェーブとかなんとかステップとか, なんとかベースとかフューチャーなんとかとか, そういうジャンルのトラックがアップロードされています. そしてそういったジャンル名のほとんどが, 1 年も経たないうちに消えていきます.『Coloring Book』は, そういった消えていく最新のダンスミュージックをポップに取り込んでいるのです.

ループしてないのにラップらしい … !

ラップといえば単純なループのうえでリズムに乗って喋る, というイメージがあります. この, 単純なループのうえで喋る, というのが, ラップの真の魅力であって, 変にトラックに展開があったりするとラップらしくなくなるがセオリーです. ロックの演奏にのせて喋ってもそれはロックで, ラップにはなりません. その他のジャンルもいわんをや. しかし, これも『Acid Rap』からの特徴ですが,

Chano のトラックはどれもしっかり展開があります. にもかかわらず, しっかりラップになっている. ヒップホップらしさがまったく失われていない, と言い換えてもいい.

単純なループではないのになぜヒップホップらしく聞こえるのか, はっきりはわかりませんが, いくつか仮説をたててみましょう. コードに展開がある楽曲ではビートの展開が希薄で ( つまり, ビートのループ性が強くて ), ビートに展開のある楽曲ではコードの展開が希薄 ( つまり, コードのループ性が強い ) のではないか. コードやビートを展開させる, 変化させる代わりに, 音色をどんどん変えて, 展開があるように聴こえさす, しかし実際はループ性がいのではないか. あとはまあ, 鍵盤やホーン・セクションなどのいわゆる「ウワモノ」も含めた, リズムのもたつきに由来するグルーヴとか (「もたつき」とか「グルーヴ」を打ち込みの音楽でどう再現するかについは, また別の機会に書こうと思います ).

まあ, とにかく, ぱっと聴きループ性が希薄に感じるのに, ラップとして成立している, これは本当にスゴいことではないでしょうか.

ダイナミックレンジ

すでに何度かこの記事で「ダイナミックレンジ」という言葉を使いましたが,これは 1 曲目「All We Got」に特に顕著なんですが, 1 曲のなかの音量の上下の使い方が本当に面白い. ダイナミックレンジという言葉の使い方が間違っているのであれば, ていうか多分間違っているんでしょうけど, 1 曲のなかの, 1 トラックのなかの音量のコントロールが面白い. すみません, この辺, うまく文章がつながってませんが, Chano を聴きながらテキトーに書いているからです.

1 曲目「All We Got」の音量, 出だしの Donnie ( たぶん ) のトランペット ( たぶん ) と Chano のラップ, ちょっと音量が小さいな, と思いませんでしたか? わたしだけかもしれませんが, それで, ちょっと音量を上げると, kanye のパートがいきなりデカくでビビって, あ, なんかカッコイイ! てなりませんでしたか? グッときませんでしたか?? わたしはなりました. グッときました. それが, ダイナミックレンジのコントロールによる感動です ( 再々言いますが, ダイナミックレンジの使い方はたぶん間違っています ).

まあ, 細かい話はこの際どうでもいいです. 音量も音楽的な, 音楽的に感動的な, そういう要素になる. それがしっかり分かるのが,『Coloring Book』なのです.

もっというともしかしたら, マスタリングとかこういう感じでえいねん, ていうのを教えてくれる. あとはライブで聴け, みたいな. それが『Coloring Book』かもしれないみたいな. だからさっさと日本に来い!

ちょっと D’Angelo っぽい?

2 曲目, 2 Chainz と Lil Wayne を迎えた「No Problem」, わたしはこの楽曲の「If one more label try to stop me It’s gon’ be some dreadhead niggas in ya lobby」ていう歌詞が本当に好きなんですが笑, この楽曲はかなりループ色が強いんですけど, そのビートが, ファンクっぽいというか, ちょっと D’Angelo っぽいところあるかな, て思います.

特にスネアのもたつき具合, そしてそれを「しつこく」繰り返してるところとか.

完全にゲストを Chano 色にしてる笑

今回, ていうかいつもですが, Chano 関連の作品の客演はかなりけっこう多彩で, 客演それぞれが濃ゆいミクステをリリースしているんですが, Chano の作品ではその良さが良い意味でも悪い意味でも消されているというか笑 完全に客演を Chnano 色に染めています! ただ,「No Problem」 の 2 Chainz はカッコイイ! そして,

けど「MIXTAPE」では Young Thug と Lil Yachty に負けてます笑

『Surf』でもそうだったんですけど, とにかくアクの強いラッパーを客演に迎えて, 自分色に染める Chano . しかし『Coloring Book』の「MIXTAPE」では, 客演の Young Thug と Lil Yachty に完全に負けてます笑 特に, 今年かなりの勢いのある Lil Yachty がミクステに参加しているのが本当になんか「いいな〜」て感じで笑, それでなんかこう, Yachty の楽曲に Chano が参加したみたいな, そういう感じになっている. のがもうとてつもなく「今」って感じで最高です.

これが無料とか, やめてほしい笑

『Surf』のときにも思ったんですけど, これを無料で配信されたら, 他のポピュラー音楽家もみんな無料でリリースしなくちゃいけなくなるんじゃないですかね笑


と, いうことで. かなりノリと勢いだけで書いたので, しっちゃかめっちゃかですが!

以上のように思えば, 『Coloring Book』は, Chano の最新系とか, ポップミュージックの最新系とかではなく, いままで Chano のなかにあった要素が,『Acid Rap』や『.Wav Theory』,『Surf』, そして数多の客演での成功を通じて, 制作費をさらに強力になっただけだ, と言うことができるかもしれません.

そうであるなら! 驚くべきことは!! Chano のなかにもともとあった音楽的元ネタが, 最高で最新の音楽だった, ということです!!!

などといろいろ御託をならべてみましたが,『Coloring Book』がテン年代のラップの, そして次の 10 年のラップの指針となるべき恐ろしい作品であることに間違いはありません. とにかく『Coloring Book』を聴き続けましょう! いまわたしたちが聴けるのは『Coloring Book』しかなく, 『Coloring Book』が聴けなくなったとき, 次のポピュラー音楽がみつかるでしょう.

追記 (2018 年 8 月 20 日)

ついに実現した Chance The Rapper 来日公演 @サマーソニック 2018 ! 日本初ステージとなるサマソニ大阪のライブを観て来ました! 余韻の冷めないうちに一気に書き上げたライブレポートはコチラ


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