3 期放送直前! アニメ『ゆるゆり』1 期・2 期楽曲 勝手にベスト 50 ( 5〜 2 位 )

10 月よりスタートするアニメ『ゆるゆり』3 期. 『ゆるゆり』は, 純度の高い百合作品であると同時に, 卓越したユーモア性を併せ有つクオリティの高い作品ですが, アニメ関連でリリースされる音楽もまた作品に負けじと劣らず高クオリティです. わたしは, 『ゆるゆり』がきっかけでアニソンの世界を知ったと言っても過言ではありません.

ということで, 前回に引き続き, 現在リリースされている『ゆるゆり』関連のベスト 50, およびそのレビュー, いよいよトップ 5!  5 位 〜 2 位です.

これを書きながら気付いたのですが, なぜ 77 曲にしなかったのかと反省中です. 書き終わったらあと 27 曲追加して, 77 曲ランキングという, いま以上に気持ち悪い何かを書いてやる. いや, 3 期のキャラソン出揃ったくらいのタイミングでいいかな.

本当にするかどうか分からない. と, 宣言をしたところで. 音楽レビューという文章ジャンルの性質上, これ以降は本当に気持ちの悪い駄文が並んでいますので, ブラウザを閉じていただけると幸甚です.

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5. レッツラブ~でいきましょう♪

もうこの辺になると単に好きで特になぜ好きなのかといった理由がない場合が多く, 書くことがなくなってしまうのだが, それだとレビューもなんもなくなってしまうので, 何か書こうと思う. さて 2 期の OP , 「いぇす!☆ゆゆゆ☆ゆりゆり♪♪」のカップリング曲である「レッツラブ〜でいきましょう♪」だが, タイトルは 1 期 ED 曲である「マイペースでいきましょう」と対になっていることが分かるだろう. 「マイペース」の方は,いま聴くと歌詞の内容があまり物語とつながっているとは言えず, おそらくまだ音楽家が『ゆるゆり』を完全に消化しきれていないのではないか, という印象をうける. 「マイペース」という言葉選びは, 「ゆるゆり」の「ゆる」という言葉からほとんど素直に連想されたのだろう. 対してこの楽曲は歌詞の世界観と, ( アニメ 2 期放送時点の ) 物語の世界観につながりがある. これは, 音楽家が物語を以前に比べると消化できている証拠だ. その結果として, 「レッツラブ〜♪」というタイトルからは,『ゆるゆり』は「マイペース」どころではない, 「ゆる」どころではない, タイトルの一部である「ゆる」によって隠されてはいるがむしろ積極的な百合モノである, という音楽家の気付きを読み取れるだろう. 曲調は, 特にアレンジに注目すれば, 「ハッピータイムは終わらない」から「アタースクールデイズ」の系譜の源流と言える. つまり, ユーロービートやサイバートランスのような耳を悪くさせる系のキンキンのシンセに, ほとんど隙間を埋めるためだけのディストーションギターが印象的な, 高速 4 つ打ちダンスミュージックとロックのミクスチャーだ. アレンジだけを聴くと, それまでのごらく部のレパートリーに比べるとかなり派手な印象を受けるが, 要所要所に「ハイ!」「イェイ!」「オイ!」といったガヤが入っており, それまでの音楽性と地続きであると言える. と同時に, 新たな音楽性を打ち出したと言える. 「ハイ!」「イェイ!」「オイ!」といったガヤも楽しいが, それ以上に楽しく, そして気持ち良いのが, A メロや間奏で挿入される「ウ—————ッ!」というスキャット ( ? ) だ. 『ゆるゆり』は積極的な百合モノではあるが, しかし物語全体としてはリラックスした雰囲気にあふれている ( この点で,『ゆるゆり』の「ゆる」は「ゆるい百合」ではなく, 「物語全体がゆるい」という意味なのである ). この「ウ—————ッ!」というスキャット ( ? ) は, そういったリラックスした雰囲気のなかで背伸びをしたくなるような気持ちを表しているだろう. と同時に, 楽曲のもつ上昇するような, 飛び出していけそうな力を表しているとも言える. このようにリスナーは順調に, 新しさを感じつつもいつも通りにこの楽曲を楽しめるのだが, 2 回めのサビのあと, 最後のサビの前の間奏で, リスナーはクライマックスを聴くことになる. 通常, 多くのアニソンの場合, この間奏部分には楽曲の雰囲気を台無しにするようなギターソロが入る場合が多いのだが, この楽曲の場合は違う. この楽曲では 2 回目のサビが終わったところで, それまでアレンジに彩りを与えていたシンセの音色は影を潜め ( しかしもちろんかすかには鳴っている ), 代わりにディストーション・ギターのコードが印象的に響く. ホイッスルのリズムに乗って. 同時に聴こえてくるのは, ごらく部 4 人による「Y・U・R・U・Y・U・R・I ゆるっゆり!」というチアダンスを彷彿させる力強いコールだ. ここにきてリスナーは, この楽曲のタイトルの「レッツ」が, 何かを応援している, 何かを促しているのではないか, ということに気付く. その応援, 促しの対象はもちろん「ラブ」で, 単純には「一緒にラブをしよう」ということになるのだが, もちろんその「ラブ」とは「百合」のことだ. このように「レッツラブ〜でいきましょう♪」は, タイトルで積極的な百合であることを宣言し, さらに間奏でそれを応援し, 促す, すべての百合ファンにとっての, 百合のための応援ソングなのである. 以上, アレンジとギミックの部分で, この楽曲のもつ物語との関連, 意味を見出してきたが, 筆者が最も耳を奪われたのは, 冒頭から始まるサビのメロディーである. 第 2 音からの順次進行で始まるメロディーは, 聞き手にマイナーを想起させる. 一方, ごらく部の歌唱はあくまでユニゾンによるポジティブなエネルギーにあふれている. このマイナー調のメロディーと, ポジティブな歌唱の対比が, サビの大部分を占めるのだが, サビの最後は下属音から主音への順次下降進行で, つまりこのサビ全体のメロディーは主音へ落ち着く. マイナー調のメロディーと, それに反するポジティブな歌唱はサビの最後で, 主音という安定に解決するのだ. サビにつづくシンセのリフは, また主音から始まり, 第 6 音からの順次上昇を含みながらも, ポジティブなエネルギーに満ちている. こういったことから, このサビのメロディーからは, 『ゆるゆり』の「ゆる」が「ゆり」を修飾する「ゆる」ではないと気付いて「しまった」ことと, だからこそ積極的な百合モノとして受け入れていこう, 応援していこうという決意がうかがえる. なんて書いてみたけど, まあ, こういうメロディーに筆者が弱いということだ. 最後の方は書くことがなくなって, ていうか最初から単に好きなだけなので書くことなんてなくて, 全体的に蛇足も蛇足の文章なのだ, これは.


4. 私、主役の赤座あかりです

既に繰り返し当 50 選で述べた通り, アニソン・キャラソンを楽しむにあたり, 歌詞と物語のつながりは最も重要な要素のうちの 1 つだ ( さらにその歌詞を音が表現しようとしているなら, ほぼ完璧である ) . この楽曲「私、主役のあかりです」は, 『ゆるゆり』のキャラソンのなかでもそのつながりが非常に巧く機能している部類に入る. 歌詞と物語とのつながりと言ったとき, それは歌詞が, キャラの特徴を表している場合や, あらすじを表している場合などがある. この楽曲では, あかりというキャラの特徴が見事に表されている. ただ, あかりのキャラと言っても, 原作とアニメ, そして原作初期と現在, あるいはアニメ 1 期・2 期・OVA で変遷がある. この楽曲が見事に表しているのは, アニメ 1 期でのあかりのキャラだろう. なおユルユリアンのなかには, アニメ 1 期・2 期における「いじめ」ともとれるあかりの扱いに不満を持つ者も少なくない. しかし一方で, あかりのあの扱いがあってこそ, 『ゆるゆり』がここまで人気を集めたと, 筆者は思う. 楽曲の特徴をみていくまえに, アニメ 1期のあかりの特徴をみていこう. それは端的に言えば 「存在感がない」という特徴だろう. 主人公の扱いがあまり積極的でない, というのではない. そもそも「存在感がない」のである. アニメでは実際に, アバンにだけ登場し以後登場シーンがない回すらあった. この登場しないことが逆に, あかりを特徴付ける. 「存在感がない」ことで「存在感を得る」のである. 言葉のうえでは完全に矛盾だが, この矛盾はあかりという表現を通せば, 事実として立ち現れる. 2 期では, ほとんどあかりしか出ないことであかりの存在感のなさを表すという, ちょといまこうやって書いていてさらに意味が分からないような回すらあった ( 5 話 ) . このような存在感のなさ, あるいはアニメ 1 期・2 期においてほとんど代表的な形容になってしまっているた「不憫」というあかりの特徴を, 「私、主役の赤座あかりです」は歌詞で完璧に表しているのだ. しかし魅力的なのは歌詞だけではない. トラックや歌唱にも魅力が溢れている. では曲調をみていこう. あえて何かに分類すれば, 硬質のキックが印象的な, BPM 速めのダンスミュージックなのだが, そこまで「速い」という印象は受けない. これは, あかりを歌唱のにおいて見事に演じきっている, みかしーのゆるーい雰囲気だからこそ成立し得た曲調である. この楽曲でのみかしーの歌唱の魅力は, そうしたゆるーい雰囲気だけではない. あかりの 2 期キャラソンよりもこっちを断然をオススメするのは, みかしーによる声の演技を存分に楽しめるからだ. A メロではあかりを形容する言葉の代表となってしまった「不憫な」, B メロではコーラスで元気よく, サビ前で「不満気」, サビの終わりの「主役のあかりです」で「力強く」. サビではそうした演技を抑え, 安定した歌唱力, 等々. 「幸せギフト」はひたすら, 物語を通じてあかりが自身で獲得していった, あかりの天使性を表している. この天使性に合わせ, みかしーの歌唱における演技は終始, ポジティブさに溢れている. これはこれで魅力的なのだが, 筆者としては, めまぐるしく表情を変える歌唱を披露した「私, 主役の赤座あかりです」を推したい. 続いて歌のメロディーに耳を傾けよう. 歌メロは基本的には単純な繰り返しが多い. この単純な繰り返しは, セリフをナチュラルに挿入するためだと考えられる. 単純な繰り返しは A メロ, B メロ, サビにおける特徴なのだが, ブリッジである C メロでは一変する. そこまでの A メロ, B メロでは, ある一定のメロディーフレーズの区切りにおいて, ガヤや盛り上げ程度にセリフが入る. しかしこの C メロでは, メロディーとセリフの境目はない. あかりが強く思うところはセリフとなり, そしてそのセリフを強調するためにメロディーが歌われる. かといってラップでもなく, しかしまさにフロウとしか言いようのない大変聴き応えのあるメロディーである. そしてそれを歌いきるみかしー, パないっす. 既に述べたように, C メロ以外の歌メロはシンプルなのだが, その代わりにトラックが楽曲を盛り上げる. 前述の通りこの楽曲は, テンポ速めのダンスミュージックが基盤となっているのだが, 一方で, みかしーの声が和やかな雰囲気なため, そこまで忙しい印象を受けない. むしろ少しリラックスした雰囲気すらある. このリラックスした雰囲気を成り立たしているのは, みかしーの声だけでなく, リコーダーの音色, メロディーだ. 1 期のジングルですでに印象的だったリコーダーのパートだが, このパートーはイントロや間奏に用いられているだけでなく, むしろ楽曲の本質にまで食い込んでいる. 主には A メロおよびサビで, シンセによる硬い聴き心地を和らげる効果をもっている. 特に A メロでは, 調子外れに・SE 的に挿入されるのだが, これがあかりのちょっと残念さを表しているようで楽しい. しかし最も聴くべきは 2 回目の B メロだろう. ここではトラックに対して完全に調子外れなメロディーをなぞっており, あかりの不憫さ, 残念さを見事に音色とメロディーで表している. 筆者は冒頭で, 歌詞と物語のつながりがアニソン・キャラソンの評価軸のうちの 1 つだと述べた. しかしいま明らかになったのは, この楽曲は, 歌詞だけでなく, 歌詞以外の楽曲の要素においても物語を表そうとし, それが成功しているということである.


3. ガールズパワーで

もうやはり, この辺になると単に好きで特になぜ好きなのかといった理由がない場合が多く, 書くことがなくなってしまう. この楽曲に何か説明がいるのだろうか. いや 50 曲選んでレビューする, ていう記事なんだからいるんだけど. だけど, が, ゆるゆりの楽曲のなかで現時点で最もピースフルな楽曲で, 最も安心して聴ける楽曲であるに違いない. 真の名曲の名曲性はこうしたシンプルな構成の楽曲に宿る. 今回は 3 位だけど. この楽曲, 「ガールズパワーで」は, 2 期 8 話の特殊 ED として使用された ( のちに映像ソフトの特典 CD にフルバージョンが収録. また, TV サイズは『テ・ウ・ガ♪』に収録された.『ゆるゆりずむ♪デュエット』でも, フルサイズを聴くことができる ). 2 期 8 話は, 3 つの小エピソードから成立しているのだが, 「ちなつ無双」というサブタイトルの通り, どのエピソードも吉川ちなつの魅力が中心に描かれている. 3 つ目のエピソードは, ちなつが結衣とデートをする内容 ( 後述するが, この内容が歌詞にリンクしている ) で, ちなつが自らの恋愛観に戸惑いを抱きながらも, 力強く一人の女性に想いを寄せ続けようという決意に至る乙女心が描かれている. その最後, 力強い決意が「結衣先輩♡ 結衣先輩♡ ゆいせんぱぁ〜い♡」という「結衣先輩」の繰り返しによって表現される. その繰り返しはついには「ギャー!」という突然の叫びによって爆発し, ED が始まる. と同時に, 視聴者にとっての恐怖が始まる. その恐怖とは, 「ちなカレー空間」と形容される, ちなつの脅威的な画力の再現で以て構成された映像だ. これは日常アニメの ED ではない. この ED 映像自体が, ほとんど一つの, いや完全にホラー作品である. そのホラー作品に合わせて流れるのが, こんなにもキュートで, こんなにもリラックスし, こんなにも幸福感に溢れた雰囲気の「ガールズパワーで」なのである. そのギャップ. そのギャップは, 視聴者に「この楽曲は名曲である」と勘違いさせるに充分なインパクトだった. しかし, 改めて音源化され, 映像なしでフルサイズを聴いてみても, この楽曲が魅力的だという事実は全く揺るがない ( あのホラー作品を全く観たことがない者が聴くとどう感じるかは知らない. あくまでこのレビューは, わたしが『ゆるゆり』関連楽曲を聴いたときに内面に起こる経験を書きつけているだけだからだ ). 楽曲の雰囲気をみていこう. おおまかな曲調としては, リンドバーグあるいはレベッカ, あるいは JUDY AND MARY といった, 日本の正統派ガールズ・ポップロックの系譜にあると言えよう. シャッフルを含む 8 ビートのドラムとディストーションギターが印象的で, かつ要所要所にブラスが楽曲に盛り上がりを与えるアレンジだ. そのうえで, 女と女のツインボーカルという在り方が, 百合ファンの心をしっかりとつかむ. そのボーカルに注目すれば, るみるみは舌足らずで, 少し聴き取りつらいのだが, それがこの楽曲のキュート性を強めている. それだけでなく, 少し濁りのある声質なのだが, これはほとんど吉川ちなつの素のときの声だと言える. るみるみはこの楽曲で, ちなつの, 他所向きでもない, 腹黒さでもない, 恋心を寄せている女の子と一緒にいられるときの本当に素の幸福感にあふれた状態の声を表現しているのだ. 対して津田ちゃんの方は, まだ「#津田美波さんの力強い歌声」には達していない. しかし津田ちゃんはすでに, 2 期 8 話放送日 ( 8 月 20 日 ) に先立つ 8 月 1 日にリリースされた結衣のキャラソンで, 確かに「#津田美波さんの力強い歌声」を披露しており, この点を考慮すればあえて「#津田美波さんの力強い歌声」を抑制していると言えよう. 「#津田美波さんの力強い歌声」でなくても歌える余裕は, ちなつをリードする結衣の心の余裕だ. こうしたアレンジ, ツインボーカルで以って歌われるのは, 非常にシンプルな歌メロである. シンプルなうえに繰り返しの多い歌メロである. また, 他の『ゆるゆり』の楽曲によくみられるセリフや寸劇パートが極めて少ない. セリフや寸劇パートが少ないことが, さらにこの楽曲にシンプルさを与える. なぜこれほどまでにシンプルなのか. それは, ちなつの心境をダイレクトに伝えるための歌詞を聞き取りやすくするためだ. 「ガールズパワーで」の歌詞は, 『ゆるゆり』の物語とつながっている. つながりは, ED として使用された 2 期 8 話だけでなく, これに先立つ 2 期 3 話 ( ちなつが結衣にマフラーを手作りする, さくひまによる純度の高い百合回 ) にもある ( 完全に再現しているかと言えば, そうではないが ) . これらの物語を, そしてそこに込められたちなつの心境をしっかり歌詞として伝えるために, この楽曲はシンプルなのである. 以上のようにほとんど全体像が浮かび上がったこの楽曲は, 完全にファンタジーだと言える.「女の子同士だとおかしいのかな…」というセリフで, 『ゆるゆり』というほとんどファンタジーの世界において唯一の現実との接点になり得たちなつだが, 「ガールズパワー」の幸福感, リラックスした雰囲気は, 完全に現実との接点を切り離す. この切り離しは, 「乙女日和☆」で暴走させた「乙女パワー」, この場合の「乙女」は 1 人だったのだが, その単数形の・概念としての「乙女」が, 複数形の・実態としての「ガール”ズ”」になることによって獲得された「パワー」によって達成されたものだ.


2. 女と女のゆりゲーム

『ゆるゆり』関連楽曲のなかで, 歌詞内容と物語のつながりという点で, この楽曲以上のものは他にない. 歌詞と物語のつながりが見事であるまた別の楽曲は確かにあり, それは「私, 主役の赤座あかりです」の歌詞であるが, この楽曲の歌詞は, あかりという登場人物の特徴を描いたものであった. 対して「女と女のゆりゲーム」では, 物語における出来事が描かれている. しかも, 「私, 主役の赤座あかりです」以上に正確に, である. その物語における出来事とは, アニメ 1 期 5 話と, 2 期 10 話だ. 前者は, ちなつがあかりにキスをするエピソード, 後者はちなつがあかりにマッサージをするエピソードである. 両者とも, ちなつがあかりを「攻める」内容だ. もちろん, この楽曲が素晴らしいのは歌詞だけではない. 歌詞だけが素晴らしいのであれば, 楽曲を聴かずに歌詞カードを読めばいいだけの話だ. この楽曲において歌詞以上に魅力的だなのは, めまぐるしく変わる曲調, そしてセリフと歌を縦横無尽に行き来する女女ツインボーカル歌唱だ. その歌唱に耳を傾ければ, 先ほど「ちなつがあかりを「攻める」」と述べたが, それに呼応しているように聴こえる. どういうことか. たとえば最も分かりやすいのがサビだ. サビでは, ちなつに攻められて焦るあかりはほとんど歌わず, セリフ調だ. これは, あかりが歌う余裕などないということを表しているだろう. 対してサビにおけるちなつは, あかりを攻める側で, 攻めるというか楽しんでさえいるようで, それが歌という唱法へつながっている( サビ以外では, A メロでは, ちなつ・あかりともに「セリフ + 歌」という定形がとられている. この掛け合いも聴き所だ ). また, 声の表情も非常に豊かだ. 特にみかしーの声の表情は, 本当に魅力的である. 歌詞の内容に合わせ, 「 ( 友達からの頼み事に応えようとする ) 快さ」「焦り」「慌て」「怯え」などなど, と, こう並べると「不憫」さが全面に出ているのだが, とにかく, 不憫にも種類があり, それを音楽に合わせ声で演じているのだ. 対してるみるみの声はあまり表情的に変化せず, ほとんど一本調子だ. これはるみるみに演技力がないなどというのでは断じてなく ( むしろアニメ中において最も声質の幅が広いのはるみるみだ ),あかりという獲物を捕らえようとするちなつの虎視眈々とした・落ち着いた様子を表すためにあえてそうしているに違いない. このようにほとんど忙しさすら感じさせる歌唱を支えるのが, 忙しさそのもの・めまぐるしく変わる曲調である. 先ず出だしは, どこかラテン調のリズムを思い起こさせるパーカッション, ブラスから始まる. そこにちなつの「これからあかりを攻める」という旨のセリフが乗り, メイン・リフへと続く. このリフで使用されているのは, 耳を切り裂くような, シンセサイザーだ. それまでのラテンな雰囲気から一気に, 高速ダンスチューンへと変化する. その後, 始まる A メロはピチカートが小気味よく, 楽しさを表しているのだが, サビでまた耳に悪い系のシンセサイザーが暴れまわる. サビ後の C メロの最後には, 「男と女のラブゲーム」のパロディであるタイトルらしく, 演歌調だ. 以上みてきたことから判明したのは, 「女と女のゆりゲーム」が, 『ゆるゆり』楽曲をたしなむうえで重要な要素, すなわちセリフ・ガヤ・激しい曲調の変化を十全に有しており, かつ歌詞も物語の世界観をしっかり反映していることである. つまり, こうした要素の盛り込みという点で, 全楽曲のうちで最も成功しているのが, この楽曲だと言えよう.

ところで, セリフや曲調の変化, 歌詞に置ける物語の反映は, なにも『ゆるゆり』の専売特許ではない. むしろ広く, キャラソンを含むアニソンによく見受けられる. アニソンの特徴は, そもそもジャンル名の下に集まった楽曲の曲調が一定ではない, という点にある. それは当 50 選をみていただければ一目瞭然だ. 一方で, 1 曲のなかでめまぐるしく曲調が変わるアニソンもある ( 最近の成功例は, 干物妹! うまるちゃんの「かくしん的 めたまるふぉ~ぜっ!」だ ). また, およそ誰も想定しなかったような異ジャンルの組み合わせのアニソンもある ( 「キルミーのベイベー」のように, ロシア民謡とメタル, など ).例えば『ラブライブ!』の「ススメ→トゥモロウ」は, バラード調の出だしから, このことはもう調べるのめんどくさいから本当かどうかは知らないけど, J-POP やアニソンにおいて 1 曲の中で情報量が圧縮されるとかそういうふうに一時期しばしば言われていたような気がしないでもない. めんどくさいとか言いながら, インターネットで調べてみると, そういう考え方がちらほら見受けられるけれども, 筆者はこれが特にアニソンやボカロに代表されるようなとか, ゼロ年代後半以降に固有な新しい特徴だとかうんたらかんたらだとか, J-POP の浮世絵化とかそういうことは全く思わない. 筆者は, こうした劇的に曲調が変わるのは, 物語を前提にした音楽だからではないか, という仮説を提出したい. 今回, この点について詳しく述べるつもりはないが, 以下, 簡単に自説を述べたい. 普通ならあまりありえないような・必然性のないような異ジャンルの組み合わせ, 曲調の変化は, 物語を通じて必然性を帯び, 「アリ」になる. ここで注意しなければならないのは, いわゆる「サウンドトラック」のようなものも含め, 物語に関連した楽曲がすべて, 曲調の変化を有していると言いたい訳ではない. 物語の変化に合わせて楽曲を作ることが目指され, かつ, その物語の変化が激しければ, 曲調の変化・異ジャンルの組み合わせが起こりやすい, ということだ. こういった, 物語に関連して 1 曲のなかで曲調が変化する, あるいは, 変化しないまでも異ジャンルの組み合わせである例は, もちろんゼロ年代後半以降の J-POP, アニソン, ボカロといった曲以前にも存在する. それは筆者の知る限りではコミックソングだ. ( 筆者はコミックソングに詳しくないので, スパイク・ジョーンズ以前は知らないし, おそらくオペラ音楽などをさかのぼれば, どんどん見受けられるだろうが, )「冗談音楽の王様」といわれたスパイク・ジョーンズに始まり, 日本で彼に影響を受けたフランキー堺&シティ・スリッカーズ, ハナ肇とクレイジーキャッツといった系譜, この系譜のうえに, あるタイプのアニソン ( これにはもちろん『ゆるゆり』も含まれる ) は含まれるのではないか. コミックソングにおいては, 笑いを引き起こすための突拍子もない物語と, 楽曲が密接に結びついているため, 必然的に楽曲も突拍子がなくなる. 実際, スパイク・ジョーンズの楽曲をいま聴けば, 第二次世界大戦前であるにも関わらず, めまぐるしく変わる曲調, セリフ, ガヤ, SE というふうに, この 50 選で「アニソンのたしなむための要素」として挙げた要素との共通性を多く聴くことができる. あるタイプのアニソンは, こうしたコミックソングの正当な後継者なのだ.



いかがでしたか? いかがでしたか? じゃねえよ!!!!! ていう感じですが, 次回はついに 1 位 です!



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