シカゴと言えば, アメリカ合衆国の都市のなかでもけっこう, 音楽の盛んな土地というか, シカゴ発の音楽とか, シカゴ出身のミュージシャンとかが, よく音楽系メディアなんかで見聞きするんですけど.
古くは. いや, 古くは, と言ってももちろん 20 世紀以降ですけど, 初期のディキシーランド・ジャズの一形式としてのシカゴ・ジャズとかですね, あとはシカゴ・ブルースとか. まあ, この辺は非常に歴史にうるさい方々がいらっしゃいますので, ここではあまり話を広げませんが, それから, 時間をだいぶあけることになるのですが, 前世紀末のシカゴ・ハウス. さらに今世紀に入ってからのジューク, などなど.
もちろん, シカゴブルースとジュークの間にもさまざまな… ってここまで一個も具体的なアーティスト名を出していないじゃないか, という感じですが, こういうものは, 1 つ出すと彼がいない彼女がいない, なんていうふうになるのが常ですので, 思い切って割愛しますが.
それで, そういった音楽にとって重要な都市であるシカゴは, ヒップホップでも重要でして, 本サイトでも度々取り上げている Chance The Rapper やその周辺 (Nico Segal や Towkio といいた SAVE MONEY クルー)はシカゴが出自ですし, Kanye West もそう. Kanye West で思い出したけど, Kanye が「Touch The Sky」でサンプリングしている Curtis Mayfileld もシカゴ出身. で, ヒップホップに話を戻すと, Chief Keef みたいな悪そうなヤツはだいたい友達なヒップホップ (「ドリル」って言います. シカゴ版トラップのことですね) もシカゴ.
と, いう具合に, ジャズとか, ハウスとか (ジュークも含めて) といった (大げさに言えばね, )伝統を統一した, そのテン年代後半での真打ちが, Chance The Rapper 周辺なのかなあ, と思ってたんですが, 違いました. Sir The Baptist でした.
Sir The Baptist のデビュー作『Saint or Sinner』, めっちゃよいです.
アルバム情報
- タイトル: 『Saint or Sinner』
- アーティスト: Sir The Baptist
- リリース: 5 月 12 日
幼い頃からピアノやドラムを演奏し, 教会で歌い, 10 代のうちにフィルム・スコアを書いたということですので,
音楽的素養ていうか, 基本的な能力はもう, めっちゃある, と. それは, 今作『Saint or a Sinner』は主に Sir 自身が制作した, ということなのですが, それが本当だったら, ピアノのアレンジなんかを聴けば, しっかりしてるな, と. その辺のラップのトラックとは違うな, というのが分かる (ちょっと大味な感じは否めませんが…).
で, そういったしっかりした音楽的素養に, しっかりしていないと言うとおかしいですけど, シカゴ音楽の粗い側面を, ビートでアプローチしている, ハウスとか, ジュークとか, あと, まあトラップもね, ていう. けっこうですね, こう書くとありそうなんですけど, 実際聴いてみると, あんまありそうでなかった感じですね.
「ジャズっぽい上物のジューク」みたいなのはあるかもしれませんが, やっぱちょっとそういうのって, けっこうネタ臭がするというか, サンプル臭がするのが多いと思うんですけど, Sir が作る音楽は違うぞ, と. ちゃんと作り込まれているぞ, ていうことです.
ちゃんと作り込まれてて, 展開もしっかりしてるんだけど, でも, ヒップホップなんですよね〜. ヒップホップって, インストがシンプルな方がカッコイイ感ありますし, 個人的にはシンプルなインストが好みなんですけど, ここまで展開あるのに見事にヒップホップされちゃうとめっちゃ好きですねー.
それから, 歌なの? ラップなの? みたいな対立をあっさりと飛び越える両刀な感じ. ボーカルもめっちゃいいです.
「ヒップホップ聖職者」を自称し, (公式サイトによると) Healing Hip Hop = 癒し系ヒップホップ (!?) の先駆者として評価されている Sir . Healing Hip Hop がどういうものなのか, ちょっとまだよく分かりませんが, 広告会社に勤めていたこともあるらしく, そういったキャッチコピーをつけるのも上手いのかな〜, くらいに思ってしまうのですが, 音楽がヤバくカッコイイのは間違いないっすね. 今後とも追いかけていきたい音楽家です!
オススメ!