西洋音楽史、20世紀前半の1回目です。さて、20世紀の西洋音楽は、それまでにない独特の展開があるため、19世紀までの西洋音楽のように、「古典派」「ロマン主義」といった様式で特徴づけられません。
現代音楽という名称
これは歴史を記述する際に避けられない事態なんですが、例えば日本史で言えば、百年単位で「平安」とか「鎌倉」とか「江戸」などと時代名がついていますが、20世紀以降になると、かなり時代名が細かくなりますよね。明治、大正、昭和といった、元号名がそのまま「時代名」として扱われるわけです。「江戸」まではなかったのですが。
ワタシの専門であった「哲学」も、基本的には「現象学」や「実存主義」や「ドイツ観念論」といった、思想の内容がジャンル名になっているのですが、20世紀後半以降は、「ポストモダン」であるとか、それこそ「現代思想」のように、時代名がそのままジャンル名になってしまいます。
これは、或る意味では仕方のないことで、というのも、歴史を判断するのは、つねにその時代よりも未来だからです。現代を歴史的に判断するためには、現代よりも100年、200年未来にならないと、判断できない。
あらゆる「〜史」がそうであるように、西洋音楽史も、やはりこの事態を避けられない、とワタシは考えています。
現代音楽のジャンル
とは言え、20世紀の西洋音楽に全くジャンル名がついてないかと言えば、そうではありません。「古典派」や「ロマン主義」といった、大まかなジャンル分けではなく、かなり細かくジャンル名がついています。そう言う意味で、百年単位でひとまとまりにするのが難しい。だから、「20世紀の音楽」であるとか、教科書によっては(というかこっちの方が多数派なんですが、)「現代音楽」などと呼ばれたりするわけです(※20世紀初頭から第二次世界大戦の終わりまでを「近代音楽」と呼ぶ場合もあります)。
では、どういったジャンル名があったのかというと、例えば、
- 表現主義 Expressionism
- 原始主義 Primitivism
- イタリア未来派 Futurismo
- アメリカ実験音楽 experimental music
- 新古典主義 Neoclassical
- 十二音技法 Twelve-tone music
などなどです。
こうしたジャンル、言い換えれば音楽様式は、20世紀では19世紀以前に比べれば、目まぐるしい速度で古びていきました。19世紀以前は、数十年から百年単位で生じていた音楽様式の変化が、20世紀では数年から10年程の短期間に起こりました。また、情報技術の発達により、同じ音楽技法で創作している作曲家が、19世紀以前に比べ、世界各国にちらばって活動する、という状況も生まれました。
そして、2つの世界大戦が20世紀の西洋音楽にもたらした影響も多大です。
と、いうことで、本サイトでは、第2次世界大戦を1つの区分とし、20世紀の音楽を「前半」「後半」の2部に分けて、取り上げていきたいと思います。
次回は「新ウィーン楽派: 表現主義」です。
【参考文献】
- 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
- 田村和紀夫『アナリーゼで解き明かす 新 名曲が語る音楽史 グレゴリオ聖歌からポピュラー音楽まで』
- 岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』
- 山根銀ニ『音楽の歴史』