20世紀前半の音楽(9)新ウィーン楽派: 十二音技法

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さて、今回は前回に引き続き、第1次大戦後に生まれた新しい音楽の傾向です。第1次大戦後には、表現主義 Expressionism への反動として新古典主義 Neoclassicism が生まれましたが、同じく十二音技法 Twelve-tone music という作曲法もまた、新しい音楽の傾向として生まれました。

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1.新ウィーン楽派

十二音技法を編み出したのは、新ウィーン楽派の3人、つまり、シェーンベルク Arnold Schönberg とヴェーベルン Anton von Webern、そしてベルク Alban Maria Johannes Berg です。開発したのはシェーンベルクですが、1920年代半ばからの作品で様々に応用されていきます。

2.十二音技法

十二音技法とは、1オクターヴの間に含まれている半音階をなす12の音を、作曲家が並べ替えて「基本音列」を作り、それを使用して作品の旋律と和声を構成していく手法です。「基本音列」は、「反行形」と「逆行形」に変形して用いられます。

  • 反行形: 基本音列の音程を逆の方向に辿ることによって(例えば、3度上行しているときには3度下降することによって)作られます。
  • 逆行形: 基本音列の最後の音から最初の音へと読みます。
  • 反行の逆行形: 反行形と逆行形を組み合わし、「反行の逆行形」音列が作られます。

つまり、12音の「基本音列」からさらに4パターンの音列を作り出し、48の音列を使用するのです。

この技法は、可能な限り音の重複を減らし、既に1900年代初頭から使われていた無調の響きを得るシステマティックな方法として用いられました。基本音列の作り方次第で作品の響きが変わり、また、音列も分割して使用したり、和音として重ねるという操作を加え、無限の多様性が生まれる技法です。

3.十二音技法の作品

  • シェーンベルク《ピアノ組曲》
  • ベルク《ヴァイオリン協奏曲》
  • ヴェーベルン《弦楽四重奏》

4.十二音技法の影響

このように新ウィーン楽派は、十二音技法という新たな作曲法を生み出しましたが、楽曲全体は過去の形式(組曲、変奏曲など)に則って作られることが多かった。

それでも、第2次大戦後の前衛作曲家たち注目し、後のヨーロッパ音楽に多大な影響を及ぼすことになります。

次回は 20 世紀前半の音楽のまとめです。

20世紀前半の音楽(9)まとめ
本サイトの西洋音楽史、特に20世紀前半の音楽についてのまとめです。目次として使用していただければと思います。 20 世紀前半の音楽 まとめ...

【参考文献】

  • 片桐功 他『はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
  • 田村和紀夫『アナリーゼで解き明かす 新 名曲が語る音楽史 グレゴリオ聖歌からポピュラー音楽まで』
  • 岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』
  • 山根銀ニ『音楽の歴史』


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