20 世紀を聴き比べる (7)「1907 年:  千の、蛍の、光」

よく歴史の本で、ある年に世界と日本それぞれ何が起きたか比べられる年表がありますよね。ある同じ年にどういった出来事が起きたか世界と日本で比べられる年表の、音楽版というのがあれば面白いなと思いつきまして。ただし、日本の音楽と世界の音楽を比べるのではなく、同じ年に発表されたクラシック (現代音楽) とジャズ、ポップス、ロック、ヒップホップを比べる、みたいな

それを年表にしてしまうと、インターネット上で見るのは厳しいものがありますので、1 つの記事につき、1 年ずつ、同じ年に発表された音楽を、ちょっとまとめて、聴き比べられるようにしてみようではないかと。

というのを思いつきまして、現在、「20世紀を聴き比べる」と題して、1 記事につき 1 年ずつ、ある年に発表された音楽を聴き比べることのできるシリーズを公開しています。

今回は第 7  回、1907 年です。

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1907 年のクラシック音楽

まずはクラシック。クラシック曲において「この年にはこの楽曲!」と断言するのは難しいのですが、この点に関しては、初回の記事のクラシックの項目を参考にしてください。

では、1907 年のクラシック曲を聴いてみましょう。この年のクラシックといえば、なんと言ってもマーラー『千人の交響曲』。初演は 1910 年ですが、1906 年〜 1907 年に作曲されました。『千人の交響曲』とは、交響曲第 8 番ホ長調の通称です。

第 1 部は賛歌「来れ、創造主なる霊よ」(ラテン語)、第 2 部は「ファウスト」終幕の場によります (ドイツ語)。演奏は管弦楽、独唱、合唱など大規模な編成で、このために『千人の交響曲』という通称がつけられました。

マーラーの作曲家としての評価は、1900 年の第 2 交響曲の成功以来高まっていました。1910 年の『千人の交響曲』の初演 (ミュンヘン) 時には、著名な文化人が招かれ、そのセンセーショナルな演奏から作曲家としての頂点を極めました。ただ、マーラーの作曲業は生前、一般的に、著名なオペラ指揮者の副業程度にしかみなされませんでした。

音楽作品ではありませんが、1907 年には、F. ブゾーニ『新しい音楽美学試論』が発表されました。

ブゾーニはイタリア生まれのドイツの作曲家、ピアニスト、理論化、教育者です。1898 年、ブゾーニは、バッハ作品の変奏を組み込んだヴァイオリン・ソナタ第 2 番を作曲し、みずからの方向性を定めました。

その後、1907 年に発表された『新しい音楽美学試論』は、従来の調整や形式によらない新しい音楽を提唱しました。

1907 年のポピュラー音楽

つづいて、ポピュラー音楽。

こちらも、作曲年なのか、出版 (発売) 年なのか、あるいはレコーディング年なのか、あるいは流行年なのか、が、1 つの楽曲において異なっていて、なかなか単純には言えません。

また、1907 年ピンポイントとなると、確証的な資料が手元になくてですね…

とりあえず、以下の 3 サイトを参考にして、「流行した」上位 3 曲を紹介します。

The World’s Music Charts」より

  • Enrico Caruso「Vesti La Giubba (On With The Play) (1907)」

Enrico Caruso はイタリアのオペラ・テノールで、商業録音された最初の大物歌手の一人。イタリアやフランスのレパートリーから叙情的なものからドラマチックなものまで、さまざまな役に出演し、ヨーロッパやアメリカ大陸の主要な歌劇場で高い評価を得、国際的に人気のあるエンターテイメント・スターでした。

  • Frank Stanley「Auld Lang Syne」

Frank C. Stanley (1868 〜 1910) は、1890年代から1900年代にかけて活躍したアメリカの人気シンガー、バンジョー奏者、レコーディング・アーティスト。ニュージャージー州オレンジで生まれ。 1891 年にエジソンのためにバンジョー・ソロを録音。1898 年にはナショナル・ノークロス・フォノグラフ・カンパニーのためにボーカル・レコードの録音を始めました。1901 年 〜 1910 年にかけてはコロンビア、ビクター、ゾノフォンで、単独またはカルテット (Columbia Quartets、Peerless Quartets) のメンバーとして多忙な録音を行いました。

「Auld Lang Syne」は、日本では「蛍の光」として知られていますね。1788 年にロバート・バーンズによって書かれたスコットランドの詩で、Frank C. Stanley もこの曲を録音しています。(参考: 参考: Discography of American Historical Recordings)

  • Harry MacDonough & Elise Stevenson「Because You’re You」

playback.fm」より

  • Enrico Caruso「Vesti La Giubba (On With The Play) (1907)」
  • Frank Stanley「Auld Lang Syne」
  • Harry MacDonough & Elise Stevenson「Because You’re You」

MusicVF.com」より 

  • Byron G. Harlan「School Days (When We Were a Couple of Kids)」
  • Byron G. Harlan「My Gal Sal」
  • Billy Murray「Harrigan」

Billy Murray こと William Thomas Murray は、20世紀初頭のアメリカで最も人気のあった歌手の一人。アイルランド系アメリカ人。アメリカン・ヴォードヴィルでスターとして活躍する一方で、レコーディング・スタジオでの多忙な活動で知られ、当時のほぼすべてのレコード・レーベルからレコードを制作していました。

「Harrigan 」は、George M. Cohan が 1908 年のブロードウェイ・ミュージカル「フィフティ・マイルズ・フロム・ボストン」のために書いた曲。この曲では、アイルランドの伝統を、ユーモアを交えて賛美ししています。また、アメリカのミュージカル劇場に貢献した偉大なアイルランド系アメリカ人である Edward Harrigan への愛情あふれるオマージュでもあります。

Billy Murray のヴァージョンでは、バックで流れる「ハリガン!」というコール & レスポンスが特徴的ですね。


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