平成を象徴するミュージシャンは誰か: ヒット・チャートを解析する

いよいよ平成最後の年がスタートしました。あと 4 ヶ月ほどで、新しい元号へ移行し、日本はいやがおうにも新時代を迎えてしまいます。こういった時間的な・特別な区切りのタイミングにおいては、そこまでの一定の時間がいったいどういった時間だったのかを振り返り、まとめたくなるものです。一部の音楽ファンは熱心に、その月のベスト音楽、半年のベスト音楽、1 年間のベスト音楽を選出します。いまは、それが平成だということです。

平成という 30 年と少しの間にリリースされ、流行した音楽 (もちろん、これは日本に限定されなければなりません) について、個人的なベスト・チョイスを決定するのは魅力的な行為です。一方で、個人的な思いとは別に、誰もが検討 (=反論) しやすいかたちで、平成を象徴する音楽を決定することも、音楽ファンにとっては関心があるでしょう。

本記事では後者、つまり、個人的な思いとは別に、平成を象徴する音楽とは何かを考察することにしました。もちろん、音楽といっても、楽曲なのか、ジャンルなのか、ミュージシャンなのか、あるいはまた別の何かなのか、などなど、その言葉の指す範囲はさまざまです。今回はひとまず、平成を象徴するミュージシャンを決定します。

目次

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方法

年間のシングル売り上げトップ 10 を、平成と昭和で比較しました。期間は、平成が1994 年から 2014 年までの 21 年間、昭和が 1963 年から 1983 年の 21 年間です。間の 10 年を除外したのは、平成と昭和の差を明確に打ち出すためです。また、2010 年以降は、iTunes ダウンロード数をデータとして採用しています (シングル CD 売り上げの場合、アーティスト名に著しい偏りがあるため)。

どのように比較したのかというと、まず、年間トップ 10 にランクインしている楽曲に、アーティスト名、性別、スタイル、ジャンルで以って分類しました (タグ付けみたいな感じですね)。性別は男・女の他に混合の 3 項目。スタイルはソロ、デュオ、グループ、バンド、ユニットの 5 項目。そしてジャンルは 3 つタグ付けできるようにして、全部で 19 の項目へ分類しました。

たとえば、1996 年の年間 2 位の「DEPARTURES」は、アーティストが globe、性別は混合 = Unisex、スタイルはユニット、ジャンルはポップス、ダンス、ラップです。

スタイルとジャンルをどう決定するかは、基本的に Wikipedia の情報に従っていますが、Wikipedia のページがないなどの場合、実際に楽曲を聴いて判断しました。ですので、データの集計方法は少なからず主観的な判断が入っています (もちろんこの点に反論・議論の余地の 1 つがあります)。

各楽曲をどのように分類したかは、以下の pdf ファイルから確認できます。

つづいて、各年ごとに、性別やスタイル、そしてジャンルそれぞれいくつだったかをカウントし、平成全体・昭和全体でその平均をとりました。たとえばジャンルがロックへ分類された楽曲は、 1994 年に 3 曲、1995 年に 5 曲、1996 年にも 5 曲…, 2013 年に 1 曲、2014 年も 1 曲で、平成全体では 2.62 曲です。同じように昭和で平均をとると、0.48 曲です。ちなみにこれはかなり明確な差があります。ロックは平成的な音楽だということです。

このようにして比較された平均に明確な差がある項目を、平成の特徴、昭和の特徴とし、平成の特徴をもっとも備えたミュージシャンを決定しました。

では、結果をみていきましょう。

性別

男、女、混合に、昭和・平成の間で、平均数に明らかな差はありませんでした。
しかし、男女間には明らかな差があり、男の方が多い。

間が 10 年空いているので、全く無意味ですが、ぱっと見てわかりやすいと思い、散布図にもプロットしてみました。

平成の音楽は、男や女といった観点から特徴付けられるものではありません。

スタイル

ソロは平成に入って明確に減少しています。デュオもまた、平成に入って減少したと言えます。

グループは、平成に入って明確に増加しています。ユニットは、平成に入って以降の概念であるため、比べるまでもなく平成特有のスタイルです。

バンドは平成と昭和で平均値に明確な差はありませんでした。これは、昭和のフォーク・グループも、バンドへ分類したたから。もしフォーク・グループをグループへ分類すれば、バンドは平成の方が多くなります。

つまりスタイルにおいては、平成はグループ、ユニット、バンドの時代と言えます。

全く無意味な散布図をここでもプロットしておおきます。

ジャンル

かなり見難いグラフ (1 曲しかなかったなど、いくつかのジャンルは省いています) ですが、平成ではポップスが突出したジャンルであること、ロックやラップが昭和に比べると増加していることなどが読み取れると思います。

もう少し詳しくみていくと、ポップス、ロック、ラップ、ダンスは、平成で明確に増加しています。R&B は、これら 4 つほどではないが、昭和よりも平成に特徴的なジャンルです。また、R&B ほどではないが、ヴィジュアル系、レゲエも、そもそも昭和にはなく、かつ、平成を特徴付けているジャンルです。

演歌、フォーク、歌謡曲は平成で明らかに減少しています。また、これらのジャンルほど、もともとも曲数が多くないが、ムード歌謡やニュー・ミュージックもまた、平成にはなく、昭和的な音楽です。

曲数がそこそこ揃っているにも関わらず、昭和と平成で平均に明確な差がなかったジャンルは、アイドルです。また、洋楽はもともとの曲数が多くないのですが、やはり平均に明確な差はありませんでした。つまり、アイドルは平成を特徴づけるジャンルとは言えません (言い換えれば、昭和から続いて普遍的に人気のあるジャンルです)。

ここでも無意味な散布図をプロットしておきます。

散布図にするとさらに見難いですね。

結論

平成を特徴付けるミュージシャンは、

  • スタイルとしては、グループ、ユニット、バンド
  • ジャンルとしては、ポップス、ロック、ラップ、ダンス

となります。

そしてこれらの特徴を備えているミュージシャンは、

  • globe
  • Dragon Ash
  • Orange Range

です。

年間トップ 10 へのチャートイン数を考慮すれば、Orange Range = 4 曲、globe = 2 曲、Dragon Ash = 1 曲なので、シングルの売り上げやジャンルといった観点からみた場合、本記事では Orange Range を平成を象徴するミュージシャンとして決定したいと思います。

Orange Range が年間トップ 10 にチャートインした時期、つまり、もっとも活躍したと言える時期は 2004 〜 2005 年と、ちょうど平成のド真ん中で、時期的にも平成らしいと言えるでしょう。

すでに述べた通り、こういった分析は、集計方法によって結果が変わってくる。たとえば、ユニットという概念を昭和にまで当てはめたらどうなるだろうか。あるいは人によってジャンルの判断基準は異なるので、KAT-TUN の楽曲を「ラップ」へ分類しない場合どうなるでしょうか (おそらく、ラップは平成をどれほど特徴付ける音楽ではなくなると思う)。そもそもシングルではなくアルバムだったら? また、もっとサンプル数を増やせば、違った結果が見えてくるでしょう。

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