「 音楽学 」一覧

音楽とモビリティ: ナショナリズムの超克

音楽が特定の国や文化に根ざしていると考えられる一方で、人や物、概念の移動によってその音楽がどのように影響を受けるかという視点は、従来の音楽学や民族音楽学においてはあまり注目されてきませんでした。しかし、近年の研究では、音楽の移動性(モビリティ)とその国際的な交流が音楽文化にどのような変革をもたらすかが重要視されています。本記事では、マイケル・ホールデン、ピーター・エイディ、ベス・スナイダー、ノーベルト・メイン、ニルス・グロシュによる論文「Mapping Musical Mobilities: Challenging Musical Nationalism through Mobility and Migration」(2024) を紹介し、音楽のモビリティとナショナリズムの関係について詳しく解説します。

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日本各地の「はないちもんめ」: わらべうたの地域性を探る

日本人なら一度は聴いたことがあるだろうわらべうた「はないちもんめ」。子供の頃に遊んだことがある方も多いのではないでしょうか。では、この「はないちもんめ」が地域ごとに異なる特徴を持っていることはご存じですか? 今回は、わらべうた「はないちもんめ」の地域的特徴とその意義について、詳しく解説した学術論文・本野洋子「わらべうた『はないちもんめ』の地域的特徴の比較から見えてくるもの」(2024)をもとに紹介します。

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歌詞の物語構造: テキスト分析に基づく音楽ジャンルごとの特徴

音楽の歌詞に込められた物語構造とはどういうことでしょうか?音楽は単なるリズムやメロディーの集合ではなく、歌詞を通じて物語を紡ぐ重要なメディアでもあります。今回紹介する学術論文は、歌詞がどのように物語のアーク(Arc of Narrative)を形成し、リスナーにどのような影響を与えるのかを詳細に分析しています。

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音楽人類学で読み解く西洋音楽の「ローカル」な特性

西洋音楽史における作曲家たちの生涯や作品分析は、多くの学術書で綿密に掘り下げられています。しかし、これらの音楽が生まれた文化的・社会的な背景については、従来の音楽史研究ではあまり深く触れられてこなかった部分があります。この点において、音楽人類学は新たな視点を提供します。音楽人類学は、音楽を単なる芸術の形式としてではなく、それが生まれ育った文化の一部として捉えることを促します。では、このアプローチは具体的にどのような洞察をもたらすのでしょうか? 吉岡政憲 「音楽史・音楽学・人類学: 西洋音楽史研究としての音楽人類学」(2024) を参考にこの点について検討します。

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音楽と生態学: リチャード・パワーズの小説を通じて

音楽と生態学、この二つの分野は一見すると関連性が薄いように思えるかもしれません。しかし、音楽が人間の感情や社会に与える影響を考えると、その力は計り知れません。一方で、生態学は我々の生活環境や自然界の維持に不可欠な学問です。では、これら二つを結びつけるものは何でしょうか? この疑問に答える手がかりを、リチャード・パワーズ Richard Powers の小説を通じて探ります。

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