Black Eyed Peas『The E.N.D』

  • The Black Eyed Peas – I Gotta Feeling

ポップミュージックの定義は非常に難しい。

「ポップ・ミュージックは地域性を失った民族音楽である」、というポップミュージックについての定義がある。でもこの定義は、考え直す必要があるだろう。というのも、地域性のない都市から発生した(だから、ポップミュージックの範疇であると考えられる)アンダーグラウンド音楽の中には、「ポップ」であると言い難い音楽があるからだ(「ポップミュージック」という言葉と「ポップ」という言葉の関係は、とりあえず別の機会に譲る)。

また、(これは文献で見かけたことはないのだが・・・、こういったことを書いてある文献を知っている方がいたら、教えてください)「ポップミュージックは学術的な教育を受けていない者が作る音楽である」という定義も可能かもしれない。この定義は、まぁ、様々な反論が予想できるという時点で既に破綻しているのだが(笑、例えば、専門学校は学術的なじゃないんかい、とか、最近は大学でもポップミュージックの作曲教えてるやんけ、とか、そもそも学術的と非学術的の区別はなんじゃ、こら! とか、うんたらかんたら)、先ほどのアンダーグラウンド音楽を考えた場合、やはり考え直す必要があるかもしれない。

例えば、2009年現在、クラブで流行している(俺はあまり好きじゃないのですが)、いわゆる「バキバキのエレクトロ」なんていうのは、そこら辺の「クラブミュージック=DJ KAWASAKI」みたいなOL(あぁ、なんて酷い言い方・・・)にとっては、決してポップではないだろう。

では、先ほど挙げた2つの定義が見落としてる、ポップミュージックの範疇に含まれつつ、ポップミュージックの範疇からはみ出す、アンダーグラウンド音楽の特徴とは、一体どのようなものか。

「若者」という(途方もないほど漠然とした)言葉に集約されるだろう。つまり、音楽がスゴく好きなんだけど理論書の理の字も読んだことのない若者が、なんか良くわからんけど音楽をボヤーっと、

ギター弾いたりサンプラーいじったりしながら、新しい音楽って何だろうね、って、ボヤーっとかつ真剣に作っているうちに生まれた奇異な音楽。つまり、「若者が感覚的に試行錯誤して発明した」音楽。

こういった音楽が、アンダーグラウンド音楽にはたくさんある。そして、その中からちょっとした、若者の間だけのムーブメントが起こる。先に挙げた「バキバキのエレクトロ」なんていうのは、

エグザイルを聴いてるOLやグリーンに夢中な中高生にこそ受けないが、また、チャートにこそ載らないが、だから、通俗的にはアンダーグラウンドで売れているとは判断されないが、1つのムーブメントとして、音楽好きを自負している若者の間では、流行っていると言えるだろう。

そうなると、「ポップ・ミュージックは市場に迎合した音楽である」、という(まあ、考えてみたら至極当たり前な)定義が、案外しっくりくる。

そして、ここ1、2年で、エレクトロのなかにも、ずいぶん 市 場 に 迎 合 し た という意味でのポップなものが出てきた。

なぜ、延々とポップミュージックの定義を述べてきたかというと、Black Eyed Peasの『The E.N.D』が、2009年現在において「市場に迎合した」エレクトロの決定打だと思うからだ。

これは、決して悪い意味ではありません。《The E.N.D》は、Will i amの 市 場 に 迎 合 させるという 才 能 がいかんなく発揮された作品、ということだ。《Monkey Business》以降の、Willの「市場の迎合」させる 才 能 、黒人特有の 何 も 考 え て い な い ハッピーなダンスミュージックを作る 才 能 は、もっともっと音楽を真剣に聴いていると自負しているリスナーに評価されるべきだ(今や説教垂れるオッサンというレッテルを押されてしまった Nas が、〈Hiphop Is Dead〉

  • 「Nas – Hip Hop Is Dead ft. will.i.am」

で Will を客演に迎えたことの理由・・・)。つまり、(今さらなのなのだが、)Willは一級の「職人」なのです。

何だかやたら長くなってしまったが、《The E.N.D》は、ここ1、2年でテクノ・ハウス(だから、4つ打ちのクラブ音楽)分野以外でもどんどん浸透している、エレクトロをポップ・ミュージックとして、誰もが体を動かしてしまうダンスミュージックとして、見事に昇華させた傑作である。

“I Gotta Feeling”、「今夜は良い夜になりそうだ」。アルバムのリードトラックのリリックで、Will はこう歌う。このリリックから、Will の自分自身のヒップホップ界での立ち位置、ひいてはポップミュージック界での立ち位置が、ビシビシ伝わってくる。

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