Roland TR-808 が生んだ音楽: 梯郁太郎の功績

ローランドの創業者で, TR-808, JUPITER-8, DTM, MIDI といった音楽ツール・システムの開発・普及の立役者である梯郁太郎が 4 月 1 日, 逝去したと複数のメディアが報じています.

慎んでご冥福をお祈りいたします.

「TR-808, JUPITER-8, DTM, MIDI」の並びだけで, 梯の業績が, 現代のポピュラー音楽にとっていかに偉大だったかが分かるかと思います. 本記事ではこれらのうち「TR-808」に焦点をあて, そして TR-808 なくしては存在しなかっただろう音楽を紹介することで, 偉大な音楽エンジニアである梯の業績を讃えたいと思います.

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TR-808 とは

TR-808 は, 1980 年にローランドから発売され, 1983 年まで製造されたリズムマシン. TR-808 が発売されるまでは, 電子音でビートを鳴らす機材は, プリセット (あらかじめ用意されているパターン) を選択するだけか, ごく簡単なパターンしか作成できないリズムボックスが主流でした. TR-808 は, ユーザーがリズムパターンをプログラミングして 1 曲を完成させることのできる機材として, リズムボックスから区別され, リズムマシンと呼ばれています.

TR-808 を使用した音楽

YMO と Marvin Gaye

発売当時, 商業的に成功したとは決して言えない TR-808 ですが, 一部の著名なミュージシャンによって楽曲へ導入されています. 最初期の例としては, YMO「千のナイフ」(1981), Marvin Gaye「Sexual Healing」(1982) が挙げられます.

ヒップホップへの導入

TR-808 はまた, 当時, 徐々に広まりつつあったヒップホップでも導入されました. 代表例が Afrika Bambaataa「Planet Rock」(1982) です. この楽曲は, Miami Bass, Detroit Techno といったジャンルへ大きな影響を与えました.

「Planet Rock」によってヒップホップへ一気に広まった TR-808 は, Beastie Boys, Run–D.M.C., LL Cool J, そして Public Enemy らによって使用されるようになります.

1990 年代以降, TR-808 のサウンドは, サウス・ヒップホップを特徴付けるものとして残っています.

ヒップホップの枠を超えて

TR-808 の影響はヒップホップの枠に収まらず, たとえば, Whitney Houston の 1987 年のヒット曲「I Wanna Dance with Somebody」でも使用されました.

1994 年には, Nine Inch Nails が「Closer」で使用していることから, TR-808 は, オルタナティヴ・ロックへも影響を与えているということになります.

808の「サウンド」

現在では, 機材として TR-808 の使用というよりは, 808 らしい「サウンド」を導入するという点で, 808 の影響が残っています.

現在, 808 サウンドを取り入れているミュージシャン, プロデューサーは, Damon Albarn (UK ロック), Diplo (バイレファンキ), Fatboy Slim (ビッグビート), Talking Heads, David Guetta (EDM), New Order などなど, 枚挙に暇がありません.

808 はサウンドだけでなく, 歌詞にも引用されていて, 例えば, the Beastie Boys, Outkast, Kelis, TI, Lil Wayne, Britney Spears, Beyoncé, R Kelly, Kelis, そして Robbie Williams らの楽曲に単語として登場します. そのベース・ドラムの音色はしばしば,Madonna, Rihanna, Kesha らの楽曲で, 心臓の音にたとえられていています.

近年では, Trap を特徴付けるサウンドでもあります.

このように, Marvin Gaye, YMO から始まり, 現在はヒップッホップを中心に, 使用される機材から「サウンド」としてなくてはならない存在になっている 808 . 808 を生み出した梯の業績は, 音楽にとってなくてはならないものであることは, 言うまでもありません.

梯の業績は, 前述の通り, TR-808 にとどまりません.『サンプルのない次代』では, そのエピソードが語られています.


参考サイト

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