アンダーグラウンド・ヒップホップの世界で絶大な支持を集めるニューヨーク出身のラッパー兼プロデューサー、ELUCID（エルーシッド）。ELUCID は ビリー・ウッズとのユニット「Armand Hammer」での活動を通じて、その名前を広めましたが、そのソロキャリアも同様に注目されています。彼のの音楽は、政治的かつ哲学的なテーマを探求しつつ、実験的で大胆なサウンドを取り入れるのが特徴。特に、社会的な不安や人間の内面的な闘争を描くリリックは、リスナーに強烈な印象を与えています。
ELUCIDのこれまでの活動
ELUCIDは2007年から活動を始め、これまでに数々のミックステープやEPをリリースしてきました。2016年にリリースしたデビューアルバム『Save Yourself』は、彼のキャリアの中で重要な作品であり、アーティストとしてのアイデンティティを確立しました。また、2022年の『I Told Bessie』では、さらにパーソナルなテーマにフォーカスし、リリックとビートの双方で深みを増した作品となっています。
Armand Hammerとしての活動でも、彼は前衛的なヒップホップを追求し、『Shrines』や『We Buy Diabetic Test Strips』といった作品で高い評価を得ています。ビリー・ウッズとのコラボレーションに加えて、彼のソロ活動も進化を続けており、『REVELATOR』はその集大成となる一枚す。
『REVELATOR』の音楽的評価
2024年にリリースされた『REVELATOR』は、ELUCIDのアーティスティックなビジョンがさらに深化した作品です。このアルバムは、Fat Possum Recordsからリリースされ、インダストリアルなビートや前衛的なプロダクションが特徴的です。自らプロデュースを手掛けたトラックも多く、Jon NellenやAugust Fanon、DJ Haramといったアーティストとのコラボレーションもアルバムをより多彩なものにしています。
特に、冒頭の「The World is Dog」では、重厚なビートにロックやドラム＆ベースの要素が融合し、リスナーを引き込みます。また、ビリー・ウッズとの共演曲「Instant Transfer」では、Armand Hammerとしての緊張感あふれるパフォーマンスが炸裂しています。
リリックの面でも、ELUCIDは現代社会の崩壊や抑圧、個人的な葛藤といったテーマを鋭く描き出しています。「Bad Pollen」では、逆境に立ち向かう姿勢が力強く表現されており、彼のリリックは一貫して深く、考えさせられる内容です。
音楽的には、ノイズ、アンビエント、インダストリアルヒップホップなど、幅広いジャンルが取り入れられており、実験的なサウンドが全体を通して統一感を持ちながらも驚きを提供しています。特に「Ikebana」や「Xolo」といった楽曲では、シンプルなビートと複雑な音響のコントラストが見事ですね。
ELUCIDの音楽的探求とリリックの深さが融合し、リスナーに強烈な印象を与える『REVELATOR』は、現代のアンダーグラウンド・ヒップホップシーンにおいても際立った存在となっています。音楽の実験性とメッセージ性を両立させたELUCIDの挑戦は、ヒップホップファンだけでなく、広く音楽ファンにとっても必聴の一作です。
