サウンドクラウド・ラップが 1 つのキーワードになった 2017 年のヒップホップ. Lil Pump や Tekashi69 がチャートでもその名前が見られるようになったほか, XXXTentacion は日本でも話題になりましたし, Famous Dex, Trippie Redd も注目を集め始めています. サウンドクラウド・ラップは, その名前の通り, ともすると「ネットだけの現象だ」と片付けられがちですが, 徐々に, しかし確実に, メインストリームの一旦に位置付けられるようになっています.
サウンドクラウド・ラップと一括りにされ, そのなかでも名前を上げているラッパーたちの音楽の特徴を無理やりまとめあげれば, 強調されまくるベース, 叫ぶようなボーカル, 耳障りで短いトラック, そしてデリカシーのないリリック, といったところになるでしょうか. 彼らのラップは, 新しいと言えるかどうかすら分からない, いや, やっぱり新しいとしか言いようがないんですが, 良いか・悪いかの判断を拒むような, 何とも言えない魅力があります.
良いか悪いか, すぐ言え, て言われたら悪いんですけどね. でも, ある類のポピュラー音楽って,「これはゴミだ」て言われたなかから次の普遍が生まれるみたいな, そういうところがありますので, 単に「悪い」だけで片付けたくないといったところもあります.
今年は, サウンドクラウド・ラップ的にまとめられる新人ラッパーが見聞きを集める度に,「なんかこれ以上のヒドいラップってあるのか!?」てなった方も少なくないのではないでしょうか. あるいは, 音楽としてのラップとうものはちゃんと有意義に発展してるのか, みたいな. たとえば Ski Mak The Slump God「Take A Step Back」や, Tekashi69 のパフォーマンス以上に, よりラウドで, よりワイルドで, より衝撃的なラップなんてあるのか, あったとして, それがラップの音楽的な側面の発展と言えるのかどうか.
個人的なフェチのレベルでは, 面白いからどんどんやれ, てなっているんですが…, が, ここにきて, Youtube で 300,000 回再生されているとは言え, Zillakami はちょっと, どうなのさすがに, て思ってしまいました.
楽曲情報
- タイトル: SHINNERS 13
- アーティスト: Zillakami X Sosmula
- リリース: 2017 年 10 月 15 日
Zillakami はニューヨークを拠点に活動しているラッパー. Tekashi69 と共同作業していましたが, 現在は喧嘩別れしています. また, Twitter やインスタグラムでも活動的.なんですがしかし, Zillakami についての情報はその程度です.
Zillakami の楽曲はすでにサウンドクラウドなどで数曲で公開されていますが, 正直, ラップの表現の幅が広いとは言えません. 今のところ, ラウドで, 暴力的で, 衝撃的なラップという, 非常に分かりやすい特徴があります. リリックのテーマは死やマゾヒズム, そして違法薬物ですからね. MV は Harmony Korine「Kids」を彷彿とさせますが, MV に収められている様子が, さて, どこまで事実に基づいているのでしょうかね …
これまでの「これ以上過激な・お粗末なラップはそう出てこないだろ」といった予想を大きく上回った, 過激でお粗末なラップで Youtube 300,000 回再生を達成してしまった ZIllakami. Zillakami のようなスタイルもまた, 徐々にヒップホップの主要へ取り入れられていくのか, あるいは, 一部のマニアが愛好する色モノで終わってしまうのか.
しばらくはこの辺の界隈から目を離せそうにありません.