2016 年 ポピュラー音楽 10 選 +α

ほぼ毎年書いています, その年に聴いたポピュラー音楽の新譜のうち, 気に入ったものセレクト. 今年は昨年と同様, 10 作品 + α みたいな感じです. 

そういえば, 聴取環境がストリミーング主体になって,「カネ返せアルバム」みたいなのがなくなりましたね. 980 円でほとんど主要な新譜を聴き放題になったので, よくなかったら話題にすらのぼらない. ベテラン・バンドの新作が, 待たされた割にぜんぜんよくなかった! みたいなのも, いちいち書くほどではない.

逆に言うと, それほどリスニングでの評価がシビアになったということでしょうか. 駄作は話題にすらする必要がありませんね, ていうことですから.

それはさて置き. 今年も昨年に引き続き, ラップを中心に聴いてきました. というのも, 現在, ボーカロイドを使用したラップ作品に取り組んでいまして, その参考のために有名・無名関係なく古今東西のを聴いています. 聴取ツールは完全にストリーミングや配信ですね. 今年はラップのレコードを 1 枚も買わなかった. ついに! audiomack を中心に, Datpiff , そしてたまに Bandcamp でもアンダーグアウンド・ヒップホップでイイ! のがあります.

昨年のセレクト記事では, ラップは食傷気味, いまの (2015年の) 流行の路線が続くのなら, すぐに飽きそう, みたいなことを書いたんですが, ぜんぜん飽きませんでしたね. ヒップホップは進化しつづける. 本記事は, 2016 年のラップ総振り返りというテーマではありませんので, 話題になったラップを逐一挙げることはしませんが,「こんな発想するの!?」「これでヒップホップとして成立するの!?」みたいな, そういうのに今年も出会えた.

具体的には, まずフロウとしては, 短いフレーズの執拗な繰り返しが昨年以上に増えた印象があります. 短いフレーズが執拗に繰り返されると, すごくラップに中毒性が生まれるんですよね. こういうフロウの増加は, 完全に Migos 以降な状況だと思います.

トラックの面からは, 単純なループではない, けどヒップホップとして成立している, ていう, 作品が増えたように思えます. ヒップホップといえばトラックはループしている, 展開が少ない, ていうのが特徴で, トラックに展開があるとヒップホップらしさが弱まってしまう. こうした難点を超えた, 展開がありつつヒップホップらしいトラックが目立った. 面白いですね〜.

まだまだラップからは目が離せません!

そのなかでもやはり, 2016 年の最高傑作は Chance The Rapper でしょう. 規模の大小に関わらず, 音楽系 web メディアの 2016 年ののベストの上位に選出されている『Coloring Book』. 本サイトとしては 1 位です!

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1. Chance The Rapper『Coloring Book』

本サイトでも何度かこの作品を取り上げましたが, いろんな意味で今年を象徴する作品になりました.

とにかく語らせてくれ! Chance The Rapper『Coloring Book』がヤバ過ぎる 10 の理由
先週金曜に, ほぼ予告通り, 無事リリースされた Chance The Rapper のソロ新作『Coloring Book』. ...
Chance The Rapper が本当に破壊したもの
年の瀬も迫り, 音楽ブログ界隈では 2016 年のベストアルバムみたいなのがどんどん投稿される時期になりました. わたしも, 今年のベ...

『Acid Rap』から 3 年. この 3 年間, 名前を見ない日はないくらいずーっと活躍していたので, ぜんぜん寂しくはなかったんですが, やはりソロ作は待たされた感があった. 出来上がったのはいままでのキャリアの集大成. 作品のうちには, 一方の軸として, ゴスペルやジャズといった古き良きアメリカ音楽があり, もう一方の軸として, juke を中心とした future bass 的な最新のジャンルがある. この 2 つの軸を土台にしてそのうえに築き上げられた縦横無尽な Chano のラップの世界観には, 伝統的かつ革新的という唯一無比があります. ヒップホップ史上に残る大傑作でしょう.

2. Matthew Herbert『NUDE』

サンプリングを武器に, 常に挑戦的かつ挑発的な作品を発表し続けている Matthew Herbert. これまでたとえば, 豚が誕生してから調理されるまでをサンプリングし, 音楽に食品問題を取り入れるなどの試みが行ってきましたが, 今年リリースされたのは人体の音をサンプリングした音楽.

【NEW ALBUM】Herbert, 人体の音をサンプリングして構築した新作『A NUDE』のデモ音源を公開中
ボーカルにフォーカスがされた前作『The Shakes』から約 1 年. 7 月 1 日に日本先行リリースされる Herbert の...

睡眠や食事といった, 録れなくはない音だけでなく, 排泄や自慰行為といった録ってはいけない音までサンプリングされ, 楽曲へ昇華されています. 人間にとって秘匿にしておきたい部分を音で暴き, それを音楽にすること. そう考えれば Herbert の新作は, 音楽制作の道徳性を問う作品なのかもしれません.

3. Kero Kero Bonito

1 st アルバム『Intro Bonito』がネットを中心にじわじわとヒットし, 昨年には日本ツアーで確実に知名度を上げている UK 発, 日英バイリンガル・ラップ・ユニットによる待望の新作.

新たな「ジャパニーズ」フィメールラップの傑作が誕生. Kero Kero Bonito『Bonito Generation』
ラップかヒップホップか ラップは, ヒップホップらしいビートのうえにのればラップであるし, 逆に, これぞラップ! な感じであれば, ...

1 st のときは, とにかくバイリンガルな下手カワイイラップがカワイイ, ていうのが印象的でカワイかったのですが, 本作はそういった枠に収まらず, 最新系のポップスとして楽しむことができる強度を持っています. 実はある視点に立てば, Sarah のラップの完成度は相当高い. 日本出身の日本語ラッパーの多くが, 英語のモノマネでラップしているなか, Sarah のラップはしっかり日本語している. ラップのフロウ的な面からも注目の作品です.

4. 松本昭彦『Preludes for Piano Book 1』

松本昭彦は, 自動生成での作曲の概念の拡張に挑戦を続けている作曲家 (Twitter での発言が一部の音楽マニアに好評でもあります). 前作『Metamemory』(2014)  につづいて発表された本作は, ピアノからの採録・演奏のみが使用された, 自動生成よる超・難解なピアノ前奏曲集.

正直言って, わかりません!(笑) 情報量多すぎぃ! これ, 批評家は試されていると思うんですよね (別にわたしは批評家じゃないけど). 作曲家の発言によれば, 確実な理論に裏打ちされているはずなんだけど, 全くそれが想像できない. 300 年後の批評家がうれしそうに分析していそうな音楽です.

5. 悠木碧『トコワカノクニ』

この位置に悠木碧を持ってきていいのか, という不安は拭いきれませんが, めちゃくちゃいいプチ・アルバムです. 悠木碧の声のみで構成されているのですが, こういうコンセプトの場合, 声が単に楽器的に使われているものが多い. けれども, この作品は, 声優らしい声の使い方, つまり, 演技が入っている. 声の人間らしさが前面的に押し出されている. だからこれは声優にしかできない音楽なんですけど…, よくある, アニソンの延長線上にあるような声優のソロ作とはもちろん, 全く異なる. 声優であることを突き詰めた結果, 声優らしい音楽 = アニソンから最も離れてしまった作品.

ところで.

今年は昨年ほどアニメ関連の音楽作品を聴きませんでした. いくつか気になるソロデビューもあったんですけどね, りえしょんとか早見沙織とか. けど, なかなか試聴しても購入には至りませんでした. それで, 悠木碧ともう 1 枚, 声優の CD を買ったんですけど, 上田麗奈のソロデビュー作『RefRain』です.

リードトラックが電子音楽のバラード, ていうだけでかなり声優の音楽作品としては挑発的で最高で, 即予約したんですが, 他の楽曲も優勝. 特に 1 曲目「マニエールに夢を」は, 生演奏だけあってポップスとして音響がすごくいい. 音響がいいだけでなく, アルバム全体を通しては, 声優らしい, 演技を織り交ぜた歌唱が癒し.

と, 小休止をはさんだところで, 後半の 5 枚です.

6. Alicia Keys『Here』

いままでの Alicia の作品に比べてずっとシンプルなトラックが揃っている今作. でも, シンプルなトラックだからこそ, Alicia の歌唱力が存分に楽しめます.

7. Lil Yachty『Lil Boat』

「1 Night」がネットを中心にカルト的なヒット. これをきっかけに知名度を高めたアトランタ出身のラッパーによるミックステープ. 今年の新人勢でイチオシ!!!!!

8. 田中フミヤ『You Find The Key』

DJ のジャンルやスタイルは変わっても, 田中フミヤは変わらなかった! まるで 1 晩のパーティーを再現したかのような構成の, 激シブなミニマルテクノ・アルバム.

9. David Bowie『★』

ここまで死を完璧にプロデュースしたロック・スターが果たしていただろうか. 死の直前に録音されたとは思えない, 鬼気迫る濃密なロック.

なおDavid Bowie トリビュートの室内楽作品もオススメです!

10. Kontad Bogen Trio『UNITED』

世代的にも, スタイル的にも, いよいよポスト・今ジャズな動向が始まりつつあるのかもしれない. ジャズの新しい境地への可能性を期待させる作品.

と, ここまで 10 作品セレクトしてきましたが, 最後に 2 つ.

24 Hrs『Open EP』

活況なアトランタのヒップホップシーンのおそらくは最新形. Lil Yachty がさらに進化したようなスタイルで, すでに流行ってる感はありますが, 来年さらにくると思われます!

\ƒ®EE | ©LI©K/™『フリーをクリック』

セルビアのトラックメイカーの 2015 年の作品を, フロリダのレーベルが今年フィーチャー, ということで今年のセレクトに. いままで vaporwave はぴんとこなかったんですが, ここまで乱雑にエディットされたらハマるしかない! バグを起こした DAW  がひたすらサンプルを編集して書き出したかのような音楽.

vaporwave 関連でいえば, 今年, future funk が日本でも話題になりましたね. 特に注目するべきだったのは Moe Shop でしょう.

フレンチ・エレクトロの伝統とアニソン・サンプリングでしっかりダンスできるグルーヴを生み出し, いままでのアニソン・リミクスの文法を変えたという点で, 特筆に値する.

この楽曲「Superstar」でフィーチャーされた Hentai Dude (なんっつう名前だ…笑) も, 日本でカルト的な人気を集めています.


最後に 2 つ, とか言いながら 3 作品紹介しましたが, いかかがでしたか? インターネットで音楽をディグるようになってから, ほんとうに最高の音楽に毎日のように出会っています. 2017 年はどんな新しいスタイルが出てくるか, 聴けるか, ほんとうに楽しみです. 以上, 2016 年ポピュラー音楽 10 選でした!


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