ボーカロイドラップの作り方「2.3 ラップらしい掛け声を作る(トークロイド入門 その1)」

ボーカロイドにラップをさせる、いわゆる、「ボカロラップ」あるいは「ボカラップ」を作るための手順・法則を、自分なりにまとめたものです。詳しくは、コチラを参考にしてください。

また、全体の目次は、コチラになります。

さらにまた、「ボーカロイドラップの作り方」に関連した音源を、bandcamp で公開中です。合わせて、御参考ください。

前回はコチラ

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2.3 ラップらしい掛け声を作る(トークロイド入門)

「Yo!」などの掛け声は、単純にノート1つで表現できるわけではありません。例として、d♯3 のみで、歌詞に「よ」と入力したものを聴いてみましょう。

全く「Yo!」に聴こえません。では、どうすればいいのでしょうか。リスニング能力(ここでの「リスニング能力」は、クラシック教育で言うところの「ソルフェージュ」とほとんど同じ意味で使用していると捉えて下さい)の高い人は、「Yo」のなかに、音程の変化を聴き取れるでしょう。その音程の変化を、だいたい捉えられればいいのですが、そこで、ボーカロイドを「喋らす」技術、トークロイドの技術が必要になります。

トークロイドの作り方は、以下の動画やサイト

  • 【重音テト】テトの演技力4・調声のさらし

  • 【重音テト】テトの演技力5・テトーク講座実践編?

もしくは、次の文献

  • 『DTM MAGAZINE 増刊 CV (キャラクターボーカル) 01 初音ミク 2008年 01月号』(寺島情報企画、2008)
    虹原ぺぺろん『ボーカロイド公式 調教完全テクニック』(ヤマハミュージックメディア、2013)

を参考にしていただきたいのですが、わたしなりにトークロイド作成のための法則をまとめると、

  • 5度の音程に注意する
  • ある音のまとまりの次の音を、強調したいときは少し音程が上がり、強調しないときは少し音程が下がる
  • 発声の最初は音程が立ち上がるように、最後は音程が急落するように

この3点です。「5度の音程に注意する」というのは、『ボーカロイド公式 調教完全テクニック』から、少しずつ下がるというのは、『DTM MAGAZINE 増刊 CV (キャラクターボーカル) 01 初音ミク 2008年 01月号』からヒントを得ました。最後の点については、「わたしにはそう聴こえる」という、極めて主観的なものが根拠です。

では、以上3点に留意しながら、「Yo!」を作ってみましょう。ノートの配置は、次のようになります。

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だいぶ人間らしい「Yo!」になったはずです。では、ノートの配置を順番に説明していきましょう。

2.3.1 音素記号「[asp]」

先ず、最初と最後の c2 に、「A」と歌詞入力され配置されたノートは、無音ノートです。任意の歌詞の音素記号を[asp]にすると、そのノート自体は音が鳴りません。しかし、ボーカロイドにそもそも備わっているポルタメント機能は働きます。したがって、ここでは、d♯3 の前に、d♯3 より低い音程の c2 を無音化していますので、d♯3 が c2 に言わば「引っ張られる」ような具合で = ポルタメントが働き、立ち上がりの音程が少し下がります。同じように、最後の c2 の無音も、その前のノートの音程である a2 に対しポルタメントが働き、a2 の最後の音程は実際の a2 より下がります。

これは、トークロイドの作成の法則のうちの1つ、「発話の最初は音程が立ち上がるように、最後は音程が急落するように」を表現するための技術です。

2.3.2 「5度」に注意する

つづいて、実際に「Yo!」と鳴っている部分の説明をしましょう。わたしには、「Yo!」は、前半で音程が上がり、後半で下がるように聴こえます。そこで、音程の上下を表現するために、「よ」と打ち込んだ後に、歌詞で入力すると伸びる音になる「ー」をつなげました。

この「ー」を配置する際に注意するのが、5度の音程です。最初の「よ」が d♯3 ですので、音程を上げる際には、d♯3 の5度上、a♯3 に「ー」を配置します。

2.3.3 ある音のまとまりの次の音を、強調したいときは少し音程が上がり、強調しないときは少し音程が下がる

初音ミクに「Yo!」と言わせる最後に、「ー」によって d♯3 から a♯3 に上げられた音程を下げなければいけませんが、単純に a♯3 の5度下にノートを配置しても、人間らしい発音になりません。

そこで、トークロイド作成の法則である、「ある音のまとまりの次の音を、強調したいときは少し音程が上がり、強調しないときは少し音程が下がる」を用います。「Yo!」にも、様々なイントネーションがあると思いますが、ここでは、勢いのある「Yo!」を作ってみたいと思います。そこで、勢いのある = 強調したい、というふうに考え、「Yo!」の後半の「音程の下がる」部分を、前半部分より「少し音程を上げ」ます。この「少し音程を上げる・下げる」ですが、正確に表現するには、PIT を調整するしかありません。が、この PIT を調整する作業は、かなり労力が必要です。ですので、わたしは、この「少し音程を上げる・下げる」を表現するために、「半音上げる・下げる」という手段を用いました。半音程度の上下であれば、聴いたとき、そこまで大きな違和感を覚えない、という極めて主観的な判断が根拠です。ということで、前半の音程の上がる部分の最初のノートが d♯3 なのに対し、後半の音程の下がる部分のノートは、半音上げて e3 から始まっています。このようにして、「強調したいときは少し音程が上がる」を再現します。

クドいようですが、このような微妙な音程の上下は、ボーカロイド使用者によっては、ノートではなく、PIT で調整する方もいらっしゃるでしょう。ただ、ラップを作るための基本としてのトークロイドには、ノートでの調整で十分です。

では、e3 から下がった「ー」の配置の行方をみてみましょう。b2 です。b2 は e3 の4度下ですので、「5度に注意する」の法則から外れます。しかし、詳しくは後述しますが、ボーカロイドで日本語のアクセントを再現する場合には、わたしの経験上、「「1度 – 4度 – 8度」の関係を保つ」ことが、再現しやすさの重要な点です。けっきょく、この「Yo!」を再現するために、わたしが想定したノート配置をまとめると、

(1)a♯2 を1度として捉える(ただしノートの音素記号を[asp]にし、無音化する)
(2)a♯2 の4度上の d♯3 を発音の起点とする(ここから実際に歌詞入力をする)
(3)そこから順番に、最も強調されるアクセントとして d♯3 の5度上の a♯3 を配置、
(4)次のノートは、「強調したいときは少し音程を上げる」の法則を適用し、a♯3 の5度下の d♯3 を半音上げ = e3 に配置
(5)最後に「「1度 – 4度 – 8度」の関係を保つ」ために、e3 の4度下の b2 にノートを配置する。

ということになります。というか、「5度の音程に注意する」「ある音のまとまりの次の音を、強調したいときは少し音程が上がり、強調しないときは少し音程が下がる」「発話の最初は音程が立ち上がるように、最後は音程が急落するように」に、「「1度 – 4度 – 8度」の関係を保つ」を入れた4つが、トークロイドの基本法則です。これさえ守れば、そこまで不自然なトークロイドにならないはずですし、これを守ってもなお不自然になる場合は、日本語の単語のアクセントを聴取しきれいていないか、あるいは、わたしの仮説が部分的または全体的に間違っている、ということになるでしょう。というか、勘の良い方なら、あとはボーカロイドで日本語ラップを作れるはずです。あとはこれの発展ですので。

今回はここまで。次回はコチラ


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