BAD HOP が解散ライブを東京ドームで開催する。とアナウンスされたとき、東京ドームか、確かにスゴいけどな、絶対に行きたいか、と言われたら …、どうだろう、確かにフジロックでのパフォーマンスはカッコ良かったけれども。
しかしさまざまな情報を見聞きするうちに、
- 日本のヒップホップ・アーティストで東京ドーム単独公演は初めて
- ヒップホップ・アーティストのライブでは客演多数。ということは、あのレジェンド級ラッパーが東京ドームに立つ姿を見られるかもしれない。
- ということは、単に BAD HOP が解散ライブをする、ていうだけではく、日本のヒップホップの歴史的集大成、つまりは伝説のライブになる … !
と確信し、一般発売中だったチケットを入手。
私がチケットを購入して割とすぐその後に売り切れたので、「本当に東京ドームをソールドアウトにしたんだな」、と驚きました。
確かに、このBAD HOP東京ドームでの解散ライブへのプロセスは一筋縄にはいかなくて、一悶着も二悶着もあったわけですが。
そんな中、一般発売が始まっても売り切れる様子はなく、客演も発表されなかったので、「本当に東京ドーム公演、大丈夫なのか!?」と一抹の不安も抱えていました。平日開催だし。
当日はそんな不安を表すかのような雨。
15:40 頃、東京ドーム着。開場は 16 時、開演は 18 時。
水道橋の駅を過ぎると、「俺がワイザー」みたいな顔のあんちゃんが増えて、バイブスが上がってくる。
そして会場となる東京ドームに着くと、人、人、人。人ばっか。
あ、本当にこれだけの人が、平日にもかかわらず、BAD HOP の最後を見届けにきたのだな。と実感。
とりあえずグッズ売り場に並ぶものの、グッズは、ほしかった T シャツ系はほぼ売り切れ。仕方ないから 9,000 円のベースボールシャツを買いました。
16 時を 10 分、20 分を過ぎたくらいに、開場。ゆっくり進む。やっぱりスゴくたくさんの人。
初東京ドームだったのですが、会場に入ると、まずその広さに驚きました。圧巻。座席は全席指定席で、私の席はいちばん後ろから2列目でした。こんなに後ろの後ろの席で、小さくしか見えないのに、満足できるのかな、とここでもまた不安になったのですが。ちなみに結論から言うと、本当に素晴らしい公演だったので、後ろの席でも全く問題なく楽しむことができましたね。
せっかくなので東京ドーム内を散策して17 時過ぎ。開演まで約1時間。水分も摂り、お手洗いにも行ったので、おとなしく待つことに。
18 時過ぎ。開演定刻を少し過ぎて、安定、いろとりどりの鋭い光線、照明演出、野球場に響く重低音、登場する 8 人。
最高に、カッコいい、川崎の不良グループ。
それから 2 時間半。
ヒップホップが好きで良かった
なんかもう、ヒップホップが好きで良かった。
めちゃくちゃカッコよかった。
感動した。
感無量ですよ、ほんと。
日本で、ヒップホップをずっと聴いてきて、日本語ラップばかり聴いてきたわけではないし、どちらかというと洋楽のアングラ・ヒップホップを中心に聴いてきたけど。
それでも、日本語ラップの魅力にも気付けて、いろいろ聴くようになって、ていうふうに、日本でヒップホップを、聴いてきたわけです。
一時期、DJ もしてたし、GAME や family で。ゼロ年代、B 系の友達もいたし。
そういうふうに、ヒップホップと付き合ってきた、日本で。そんな人たちにとって、BAD HOP の解散ライブは、日本のヒップホップの歴史的集大成になったはず。
そして同時に、未来も感じずにはいられませんでした。
BAD HOP の東京ドームでの解散ライブは、未来を切り開くためのライブでした。
解散ライブへ向けての騒動とチケットの売れ行き
前述の通り東京ドームでの解散ライブ発表以後、一悶着も二悶着もありました。
でもあんなのは、ぜんぶ、所詮ネット民がごちゃごちゃ言ってただけ。
「guidance」だって言ってみればサービス精神。
来てみろ、現場に。スゴいことになってたんだから。マジで。50,000 人。マジで埋まってたんだから。
あの場の熱量を、リアルに体験すると、もうほんと、SNS とか YouTube のコメ欄でごちゃごちゃ言ってるやつ、そっちの方が少数派で、大したこと言ってなくて、ていうのが分かるから。
あと「guidance」が生まれるきっかけになった楽曲もありましたよね、もうね、ああいうのもね、あれも蓋を開けてみると大したことなかったというか、今となってみれば。あの騒動が東京ドームのプロモーションになったのか、というと、なってない。確かに客観的に測定できてないから本当のところは分かりませんが、肌感で分かる。あんなビーフなんてなくても東京ドームは売り切れてた、て。
ヒップホップとは何か、が体現された一夜
そしてソールドアウト、超満員の東京ドームで目撃したのは、まさに、「ヒップホップとは何か」。
何せ最後、「Kawasaki Drift」、あのテン年代ジャパニーズ・ヒップホップを代表するパンチライン、「川崎区で有名になりたきゃ」、50,000 人が叫んだんだから。
マジ、あのフレーズ、意味不明ですよね。ふつうに考えたら。
「川崎区で有名になりたきゃ 人◯すかラッパーになるかだ」
て。意味分からないんですけど、そんな意味不明なフレーズを 50,000 人が同時に叫ぶなんて、それこそ音楽の力だし、それこそヒップホップなんですよね。
要するに言葉では伝わらない何かがあって、それが音楽、てことだし、既存の音楽の枠組みでは説明できない、だからヒップホップ、てわけ。
だからヒップホップはヒップホップ、ていう概念だし、ヒップホップっていう概念においては、「人◯すかラッパーになるか」ていう日本語を 50,000 人で合唱するし、それを音楽として成立させるし、しかも読売巨人軍由緒正しき東京ドームで、何だっら川崎市長も味方なのだ。
ジャパニーズ・ヒップホップの正統派の系譜: BAD HOP
そして。同時に。BAD HOP がジャパニーズ・ヒップホップの正統派である証拠。それが多数の客演。
Zeebra が、漢が、Seeda が、Anarchy が、ラストアルバムに客演して解散ライブでも共演。もうね、このね、この光景。マジで。漢と、Zeebra が。東京ドームに立ってる。特に漢はね、本当に。感動しました。漢が東京ドームに立ってるよ、てことで。
解散ライブなのに攻めまくり。解散ライブで新曲を初披露とか? どういうこと? ていう。T-Pablow と Zeebra の新曲はね、初めて聴いてもさすが Zeebra 。US 的なフロウへの憧れをしっかり表現しつつ、日本語としてもスッて入ってくる、本当にお手本になるラップ。
そのスキルにも、リリックの内容にも感動しましたね。
全盛期で解散する意義
もう本当に、ここ数週間なのか数ヶ月なのか、BAD HOP の盛り上がりはまさに最高潮というか、いまが全盛期だった。
確かに騒動もあったけど、それすら結果的に勢いにして、キャリアでいちばんカッコいいタイミングで東京ドームに立って、解散した。
これは何を意味しているのかというと、結果的に、各メンバー、個人の今後のキャリア形成につながったと思う。
YZERR と T-Pablow が中心のグループではなく、川崎出身 8 人の最高にカッコいい不良チーム。Abema の番組「1,000 万円生活」でも、1 人 1 人の個性がしっかり描かれたし。今のタイミングで解散することで、個々のメンバーの動向は今後も注目されるだろうし、それが、日本のヒップホップ界のさらなる発展につながるはず。
歴史を目撃した
「Kawasaki Drift」の最後の Hook が終わり、20:30、終了。アンコールなし。
もう本当に、歴史的な瞬間を目にした。
大満足。
そう言えば酒は売ってませんでしたね。たぶん、酔っ払って客が騒ぐのを予防するためでしょう。
そしてほぼ定刻通りに始まり、ほぼ定刻通りに終わる。完璧。エンターテイナーとしてお手本。ヒップホップだから、悪そうなヤツだから、時間にルーズだったりして良い訳ではないですから。その辺もちゃんと守れるからこそ、実現した東京ドーム公演。そしてヒップホップ・アーティストが単独で東京ドームでソールドアウトしたという事実は、日本のヒップホップのさらなる発展につながると思いますね。
いやもう、そんなことあんなこと考えて、もうずっと感無量で、なんかも言うけど、マジでヒップホップを好きで良かった、て。そう心から思えた BAD HOP 解散ライブ @東京ドーム、最高でした。