2011年に発売され購入したCDアルバム(主にポップス)のなかから、特に印象深かったものを10枚挙げたい。
[1]Matthew Herbert 『One Pig』
ミュージック・コンクレートは、実験作品は、政治的作品は、そして、これらすべてを混合させた作品は、そしてテーマが豚は、エンターテイメントになりうるか。Matthew Herbert は挑戦するし、成功している。現時点でこのような作品を作り上げられるのは、彼だけ。2011年というより、数年に1枚現れる、人生のプレイリスト入り。
[2]第一宇宙速度 『GALAXY ONE』
すーぱーそに子に出会えて良かった。あなたがこの世に〈いないで〉いてくれて、良かった。あなたに会えたことで、俺はまだまだ生きていける。あなたの声は、まさにそのバンド名の通り、俺の精神と言う名の地球を第一宇宙速度で以って飛び出し、ただ、俺の精神の周りを衛星のようにゆっくり廻り、俺の心にバランスを満たしてくれるのだ。
[3]Steve Reich 『WTC 9/11』
「9.11」から10年。ライヒはミニマルとミュージックコンクレートという自身の得意な2つの手法で、この惨劇を音楽化した。不穏な音程で反復するストリングスや電子音に、ノイジーなボイスサンプルが挿入される。そのボイスサンプルに併せて、別のストリングが奏でられる。われわれの世界は、ずっと不穏なのだ。これを忘れてはならない。
[4]J. Rocc 『Some Cold Rock Stuf』
ダンスミュージックの手法が採られているため、反復性の高い = 踊れるトラックが多い、というか全曲踊れるのだけれど、DJ プレイに使い易い、というわけではない。けど、DJ で使える。DJ で使いたくなる。サンプリング性の高い EP を連発してきた DJ による、DJ にしか作ることのできない、現時点の J. Rocc の集大成的作品。
[5]Date Course Pentagon Royal Garden 『Alter War In Tokyo』
菊地成孔は戦っている。ポップスというフィールドでどこまで実験的でありつづけることができるのか、この点を追求している。この戦いは、いかに知的に音楽するのかを原動力としている。そして知的さがいかに自由へとつながるのか、また、肉体性を高めるのかをまざまざと示している。ジャズをするのではない。ジャズになるのだ。
[6]Dennis Coffey 『Dennis Coffey』
ロックは本来踊るものである。ファンクやブルースやロックやジャズや、といった、どのジャンルにも分類できるしどのジャンルにも分類できない、クラシカルだからこそ刺激的なロック。tr.1 のイントロで完全勝利。
[7]Cults 『Cults』
快晴、真夏のうだるような日射しの下、視覚も聴覚もはっきりしている。けど、意識はリバーブ = 朦朧としている。どこかで聴いたような、しかししっかり現在で、ただ不安に塗られた未来のような、幻聴が鳴り響いてくる。
[8]豊崎愛生 『Love Your Life, Love My Life』
最近は処女膜から声を出していないし、耳に精子がかかりそうなのだけれど。作家陣の豪華なだけあって、この作品のクオリティーはすこぶる高い。おそらく2011年に出された邦楽女性ポップスアルバムの中で最も価値の高い1枚。
[9]Pricilla Ahn 『When You Glow Up』
国内版のボーナストラックである “Country Road” だけで充分だ。残りの曲はこれのオマケに過ぎない、というのは言い過ぎか。 最小編成のオーガニックな音響が、日常にすっとよりそってくる。
[10]スーパーカー『Re: Supercar 1』
何と言ってもデモ音源を70分一枚にミックスした2枚目。雑だ、雑過ぎる。汚い、汚過ぎる。けれど、無垢だ。瑞々しく、そして眩しい。形になる前の音楽は、こんなにも素敵なのか。
次点
- Nicola Conte 『Love & Revolution』
甘いコードとパンチの利いたビートが日常に華やかさを与えてくれる。しかも踊れるジャズアルバム。
- コトリンゴ『Picnic Album 2』
ジェフ・バックリーやビョークやシックス・ペンス・ノーン.ザ・リッチャーや。選曲と声で買いだった。
次々点
- DJ Shadow 『Less You Know The Better』
- Prefuse73 『The Only Chapters』
- Daedelus 『Bespoke』
- Maia Hirasawa 『Maia Hirasawa』
- LAMA 『New!』
その他、購入したCDアルバム
- James Blake 『James Blake』
- Every Little Thing 『Ordinary』
- Bradberry Orchestra『Vol. 0』
- 砂原良徳『Liminal』
- スーパーカー『Re: Supercar 2』
- ユニコーン『Z』
- ユニコーン『ZⅡ』
- Radiohead 『The King Of Limbs』